夏の朝

覚えていたいことができた。

朝6時45分、自転車に乗って家に戻る後ろ姿。お互いストライプのシャツを着ていたこと。

届けてくれた香水はアールグレイの香りだった。他と重ね付けして使うらしいその香りは、彼の匂いではなかった。重ね付けすると第3の香りが生まれることに驚いた。彼の香りの片鱗すら出さないアールグレイに感謝している。

8月の早朝は涼しくて、どこか秋晴れに似ていた。彼にしては珍しく、遅刻せずに なんなら集合時間の10分前に私の家の前に着いていた。

少し話して、香水を貰って、彼の家までの道を歩いた。私の好きなところ、私が大切な人であること、自分を大切にしてくれる存在であること、自分を自由でいさせてくれることを話してくれた。

私は何も言わなかった。私にとって彼がどんな存在なのか。気持ちがフワフワしていた。ただただ私に対する気持ちを聞きたかった。

別れ際、彼氏が可愛いって言ってくれなくなったらLINEして、と言ってくれた。じゃあねと言って別れた。彼は道を進んで私は歩いた道を戻る。

帰り道は暑くて、だけど確かに気持ち良かった。忘れられないんだろうけど、忘れたくないと思った、自転車に乗った彼の後ろ姿。

誰と会っても誰と過ごしても、誰と別れても私は強くなれると思った。次、彼に会う時の自分を思うとこれからが楽しく思えた。

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