多分一生完結しないだろう話の冒頭
・話の流れは出来てるけど細かい犯人の動機とかトリック的なとこを考えるのダルすぎて5年くらい経った代物、もはや呪物
幼馴染が死んだ。そう母から聞かされたのは日曜の昼だった。
学校の屋上から、イジメを苦にしての飛び降り自殺だったという。
それを聞いて俺は、「らしくないな」とだけ思った。
幼馴染とはいえ、死んだ彼とは中学に上がった頃辺りから付き合いは希薄になり、かれこれ4年ほどまともに話していない。
学年は彼の方が一つ上だし、アウトドア派な俺と違って、彼は家で漫画やらゲームやらする方が好きなやつだったから。
中学の頃は通学時間が重なれば少しだけ話すことはあったが、それも高校に入ってからは重なることなどほとんどなくなった。
ただ、母同士は時々話をするのか、母からアイツの情報が入ってくることはあった。
相変わらず家の中にばかりいるとか、最近ちょっと物をねだられるのが多い気がするとかそんな話。
今思えば、強請られてたのかもね、と母がつぶやいた。
「お通夜には顔を出すからね。
あんたも制服とか数珠とか準備しといてよ。」
香典用の袋を買ってくるから、とそのまま出かけていく。
制服はともかく数珠なんて、小学校の時に遠い親戚のおばさんの葬式以来どこにやったのだか……。
まあザッと探してなければ母に連絡してついでに買ってきてもらおう。
「この度は、誠に御愁傷様です……。」
そう母が頭を下げた先には彼の母がいた。
いつもならニコニコと俺に向けられる笑顔は、今日は消えてしまいそうなほど弱い。
たった1日で、こんなに人は変わってしまうものなのか。
「棗くんも、わざわざありがとね。
秀悟もきっと喜ぶわ…。」
そう言ってる内に目に涙が溜まり、ごめんなさいね、と顔を隠し拭う。
そんな姿に俺は何も言えず、見かねた母が声をかける。
「無理しないでね。
何か手伝えることがあったら言ってちょうだいね?」
「ありがとう。でも、本当に……着てくれただけで……。
ごめんなさい……、少し落ち着いてくるわ。」
そう言ってその場を離れ、旦那と一言二言話すと裏へと行ってしまった。
慰めるべきだったのか、だけど俺の言うことなんて薄っぺらすぎる。
母に促され線香を上げに並び始める。
イジメという理由からか、クラスメイトなどは呼ばれていない。いや、お通夜だからか。
もしかしたら葬式なら来るのだろうか?アイツなら嫌がりそうだな。
「何で自分が死ぬ原因になったやつに看取られなければならないのか。」なんて言うのだろう。
本当にイジメが原因ならば。
列がゆっくりと前に進む。
アイツは虐められれば笑って倍のことをやり返す奴だ。
視界が白く覆われていく。
それも思いっきり正攻法で。誰も彼もが彼が正しいと口を揃えて言うようなやり方で。
視界が歪む。
ああ、そんな彼が自ら死ぬなんてありえない。
そして何より、俺が泣くなんてありえない。
「まったく、ポルターガイストもできやしないなんてこの体も不便だな。」
聞こえるはずのない声に顔を上げる。
同時に自分の視界周辺に何かが纏わり付いているのがわかった。
「やっぱクチナシもだめかなー。
死人にクチナシ、なんてギャグみたいな事できるかと思ったんだけど。」
そう言い残すとスイーっと何かが移動を始める。
そして喪主である彼の父に近づいてポヨンっ、と頭に乗った。
半透明の、白いもち……?わらび餅?
いや、もっとなんと言うか、でも所々なんか凹凸があって……なんだあれ?
じっとそれを見ていると、もちがポヨンポヨンその場で跳ねる。
「お?お?もしかして見えてる?クチナシもしかして俺が見える!?」
もちからそう言葉が飛んでくる。
なんだあれは、そう思っているといつのまにか列が進んでたのか母に前にと急かされる。
とりあえず、もちは視界に入れたまま前に進む。
「あ、まあそうか、見えててもこんな空気じゃ言いづらいよなあ。
ならクチナシ、先にお前んち行ってるから後で話そうか。」
そう言ってもちはふわふわと開場の外へ流れていった。
いや待て待て!おま、俺よりご両親は!?心配じゃないわけ!?
ていうか俺の部屋勝手に上がるの!?やめて!?
っていうかこれお前の葬式なんだけど!?!?
そんなツッコミできるわけもなく、とりあえず焼香を上げることに専念する。
土色の顔、今まで見たことのないその顔に一瞬涙が出そうになるものの、先ほどのもちを思い出したことですぐに引っ込んでしまった。
本人はきっと今頃俺の部屋乃ベッドで寛いでいるだろう。あれが本当に彼ならばの話だが。
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