ハガキ職人に学べ

 昭和の頃によく「マンガの描き方」みたいな本があった。1コマで完結させる、2コマで完結させる、3コマで完結させる(序・破・急)、4コマで完結させる(起・承・転・結)、5コマで完結させる。だいたいこの中に基本パターンがあるように書かれていたと思う。


 ドラえもんに「ボールに乗って」という短い作品がある。まずドラえもんが大きなボールのような乗り物の前に立っている所にのび太が来る(起)、一緒に乗ってバットで叩いて飛ぶ(承)、飛んできた野球のボールがドラえもんの頭を直撃、バットを落としてしまう(転)、乗り物は墜落してしまうが野球をしていた少年が抱えるように受け止める(結)。4コママンガを引き伸ばしたような作品だと解る。


 4コママンガの本、それもあまり自分が知らない作品のそのまた二次創作の作品を買ってきて読んでみるというのも、パターンの勉強になるように思う。あまり好きな作品だとキャラクターの方に夢中になってしまうというのもあるし。いや、キャラクターで話を引っ張るパターンもあるんだけど。


 本当は最初は「サザエさん」かなんかを読むのがいいのかも知れない。でもいまいち取っつきにくいと思う。

 パターンの破り方も含めて知るなら「伝染るんです。」、「和田ラジヲのここにいます」、「GOLDEN LUCKY」といったシュールな作品も面白い。


 自分の作品を書いてみる事を考えると、実は「ハガキ職人」のやり方が参考になる。よく深夜放送に投稿されてるあれだ。「こんな◯◯は嫌だ」とかだと出題されたお題に対する2コママンガのパターンになるだろうか。

 テレビ番組では今はNHKの「ケータイ大喜利」があるか。


 たかがお笑いなどと言う人はいるかも知れないが、ハガキ職人から放送作家になった人もいる。

 古本屋で「天才・秀才・バカ」とかあのねのねあたりの深夜放送本、あるいは「みごろ食べごろ笑いごろ」「笑って笑って60分」あたりの放送作家の書いたコント本を買ってくるのもパターンの勉強としては1つの手だ。いや、さすがにもう無いか。

 私が好きだったものに「欽ドン 良い子悪い子普通の子」があったが、これは「普通→良い→悪い」の3段オチ、3コママンガと言えるように思う。なかなかテレビに素人が短いコントを作って送る機会も無くなったよね。


 昔のテレビ番組という事では「シャボン玉ホリデー」というものがあった。ハガキ職人という言葉はまだ無いが実際に放送作家の登竜門になっていたらしい。

 この中で毎回基本パターンが出来ているものがあった。「おかゆコント」と「お呼びコント」だ。出されたお題に対するハガキ職人の解答に通じるものがある。


 この「おかゆコント」は双子の姉妹が「おとっつぁん、おかゆ炊けたわよ」というのに対し、「すまないねぇ、おっかさんが生きていれば」と父親が返すと、姉妹は「それは言わない約束でしょ」と言う。ここまでは毎回決まっている。

 このあと、どういう展開に持って行ったら笑えるか。母親の幽霊が出たり、全く関係なく畳がめくれてマジシャンが現れるというのもあったらしい。起承転結の起承が毎回決まっている。


 もう1つの「お呼びコント」は話が展開している所で、関係なさそうな衣装の人が出てくる。続いて、この人が何かを勘違いしているのが解るというのが基本のオチだ。

 四谷怪談の話をしていると列車の車掌が現れる。「次は四谷~四谷の駅は階段が狭くなっております~ご注意下さい」なんて言う。周りが凍りついている所で、「お呼びでない? こりゃまた失礼」とか言ってどこか行ってしまう。一同ハラホレヒレハレとか言いながら体を大げさに動かす。起承転結で言えば転結が毎回決まっていると言える。


 基本パターンが出来ると、こんなのも出てくる。強盗が金塊を持ってクルマで逃走している「こりゃ80キロはありますぜ兄貴」「いや100キロはあるんじゃねえか」。そこへ白バイ警官が現れる。「君たち、さっき80キロとか100キロとか言っていたな」「ここは40キロ制限だぞ」「あ、お呼びでない…」。捕まえるんじゃないのかよ。とまあオチになるまで「お呼びコント」と解らないものもあった。


 少しずれるかも知れないが、短いコントの組み合わせというと「ドリフ大爆笑」もそうだ。中でも自分が好きだったのは「神様コント」。神社で神様にお願いすると本当に神様が降臨するが、この神様、頭は爆発しているし、耳が遠くて色々あって呆れられる。神様は今度は自分で神様にお願いするが、インド行者のような別の神様が降りてきて~というシュールなものだ。

 これは神社以外に、時代劇で(実際は将棋の坂田三吉だったらしい)神棚に「神様、あの人が勝ちますように」と言ったのがきっかけだったり(壁が開いて神様のいる部屋がでてくる)、キリスト教の団体のお天気番組(「今日の天気」と書かれた壁に神様がお願いしている画がおかしい)とか、プロポーズ大作戦(前半部分は会いたい人を探してくる番組、「神の御前にて~叶えたまえ~」というのがお約束になっていた)の収録中に降臨してしまうのもあった。さすがにアマチュアの投稿から作っていなかっただろうが、こうなるともう5コマ以上のパターンだろう。


 色々参考になると思うので、「もしものコーナー」などは機会があったら見てほしい。同じ舞台装置を使って同じようなシチュエーションからどう話を展開させるか、それをいくつか続けて見られる。

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