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インクルーシブ教育実践推進校

■ 「共生社会」に向けた取組

 神奈川県が最近始めた制度で、2017年度入学生から、県中・西部の3校で試行的な「パイロット校」を指定したのが最初です。
 3年間の試行を経て、2020年度からは県下14校(11校追加)に指定を拡大して、全県的に本格実施されるようになりました。
 2024年度から更に4校が追加指定され、現在は18校あります。

☆ 「誰もが大切にされ、いきいきと暮らせる『共生社会』をめざして、知的障がいのある生徒が高校で学ぶ機会をひろげながら、みんなで一緒に過ごすなかで、お互いのことをわかりあって成長していく」(神奈川県HPから) 

 この「共生社会」というのは、2016年に起きた「津久井やまゆり園事件」を契機として積極的に取り上げられるようになっています。元々それ以前から提唱されてはいたのですが、それ以降、神奈川県が特に力を入れているように思えます。
 その取組の一環として、県立学校での教育にも「共生社会」の理念を取り入れるための一つの施策に位置付けられているということなんでしょう。

 具体的な選抜方法は、標準的な規模(1学年7クラスが基本)の高校において「各クラス3人程度」を、一般の入学者選抜とは「別枠」にして「軽度の知的障害」のある生徒を対象に面接のみで選抜を行う、というものです。
 この選抜方法からも、中学校の特別支援学級にいた生徒を主な対象として考えているのではないかと思われます。

 横浜市内では本格実施以降、県立の城郷高校、霧が丘高校、上矢部高校の3校が指定、実施されています。
 当初は住所地によって希望できる高校が決められていて、横浜市内在住の生徒はこの3校にしか志願できませんでしたが、2023年度入学から、県内どこの「インクルーシブ教育実践推進校」でも選択できるようになりました。
 また、2024年度入学からは、新たに4校の県立高校が追加され、横浜市内では白山、保土ケ谷、横浜南陵の各高校が指定されました。

 概ね、いわゆる「偏差値」が(それだけで考えるのもどうかとは思いますが)40台後半、平均から「少し下」くらいと言われる学校が多い印象ですが、一部に50台半ばの高校もあります。
 ただ、あまり「上位」の学校の場合、インクルーシブ枠で入ったとしても、入学後の学習について行くのが大変になるような気もしますので、本人の「特性」や「適性」を充分考慮した「学校選び」が重要になると思います。

■ 入学者選抜

 「インクルーシブ教育実践推進校」の入学者選抜は、一般の公立高等学校(県立・横浜市立・川崎市立・横須賀市立)の「共通選抜」と同時に「特別募集」として行われます。
 そのため基本的な試験日程は、一般入試と同じです。

 基本的には、例年1月下旬に募集期間が設定され、その時点での志願状況が発表されます。
 それを受けて志望校の変更を希望する場合には、2月上旬に設定される「志願変更」の期間内に手続が(インクル高の特別募集と一般高校との間でも)可能です。
 学力検査や特色検査、面接(現在は特色検査に組み込まれました)は、2月半ばに実施されますが、学力検査の日程は同日なので複数の学校を同時に受検することができないのは、他の都道府県と同じです。また、学校によって特色検査の内容が異なったり、実施しない場合もあります。

 「インクルーシブ教育実践推進校」の場合は、この学力検査ではなく「面接」で選考し、日程はほぼ同様です。
 また、通常の「共通選抜」とは異なり、いわゆる「内申点」は評価に使用しません。

 神奈川県教育委員会のウェブサイトでは、次のような「よくある質問」が紹介されています。

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Q 志願資格にある「知的障がいのある者」について詳しく知りたいです。

A 知的障がいがあるという子どもの状態は幅広く、さまざまです。この特別募集は、障がいを実践推進校が判断するのではなく、中学校や家庭などでの学習や生活の全般の様子から、自分には知的障がいがあるが、高校で学びたいという意欲がある生徒に、進路選択の幅を拡げるための取組です。なお、在籍の学級や、療育手帳の有無は問いません。

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Q 入学者選抜の資料となるものは何ですか?

