クライスラー・ネオンについて

 自分にとってアメ車と言えばフォードGT40(「フォードvsフェラーリ」!)、427コブラ辺りの印象である。
 他にもフォード・マスタングとかシボレー・カマロとかダッジ・チャレンジャー辺りの、「コンドルのジョー」が愛用していそうなマッチョなクルマ。
 そしてシボレー・コルベット、ポンティアック・ファイアーバード・トランザム(ナイトライダー)、DMCデロリアン(BTTF)辺りが浮かぶ。

 もう少し前は1950年代のキャデラック・エルドラド、シボレー・インパラやフォード・フェアレーン。いやいや、ハドソン・ホーネットやタッカー・トーピードだってあるぞとなる。
 それ以外はピックアップトラック、ミニバン、ジープ、ハマー。ビッグでグレートなのがアメリカンである。

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 さて、クライスラー・ネオンである。かつてアメリカの「日本車キラー」と呼ばれたうちの1つがこのクライスラー・ネオンであった。
 この当時クライスラーの会長、リー・アイアコッカの著書が今で言う「意識高い系」に売れており、どのような手を打ってくるのか恐れられた。どちらかと言うとクルマの出来そのものより、政治的影響力が怖かった訳だが。

 オイルショック以来、アメリカで小型車が求められた。しかしアメリカではほとんどのメーカーが単価の高い(燃費の悪い)大型車に力を入れていた。
 そこでユーザーは日本車やドイツ車に走った。これがおそらく自動車における日米経済摩擦の原因の1つだった。

 もちろんアメリカでも小型車は作られていた。かつてのナッシュ・ランブラーがそうだし、初代ウルトラマンでおなじみシボレー・コルベアもアメリカでは小型車である。
 しかしその後のフォード・ピントやシボレー・ベガは失敗作と言われ、ナッシュの後継AMCのグレムリンやペーサーもまた、スタイリングはともかく良い評判は聞かない。

 そしてフォード・エスコートやフォード・コルチナ、フォード・カプリは、フォードはフォードでも英国車である。

 アメリカでは「日本車はアメリカ車を徹底的に研究して作られている」、「もっと言えばパクり」という考えがかなり強い。もっとも日本の自動車メーカーが研究したのはアメリカ車に限らなかったのだが。

 しかし、アメリカ車を一回り小さくしたような印象のトヨタ・セリカに対抗(?)してシボレー・モンザを開発すると、2代目セリカ(及びセリカXX)はモンザによく似たスタイリングになる流れを見ると、アメリカ人の言う事ももっともかも知れない。

 んで、多分クライスラー・ネオンは日本車を研究して作られたのだと思う。日本車並に安く作ろうと。重いドライブシャフトは止めてFFにしようと。そして出来上がったのが3ナンバーのボディー、2リッターのエンジンに軽自動車並の内装という、ちょっとちぐはぐなクルマなのであった。

 評判は「言われるほど壊れない」、「言われるほど燃費も悪くない」という。しかし「悪くない」と「良い」はちょっと違う。
 日本にいくらでもある「廉価版」、「足代わりのクルマ」なら長期アフターサービスに優れる日本車には敵わない。

 それでクライスラー・ネオンは日本では売れなかった、モデルチェンジしてもやっぱり売れなかったのだが、派生車種のPTクルーザーは結構見掛けた。タクシーにも使われたようだ。
 このPTクルーザー、外装を1930年代の流線型初期のクライスラー・エアフローに似せたクルマであった。クライスラー・エアフローは日本のトヨダAAにも影響を与えたという。いわば先祖帰りであった。

 PTクルーザーは、ひょっとしたらトヨタジャパンタクシーに影響を与えているかもしれない。

 クライスラー・ネオンは多分無駄ではなかった。日本でどんなアメリカ車が売れるのか、それが分かるきっかけにはなったのだろう。やっぱり燃費以外の部分で「アメリカ車っぽさ」が無いと。

 個人的にはアメリカ車として小型を目指すなら、ナッシュ・メトロポリタン辺りのかわいいスタイリングを考えてみるのはどうかと思う。

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