【UFOと映画?】『トップガン マーヴェリック』

 1986年に公開され、トム・クルーズ主演で話題を呼んだ、アメリカ海軍の航空機パイロットを描いた『トップガン』の続編。

 始まってすぐは空母上でのスチームカタパルトを使用した発艦、ワイヤーフックを使用した着艦を描いて、いかにも「『トップガン』続編ですよ」という場面が続くのだが、その後、モハーヴェ砂漠で試験機のテストパイロットとなっている主人公の登場となる。

 この試験機は「ダークスター」というコードネームで呼ばれている。名前自体は計画中止になった無人偵察機と同じであるが、この映画に登場するのは極超音速に達する有人機である。

 これが、いわゆる「UFO神話」を構成する要素の1つである「黒い三角翼機」そのものである。のみならず、「これって『オーロラ』じゃねえの?」と、そこそこ知っている観客に思い込ませる機体でもあるのだ。

 この「オーロラ」は、1990年代にアメリカ西海岸で謎のソニックブーム(超音速機が引き起こす衝撃波)が観測された所から起こった、極超音速偵察機に関する噂であり、ロッキード社が関わっているとされ、アメリカ空軍はこの話を否定している。

 この映画でのトム・クルーズ演じる「マーヴェリック」の所属はアメリカ海軍、そう、「実は開発していたのは海軍だったから、空軍は否定していたのだ」という話なのである。ご丁寧にも「ダークスター」の尾翼にはロッキード社のプロジェクトチームが使用するスカンクのマークが描かれている。実際にロッキード社も協力しているらしい。

 いやいや、海軍がこんな飛行機……とも思うのだが、かつて海軍にはA-12という独自のステルス攻撃機の計画があったりするから、さほど不自然でもない。もっと遡ればダグラスD558で音速突破を目指したし、「フライングパンケーキ」だって海軍だぞ。

 映画での「ダークスター」が誰も見た事もないマッハ10(!)に達するプロセスの描かれ方は丁寧で、スクラムジェット始動までの過程もリアルである。機体の端が輝く様子もそれらしい。

 また、「予算が付かなくなる事になる飛行機に、伝説のパイロットが乗って行って記録を作ってしまう」というのは映画『ライトスタッフ』のラスト近くを思わせるが、実はこれは実話を元にした話であり、『ライトスタッフ』に登場するF-104(実話ではそれを元にしたNF-104)は「最後の有人戦闘機」と呼ばれたから、当然『トップガン マーヴェリック』のスタッフも分かっていてやっているのだろう。

 F-104の後も有人戦闘機は作られたが、現在では映画の中でも現実でも次世代は無人機と考えられているようであり、明らかになった極超音速偵察機SR-72も「オーロラ」と異なり無人偵察機らしいのである。

 あとは余談、マッハ10を越えた後に墜落し辛くも脱出した「マーヴェリック」はあるレストランに入り、水を飲んだ後「ここはどこだ?」と聞くのだが、居合わせた少年は「地球だよ」と答えるのである。そう、外部に情報が漏れていない航空機は、100%地球で開発されていても、やっぱり「UFO」なのである。

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