A 神奈川県立高等学校等入学者選抜インクルーシブ教育実践推進校特別募集においては、面接の結果を選抜の資料とします。中学校の調査書の評定、中学校の在籍学級、療育手帳等の判定による知的障がいの程度などは選抜の資料としません。

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 つまり「内申点」だけではなく、特別支援学級にいたのか一般学級だったのか、療育手帳を持っているか、なども「不問」です。
 また「軽度の知的障害がある」生徒、という前提ではあるのですが、その基準は「自称」といっていいレベルで可、ということになります。

 一般の「共通選抜」と同じく、例年3月初め(時々2月末)の「合格発表」になります。

 この段階で「定員割れ」をしている高等学校では「二次募集」を実施する流れになりますが、当初「インクルーシブ教育実践推進校」の「特別募集」では二次募集の対象外になっていました。
 息子たちと同じ2022年入学から「インクルーシブ教育実践推進校」でも、定員に達しなかった場合には「二次募集」を行うことに変わりました。

■ 入学後の学習など

 この「インクルーシブ教育実践推進校」については、当時はまだ始まったばかりの制度ということもあり、中1・中2を対象とした「学校説明会」や「見学会」が、頻繁に実施されていました。
 恐らく、今でもこれは変わっていないのではないかと思います。

 また、中3の時には、指定された「中高連携事業」に参加することが必須になります。
 これは、特別支援学校の「志願相談」と同じような仕組ですが、内容的には「インクルーシブ教育実践推進校」の目的や特徴をしっかりと理解してもらい、納得したうえで志願するようにさせるような事業という位置付けに感じました。

 息子が中1の時の説明会では、まだ制度が始まったばかりということもあるのか、学校側もかなり「受け入れ」に対して腰が引けているように(特に上矢部高校)感じました。
 しかし、実際に受け入れが始まり、最初の入学者が3年生くらいになった頃の説明を聞くと、かなり前向きになったように思います。

 当時は、横浜市内の3校しか選択肢がありませんでしたが、霧が丘高校は、若葉台特別支援学校と同様、物理的な通学面で難しいかと思いました。
 そこで、城郷高校と上矢部高校の説明会に参加しました。「中高連携事業」は、どこか1校で参加すればいいのですが、これも2校とも参加しています。

 城郷高校と上矢部高校では、生徒の「雰囲気」にかなりの「差」を感じました。
 もちろん、どちらが「上」だ「下」だ、ということではありません。例えばうちの娘に「『陽キャ』と『陰キャ』の比率の違い」と言えば通じそうです。
 また、まだ導入直後の時期でしたが、上矢部高校よりも城郷高校のほうが受け入れに積極的な印象を受けました。でも息子的には、どちらかと言えば上矢部高校のほうが合いそうな感じでした。
 このあたりは、親よりも本人が「どちらが自分に合いそうか」という観点で判断するしかないかと思います。その意味でも、本人が実際にその学校まで行ってみる必要性が高いと思います。

 他の校種と同様に、やはり受検する可能性がある学校については、必ず「学校説明会」など(もちろん「中高連携事業」は必須ですが)に参加するとともに、その学校の「生徒」を含めた「雰囲気」は確認したほうがいいでしょう。
 説明会などには保護者の負担も考慮してか、土日などに開催されることもありますが、その場合には「部活」で登校している生徒くらいしかいませんので(誰もいないよりはマシですが)、もしかすると印象が少し違うことになるかも知れません。
 このあたりも、入学後の「ミスマッチ」を回避する上では、一つのポイントになり得ると思います。

 この「インクルーシブ教育実践推進校」に入学した後の話になりますが、大半の授業を一般の生徒と共に受けることになります。
 一部の授業(数学などが多い印象です)については、それに代えて「キャリア教育」に特化したカリキュラムを別室で受けたりします。そこで抜けた科目の一部は、次年度以降に選択科目にできることもありますが、全部ではありません。従って、高校卒業後の進路に必要になるかも知れない科目を受けられない可能性があることは、頭の隅に置いておいたほうがいいかと思います。

 その「キャリア教育」などのカリキュラムなどで使う「リソースルーム」は、その他にも「クールダウン」やインクルーシブ枠の生徒の交流にも利用されています。
 しかし、やはり大半の授業を通常の教室で過ごすことになりますので、言ってみれば、中学校までの「個別級」と「交流級」での時間配分が「逆転」するようなイメージかと思います。中学校までに「交流級」で過ごす時間が、もし「苦痛」に感じていたようだったとすると、少し厳しいことになるかも知れません。

