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怪人ウンババについて

 関西では「オチの無い話」というのが嫌われるらしい。

 テレビのお笑い番組で演じられるものなど、間違いなくそうで、脚本を作り、それに沿ってセットを組み、小道具や衣装を準備する。観ている側はそう思っている。

 コントは大体「筋書き通りに最後までやって、そこで終わり」というものである。

 たまに、コントが終わったあと、「お疲れ様〜」とか言っている所まで放送され、ゲストが「いや〜結構大変でした」なんてコメントしている場合もあったが。

 シュール化という言葉が正しいかどうかは分からないが、この辺を崩していくと見慣れないものが出来上がってくる。
 
「ダウンタウンのごっつええ感じ」に「学校の怖い話」というコントがあった。

 不良学生達がトイレで「かったりーな」などと言っている時に、誰かが個室に入っている事に気付く。

「学校でウ◯コしてんじゃねーぞ」

 学生達が扉を開けると中には人間ではなく、松本人志演じる怪人の「ウンババ」が入っている。

「トイレを汚すのはだれですかー」

 出てきたウンババは膝を曲げて片足で立ち、両腕を広げて体を揺らし、

「ウンババ〜」

 と叫ぶ。

 ウンババはトイレの個室から何かを出してくる。そこには台車に箱がいくつも積み重なっている。
 そして箱にはいちいち1つ1つ「ウンババ」と書いてある。個人的にはこの辺りが凄くおかしい。

 ウンババは箱に入ったおもちゃのウ◯コを投げつける。

「運がいいとか悪いとか、人は時々口にするけれど、そういう事は確かにあると、あなたを見ていてそう思う(さだまさしの曲の歌詞)」

「運は待っているものではなく、つかみ取るものである」

 ウンババはセリフを語りながら中身を投げつけて、箱が空になると、空になった箱を降ろして横に置いて、もう1つその上に置いて、さらにその下の箱から中身を投げつける。

 そしてウケが悪いと思ったのか、オチが浮かばないと思ったのか、ウンババは「やめよか?」と言ってカツラを取ってしまう。「きつい」、「切ない」、「悲しい」。ウンババらしくない言葉が漏れる。

 学生役の浜田が「まあまあ、一生懸命やったんや」と慰める。

「誰か来週やってくれへん?」

 既に来週もやる事が決まっているらしい。
 ウンババの言葉に浜田は「あんたがイヤや言うの、誰がやるねん」と真っ当に返す。

 ウンババは生徒役の東野幸治に、「東野、」と声をかける。

「来週ウンババですか」

 東野は渋々了承する。

 コントに参加していた全員が口々に「ようやった」、「おつかれさん」等と言って終わる。後には残されたセットと投げつけられたウ◯コが残る。

 多分(間違いなく)最初から「コントがイヤになって途中でやめる」筋書きだったんだろう。どこでやめるかは指定されてないにしても。

 次の週には東野がウンババ役のバージョンが放送され、松本は、

「1週間これを見るために頑張ったんだよ」

 などと言っていたものだった。東野もやはり1週間考えた上でオチが浮かばないような感じだった。

 セットの関係や、2回で終わった事など、よくよく考えると、2つのコントは同じ日に収録された可能性がかなりあるんだろうけど。

サポートありがとうございます。 はげみになります。