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失敗しない半纏作り・店選び③-半纏の仕様と値段の関係-

 半纏は誂え物(オーダー品)として、いろいろな要因で値段が変わってきます。
具体的にどのような部分がどの程度値段に関係していくか、説明したいと思います。

その前に。これからの説明に半纏に関する用語がでてきますので、必要な方はこちらを確認すると理解しやすいと思います。
↓半纏の柄・模様をつける場所の名前↓

・型代

 柄、大紋、文字などをつける場合、まずは型紙を作ります。
(型紙を使わない技法[筒描き、昇華転写]もありますが、今回は外します。)
その作業は型代として費用が発生します。
型の数が増える、細かい柄ほど型代がかかります。
型代が大きくかかる半纏の仕様の一例としては、
1.半纏に個人名をいれること
→名前の数だけの型代がかかります。
2.腰の柄
→小幅生地を使う場合、1枚の型だけで済む柄、4枚型を作る必要がある柄もあります。その時、単純計算ですが型代は4倍です。
3.惣型/総柄
→柄の細かさ、付下げなどでも値段はそれぞれですが、同じ柄でもお店によってかなり値段が違う場合があります。
このあたりです。
 また型は、工場や染色技法などにより、1回作れば数年~壊れるまで保管する場合と、1回/シーズンで壊す場合があります。
傾向としては、枠と型紙が外せる引き染めや藍染などの技法の型は保管で、型紙と枠がセットになる捺染のような技法の型は壊す場合があります。
枠が付く型は、保管にかなりのスペースをとられるためです。
追加注文のある町会などは、型に関する費用を確認すると良いと思います。
例えば毎年の追加注文枚数が多いようであれば、型を壊すようなお店でも、保管について相談することはお互いにとって良いと思います。
 お店によっては自身でいくつかの型を所有していることがあります。
(相澤染工場では有型「ありがた」と呼んでいます)
その型を使う場合は型代がかからないので、非常にメリットが大きいです。
この有型は惣型に多いです。
とくに代表的な柄(縞、吉原つなぎ、紗綾型など)を持っているところは比較的見つけやすいかもしれません。
有型を見つけるのに取引の多いおたなを介すことで、間を通す事になりますが、結果的にコストが抑えられるという場合もあると思います。
惣型は内容によって、手彫り/機械彫りにかかわらず数万~10万以上かかります。
それに前述のように経験上、お店によってかなり値段が違う場合があるので、
惣型や繊細な柄、型を多く作る必要がある半纏は、いろいろなお店に見積もりを出して比較することをおすすめします。

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・枚数と染色技法

 注文枚数が多い程、価格は安価になります。
とくに枚数が多いと作業効率の上がる染色技法は、より恩恵を受けられます。
一方で手作業が多いなど、それほど作業効率の上がらない染色技法の場合はあまり安くなりません。
例えば、前者は「捺染」、後者は「引き染め」があてはまります。
一方で、注文枚数が少ない場合は引き染めの方が割安になることがあります。
反応染料は、捺染、引き染めどちらの技法でも使われるので、
注文する半纏の枚数と合う技法のお店を探すことが重要と言えます。

・仕立て、寸法

 当たり前ですが、仕立てが複雑で、生地を多く使う(大きい半纏)ほどコストがあがります。
半纏の仕立ては柄合わせが必要ですが、基本的には直線縫いでシンプルな縫製です。
その中で特殊な形の半纏を作る場合に、価格がぽんとあがる感じになります。
例えば、被布半纏や、刺し子のような厚い生地の仕立て、リバーシブルの無双半纏といったところです。
 生地も特殊なものが割高になります。
特殊な生地自体が割高であること、小ロットの仕入れにより生地値が上がること、ロット上必要な量以上仕入れなくてはいけない状況が起こるからです。
使いたい生地を取り扱っているお店を選ぶ、お店の在庫から似た生地を選ぶのが、コスト的には割安になります。
他にはシルク生地は、高価な素材、縫製も基本的に手縫いとなるので、大きく価格が上がります。

・染料、色数

 染料同士の価格差はありますが、半纏製作工程全体で考えるとその価格差はわずかです。
使われる染料についてはこちらの記事を参考ください。


 色数は多い程、価格があがります。
引き染めの場合は、刷毛による色さし。引き染めの回数が増えます。
捺染の場合は、色の数だけ型の数が増え、捺染する回数が増えます。
つまり半纏の値段は、染料の値段よりも染料の使い方(工程・手間)に影響するということです。


・まとめ

1.同じ型でもお店によって型代が大きく変わる場合があります。
2.染める枚数によって価格的に最適な染色技法は変わります。
3.特殊な仕立てと生地になるほど値段が上がります。
4.染料の材料費よりも、工程(色数・手間)が半纏の値段に影響します。

こうした組み合わせで半纏の価格が決まっていきます。

以上です。最後まで読んでいただきありがとうございました。
価格が高いなと思った時には、他のお店に見積もりを出してみることと、上記のような項目に注目して検討してみてください。

相澤染工場への問い合わせはこちらからどうぞ。
半纏以外でも、藍染製品に関すること、染色に関することなどお気軽にどうぞ。


これまでの記事「失敗しない半纏作り・店選び」のリンクです。



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