 インクルーシブ枠での出願にあたって「軽度の知的障害を有する……」という条件はありますが、手帳の有無は問われていないのは既述のとおりです。しかし、卒業後の就労を考えた場合には、手帳があったほうがベター(有利になる)だろうな、とは思います。
 ただし、学校側には特別支援学校ほどの「(障害者枠での)就職に関するノウハウ」は期待できないと思います。もっとも、指定されている高校のラインアップを見ると、一定数の卒業生が、卒業後に「進学」ではなく「就職」を選択している学校が多い印象ですので、(手帳の有無を問わない)「一般就労」については、特別支援学校とは違った「強味」を持っているかも知れませんし、その中で「手帳を持っている」ことによって、可能性が更に拡がることもあるかも知れません。

 一方で、いわゆる「普通の高校」ですので、特別支援学校では例外的になる「進学」に関して、より多くの資源も持っていると思います。
 大学に関しても「指定校推薦」の枠がある高校も珍しくありません。ただし、後述するように「成績」は「オール2」に近くなる可能性もあるため、インクルーシブ枠での入学者にとっては相当な難関だと思います。
 それでも卒業後の「進路」についての「幅」は(ハードルが高くなる部分もありますが)特別支援学校よりも格段に拡がると言えます。

 義務教育外の「高等学校」ですので、当然ながら「成績」の評価があり、知識や理解などが一定のレベルに達していなかったり、出席時間数が足りなかったりすると、「単位」の修得に至らず、「原級留置」(いわゆる「留年」です)になることもあります。
 成績の評価に関しては「個々人の能力に応じて柔軟に設定した指標」に基づいて行う、とされていますが、一般枠の生徒とのバランスから、どうしても(5段階評価での)「2」が多くなってしまいそうな気がします。
 説明会などでも「5段階で『2』以上あれば単位習得ですから」というフレーズが良く出てきましたので「個別に配慮した『目標』のクリアで『単位習得』とする」ため「2」にせざるを得ない、というように聞こえました。

 もちろん、一般の生徒と同じ試験を同じ条件で受けた上であれば、同じように評価してもらえるはずです。
 ですので、得意な(個別配慮不要な)科目であれば「5」が付くこともあるでしょう。
 でも多くの科目で、となるとなかなか難しいだろうな、と思います。そもそも「軽度の知的障害を有する生徒」を対象にしている制度ですから、ある程度仕方のないことではあります。

 それでも、特別支援学級と一般学級での学習内容の違いのために「交流級」での授業をあまり受けられなかっただけで、学級活動などは普通に、むしろ積極的に参加できていた息子にとってこの「インクルーシブ教育実践推進校」の制度は悪くないと思いました。
 特別支援学級の担任も「これは彼(息子のこと)のような生徒のためにある制度だと思う」と重ね重ね言っていました。

 なお、既述のとおり「インクルーシブ教育実践推進校」の「特別募集」での入学選抜は、一般の全日制公立高校と同日程になっていて、相互に「志願変更」もできます。ただし「面接」のみで学力検査がないため、実際の細かい日程は少し異なる場合があります。
 もちろん、この「特別募集」と一般の「共通選抜」を「併願」することはできません。実際に受検できるのは「不合格になった場合の二次募集」を除いて、どちらか一つ(1校)だけです。

 一時は「定員以上に志願者が多いかも」と心配していましたが、実際にふたを開けてみると、2022年入学の特別募集で定員を超えたのは城郷高校と伊勢原高校だけで、それ以外は「二次募集」を行っています。

■ 恐らく気になるであろうこと

 「インクルーシブ教育実践推進校」について実際に「よくある質問」の代表的なものが「入学後に『インクルーシブ特別枠』で入学したことが他の生徒などにわかるのか?」だろうと思います。

 これについては、学校側から(名簿や出席番号などで)示すことはありません。
 しかし既述のとおり、一部が「別カリキュラム」になる関係上、自ずと判ってしまうことになります。これは学校側も当然認識しています。

 「出席番号」については「特別支援学級」の項でも触れましたが「永遠の課題」でしょう。
 ですが、少なくとも「インクルーシブ教育実践推進校」の理念に立ち返れば、これは「混合式名簿」でなければおかしいですし、実際そうしている、とのことでした。

 個人的には、それよりも「特別枠」で入学した生徒が「お客さん」的な扱いになってしまわないか、ということのほうが気になります。
 息子は、中学校までの「個別級」と「交流級」の行き来の中では、比較的自然に受け入れてもらえていたと感じますが、すべての特別支援学級の児童・生徒がそうか、と言われれば、色々なケースが考えられるのではないかと思っています。
 いずれにしても、結局は本人が充実した「高校生活」を送れるかどうか、が、最も大切なことではないかと思います。

