島山あららについて

 藤子・F・不二雄大全集の「ミラ・クル・1」の後書きに、手塚治虫批判をして藤子・F・不二雄(以下F先生)の所をしばらく出入り禁止になった編集者の話が出ているという。
 出入り禁止になる程の手塚治虫批判ってなんだろうと思って読んでみると、

「(手塚治虫は)若い人が出てくると本気で張り合う」

 であった。

 これは素人考えだが、それを口に出すのは、さすがにまずいんじゃないかなと思った。
 これって自分の聞いている「手塚治虫」の根本そのものじゃないか。

 そして、「本気で張り合っていた相手」とされる漫画家には、「若い人」に限らず、水木しげるや横山光輝、白土三平、石ノ森章太郎といった名前が挙がる。
 諸星大二郎、大友克彦、荒木飛呂彦、手塚治虫が認めていたのはみんな天才、秀才と言える無茶苦茶上手い人達だったとも聞いている。

 他ならぬ藤子不二雄コンビもその中に含まれており、高校時代の2人が持っていった作品を見て仕事が手につかなくなり、後に「ドラえもんにはかなわない」とも言っているという。

 そしてF先生も、口には出さないにしても対抗していた若手がいたのではないか。

 F先生の代表作の1つ「ドラえもん」の劇中劇には、古くはボロコンがあったし、他にバンダム、建設巨人イエオン、ゼイ肉マンも気になる所なのだが、やはり、一番無視できないのが「Drストップ アバレちゃん」だと思う。

 この「作品」が載っているのは「てれびくん」1982年5月号初出で、単行本「まんがのつづき」というタイトルになった。「Drストップ アバレちゃん」の作者は「島山あらら」だ。パロディとして出来が良すぎる。

 近所に住む漫画家としてフニャコ(多分フニャ夫)先生も登場するのだが、そこにのび太が訪ねた理由は「島山あららの住所を聞くためだけ」、毎回良い役をもらえないフニャコ先生にしてもあんまりだ。

 島山あららは、少年ジャブン、少年キングコング、少年ホリデー、少年キャベジン、少年チャンポン、てれびさんといった雑誌に連載を持っている。異常な忙しさだ。

 モデルになった(に決まっている)鳥山明は当時はジャンプがメインであったが、小学館の学習雑誌に見開きで「アラレちゃんの冬休み」とかいうカラーページが載ったりした。
 もともと集英社は小学館から分社化したので、こういう事も可能だったのだろう。

 1979~80年は無茶苦茶ドラえもんが流行ったが、1981~82年頃のアニメ、「Dr.スランプ アラレちゃん」のブームも忘れられない。

 鳥山明は模型が趣味であり、その作品中にしばしば未来的(だけどどこか懐かしい)ガジェットが登場、編集者の助言もあって児童層にも分かりやすい作品になっているなど、F先生の作品とも共通点があるように感じる。

 かわいらしくて強いロボットというのも、F先生は先に「ドラえもん」で百万馬力のロボ子さんを描いたりしている。
 また、「Dr.スランプ」は本来は毎回発明による珍騒動を描く、「キテレツ大百科」的な作品になるはずだったらしい。

 逆に、後に鳥山明が「Dr.マシリト アバレちゃん」という作品を描いているのも、興味深い所である。

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