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乳がん患者の”旅” -コミュニケーション学の観点から- 後編

この記事は乳がん患者の”旅” -コミュニケーション学の観点から- 前編 の続きになります。
前編では「がんへの恐怖」「医療者と患者の関係」について紹介しています。

文献:(文)
映像:(映)
分析:(分)

医療現場におけるコミュニケーションの特殊性


1.(文)患者の抵抗という観点から見ると、医師がさまざまな形で安心感を与えても、患者はそれを受け入れず、医師が良いニュースとして扱っているものに抵抗するというのは、不思議なことだが、医療現場で繰り返される特徴である(Beach 2015)
 (映)0:09:26 “my first thought was they found something really bad,and so they have see me, like, now” (結果が良くなかったから、すぐに会いたいと言っているのだと最初は思った)
 (分)彼女は映像の中で、上記に続いて「パニックモードにならないように気をつけた」と発言。看護師は「普段からこうやって対処するんだよ」と言ってくれたが、電話の次の日に主治医のもとを訪れた彼女の顔は険しかった。主治医は、「あなたが怖がる必要はありません。これは、先週お会いしたときに話し合ったことと一致しています」と言っているが、彼女の表情ははっきりしない。これが彼女の抵抗だと考えられる。患者であるノエルは、健康上のネガティブな結果を特に重視しているようだ。そのため、検査結果に関する電話がかかってくると、彼女の頭の中は最悪のシナリオになってしまう。患者にとって医療現場は不安な場所であり、病気のことが頭から離れない。

2.(文)医療面接の場合、患者と医師がどのようにコミュニケーションをとるかが注目される。この時、会話、視線、ジェスチャー、タッチ、体の動き、モノ・道具の交差が焦点となる資源である(Beach 2013)
 (映)0:45:40 “... it’s fun because we get to reconstruct you, and then, by the way, take out your lymph nodes, so, and, we’re gonna get rid of that port too, so she won’t have the reminder about chemotherapy anymore.”(あなたのを再建して、ついでにリンパ節も取ってしまうので、いいことですよ。それに、ポートも取り外すので、彼女はもう化学療法のことを思い出さなくてすみます。)
 (分)手術が彼女にもたらすものをポジティブに話しながら、医師は彼女を撫でようとした。撫でることは非言語的動作ではあるが、この文脈では重要なコミュニケーションの要素であると考えられる。なぜなら、医師はノエルをサポートする目的でそれを行ったからである。これは、ストレスの壁を取り除き、サポートを提供する非言語的なつながりを示している。

まとめ

前編後編を通じて3つの視点から9つの分析を紹介しました。

この授業では他にもがん診療にまつわる会話分析について学んでいます。

私はヘルスコミュニケーションはこの授業を履修するまで全く知りませんでしたが、今はとても楽しく勉強しています。
ですが、授業を出会う文献や映像は、アメリカ文化や英語の影響を強く受けているものであり、日本の現場でそのまま生かせるものではないというのも理解しています。

ヘルスコミュニケーションの会話分析を通して、医療者と患者の良好な関係構築が行われるためにも、コミュニケーション学は有意義なものであり続けてほしいと思っていますし、日本での医療現場でも役に立てるよう、日本の社会状況や文化を反映した研究も盛んになってほしいです。


最後に


この記事を投稿するにあたって、クラスを担当する教授とクラスメイトに掲載の許可をもらいました。読んでくださった方の反応をとても楽しみにしていますので、コメントやTwitterなどで是非教えていただければと思います!

参考文献

(Noteの仕様上、文献タイトルを斜字にすることができません)

Beach, W.A. (in press). Patient-oncologist interactions. In E. Ho &. C. Byland (Eds.), ICA international encyclopedia of health communication. Oxford University Press.
Beach, W.A. (2009). Communication and patient-provider relationships. In W.F.
Eadie (Ed.), 21st century communication: A reference handbook (358-367). Sage Publications.

Beach, W.A. (2013). Introduction: Raising and responding to concerns about life, illness, and disease.
Beach, W.A. (2015). Doctor-patient interaction. In K. Tracy (Ed.), Encyclopedia of Language and Social Interaction (pp.476-493). John Wiley & Sons, Inc.
DOI: 10.1002/9781118611463
Beach, W.A. (2020). Caring for health in times of crisis. Health Communication.
https://doi.org/10.1080/10410236.2020.1797332











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