 息子の場合、色々な学校の見学などを通じて「高等特別支援学校等」と「インクルーシブ教育実践推進校」との「迷い」が強くなりました。
 特に「高校を出てすぐに就職する」ための職業訓練的なものが大半の授業、という学校生活をずっと続けることに違和感を持ったようでした。

 本人がはっきりと言った訳ではないのですが、何となく「姉(娘)や友達と同じように、いわゆる『普通の高校』でやるような勉強や部活動がしてみたい」と思っていたのではないかと感じたこともありました。
 卒業した後の進学や就職について考えているというよりも、中学校に続く3年間をどう過ごすか、ということに対して、自分なりに描いたイメージがあったのかも知れません。

 そもそも、中3くらいで「将来何がやりたい」なんて決まっているほうが少数派かも知れません。
 高校時代、場合によっては大学時代でさえも、漠然とした方向性くらいはあるでしょうが、いわゆる「モラトリアム」な期間だった、という人のほうがずっと多いんじゃないかな、と思います。

■ 振り返ってみると

 結果として、息子はこの「インクルーシブ教育実践推進校」の特別募集には志願しませんでした。
 ですが、中学3年の2学期終わり頃まで「高等特別支援学校」との間で、ずっと迷っていたのも事実です。

 何気なく「2学期」と書きましたが、当時の横浜市内の市立中央校は「前後期制(二学期制)」でした。
 個人的には、どうしても違和感を覚えてしまうので「三学期制」で表現するほうがしっくりきます。
 大学等のように、前期と後期で取得する「単位」が分かれるならともかく、全員が通年で同じ科目を履修する義務教育課程には、何となく合わない気がしています。むしろ、長期休業を「節目」とする生活のリズムに合わせるほうが自然だと。
 高等学校であれば、そもそも「選択科目」もあるのですから、科目によっては「半年」に集約する工夫をして、履修可能な分野に「幅」を持たせる工夫ができるかも知れないと思います。一理あるとは思うのですが、実際そんな運用の高等学校を聞いたことがありませんし、制度上不可能なのかも知れません。

 なお筆者は、教育学部だった訳でもなく、通った大学には「教職課程」すらなかったので、教員免許などもありません。
 でも、学生時代は教育実習はしてみたい、と思っていたこともあって、教職課程がない代わりに、と小さな学習塾で講師をしていたことがあります。
 それも「募集」を見て、とかではなく、学生時代の長期休業時などにアルバイトをしていたビルメンテナンス会社の社長に連れられて、たまたま行った「カラオケスナック」でその塾の「塾長」と知り合った、というのがきっかけでした。社長やバイト仲間全員が「ボックス席」に入り切らず、筆者だけが近くのカウンター席にいたら、隣がその塾長だったのです。
 塾長曰く「今、理科、特に化学とか生物を教えられる人を探している」とのことで「理系」だった筆者には難しいことではありませんでした。
 という経緯だったので、その学習塾では「カラオケスナックでスカウトされてきた先生」という謎の経歴のまま、大学卒業後も現在の仕事に就くまで続けていましたので、4年半くらいやっていたと記憶しています。最終的には「算数・数学」はもちろんのこと、何故か「人手不足」のために「英語」まで担当したこともありましたが、筆者のは「外国人には通じるけど日本人に通じない英語(いずれ機会があれば説明するかも知れません)」なので、担当するのは中学生だけで勘弁してもらいました。

 話が逸れました。

 息子が最後まで「インクルーシブ教育実践推進校」と「高等特別支援学校等」で迷ったのは、どちらかといえば「インクルーシブ教育実践推進校」のほうが「第一志望」だったからです。
 既に書いたとおり、卒業後の「手帳を活用した一般就労」に向けた「訓練」が中心になる学校生活よりも、どちらかと言うと「普通の高校生活」のほうが「してみたい」と感じていたのだと思います。

 保護者から見ても、卒業してすぐに就職することだけを考えれば「高等特別支援学校等」のほうがいいことは確かです。
 「インクルーシブ教育実践推進校」の場合、障害を持つ生徒という前提で入学してくる訳ですから、それを前提とした進路も考えてはくれると思うのですが、特別支援学校ほどのノウハウや「ルート」は持っていないでしょう。
 しかし、卒業後すぐに就職という選択肢以外もあり得る、ということまで考慮すれば、少し違ってきます。
 「インクルーシブ枠」を設定している高等学校は、いわゆる「中位校」か少し下といわれる学校が多いので、卒業生はある程度「就職」と「進学」に分かれます。むしろ、最も「選択の幅」が広い層だとも言えるでしょう。

