国府津のクモハ40

 車輛の点検や整備をする場所は、駅から離れている場合がある。この場合、どうやって働く人が移動するかの1つに、その人達専用の列車を走らせるというのもあるのだった。

 国鉄の末期(あるいはJRになってから)、戦前からの旧形電車(以下旧形国電とする)の走る路線はかなり絞られていて、宇部・小野田線の一部(本山線)や鶴見線の一部といった路線だけになっていた。それらとは別に旧形国電が使われている場所の1つが国府津で、入れ換え用の電車が車輛の整備をする場所から駅に1日何度か出てくるのだった。

 これはクモハ40という電車だった。もとは通勤用である。入れ換え用とは言え、その為の改造はほとんどされず、現役時代の原形は保っていた。予備知識無しに茶色の旧形国電が出てくる様子が見られるのだった。

 自分がこれを知ったのは、新幹線の車内から見かけたからだった(後に鉄道雑誌でも見る)。国府津で出てくるまで粘れば撮影できるのは分かったが、当時はそこまで根性はない。

 国府津のクモハ40は前面が緩いカーブを描いていて、渋い存在の中にも美しさがあった。

 この辺り、まだ飯田線などでガンガン旧形国電が走っていた頃を知っている人達にも注目されていたようだ。

 JRに引き継がれてからは、他に現存していたクモハ40とともに整備され、イベント用に使われたようだった。

 鉄道模型のKATOからも1/80で模型が発売されていた。

 現在は引退し、前面がカーブを描いたクモハ40は、埼玉県大宮市にある博物館に保存されているという。


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