 そのように考えると、集団での「授業」などについていくことができるようならば「インクルーシブ教育実践推進校」のほうが「可能性」が拡がると考えられそうな気がしました。

 尤も、説明会などでも繰り返されたように「高校」での「成績」はあまり期待できません。
 なので、就職にしろ進学にしろ、学校からの「推薦」の「順位」も自ずと高くはならないでしょう。
 それでも、本人にとって中学卒業後の「学校生活」として描いている「イメージ」あるのなら、なるべくそれに近いものを経験させてやりたい、とも思いました。

 その後のことは、またその時に考えればいい。

 成長とともに、できることは格段に大きくなった。
 これからも、もっと変わっていくかも知れない。

 今「こうするべきだ」と決めてしまっては、その後の「変化」と合わなくなったり、あるいは(いい意味での)「変化」できたかもしれない芽を摘み取ってしまうかも知れない。

 最も残念だったのは、順序が「特別支援学校」のほうが先で、かつ「特別支援学校」に合格してしまったら、そちらに行かなければならない、ということでした。

 普通の「入試」の場合には、仮に「第二志望」が先で「第一志望」が後の試験日程(合格発表も含む)だった場合、第二志望に合格したらそれはいわゆる「滑り止め」になるだけでしょう。
 逆に第一志望のほうが早い日程ならば、そこに合格した時点で、第二志望を受けなければいいだけのことです。これは息子のような「特別支援教育」が絡む場合でも同じです。

 こういうの、意外と色々ありますよね。

 筆者も、大学入試では経験しました。
 私立大学同士ならば違うのでしょうが、第一志望が「国公立」の場合には、日程的に先に行われる「私立」をいくつか受験して「確保」しておくのが「定石」でした。もちろん「入学金」とか「前期授業料」などを国公立の入試前に納めなければならないことがほとんどだったので、ある意味「掛け捨ての保険」みたいなものでしたから、数的には「ほどほど」になりましたが。

 一方で「就職」の際ですが、筆者の卒業時は、まだ「バブル」の末期だったので「売り手市場」でした。
 筆者は「工学部」でしたから「どこか一社内定したら完了」というのが基本でした。
 一方で、文系学部の人だと、何社からも「内定」「内々定」をもらっておく、というのが多かったように記憶しています。
 筆者自身は、何だかその流れに入って行かず、その後しばらく放蕩しながら片手間に「塾講師」(専任というよりは「パート」的でした)をして2年間過ごしましたが、その間に「バブル崩壊」という事態になってしまいました。

 今では、入試も就職も、色々と「ルール」が変わっているのですが、何事も「順番」は大事だな、と思っています。もちろん「ルール」をきちんと理解して「計画」を立てなければならないことは、言うまでもありません。

 そう考えると、結果として「高等特別支援学校」の入学者選抜は受けたものの、合格発表直前に「取下げ」に至ることにはなりましたが、色々な制度の学校を見学し、説明を受けて、それぞれで相談や質問を受けてもらったことは、保護者としても、また本人にとっても「納得したうえで進路を選択した」ということに繋がったと思っています。

 横浜市を含めた神奈川県内の特別支援学校については、そこでも触れたように「合格したら必ず入学する」ことが大前提になっています。他の学校を受験するのであれば、遅くとも「合格発表の前日までに取下」の手続を完了させなければなりません。
 「特別支援教育」であることを考えると、やむを得ないところではあるのですが、この仕組み自体が「早く決めないと特別支援学校に行けなくなる」という圧力として、当事者やその保護者にかかっている部分があるのかも知れません。

 最近は「特別支援学校」等を希望する生徒が増えて全てを受け入れることが難しくなっている、自力で通学できる生徒は「分教室」などに誘導したい、ということであれば、もう一歩踏み込んで「インクルーシブ教育実践推進校」なども含めた制度の見直しも必要なのかも知れません。
 神奈川県に限った話ではなく、ここでいう「(高等)特別支援学校等・分教室」と「インクルーシブ高やその他の高等学校における支援」の制度間に「壁」がある仕組にも課題があるのではないかと思います。前者は「特別支援教育」の所管部署、後者は「高等学校教育(後期中等教育)」の所管部署という「縦割り」が、まだ残っているように感じます。
 この「壁」を取り除いてこそ、真の「インクルーシブ教育」が見えてくるのではないかと思っています。

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