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「ボウリング」というキーワード・その後

 以前記した「ボウリングというキーワード」のその後について、少し書いておこうと思います。

 中学2年生になる頃から、少し本格的に「ボウリング」を始めた息子ですが、高校入学と同時に、その高校のボウリング部に入り、何度か「全国大会」にも出場するまでになりました。
 この高校のボウリング部は、「ボウリング業界」では知らない人がいないと言っていいほどの存在です。野球に例えると「甲子園の常連校」みたいな感じです。

 しかし、息子の一学年下では入部者がいなかったので、部活動そのものが「存続の危機」に瀕していましたが、今年の新入生が数人、入部したことでどうにかなりそうです。
 ただし、全員が「全くの初心者」なので、まずは「基本」から順次教えているところ。
 それでも、夏休みに開催された県大会には、全員が「マイボール」で出場するまでにはなりました。ただし、基本的に「中古品」のボールの中で、程度がいいものを見繕って、OBでプロショップ勤務のドリラーでもある「コーチ」が、ドリルし直したもののようです。

■ ボールについての「うんちく」

 詳しくない方のために「解説」すると、ボウリングの「ボール」は、ボウリング場に置いてある「貸出用」の「ハウスボール」と、各自に合わせて作った(とは言っても普通は「市販品」に競技者に合わせた「指穴」をドリルするので「レディメイド」みたいなモノですが)「マイボール」に大別できます。

 「ハウスボール」は、誰でも投げられるように、5ポンドから15ポンド(たまに16ポンドというものを見かけますが、ルール上は4~16ポンドの範囲とされています)のものが用意され、多少のバリエーションはあるものの、平均的な手の大きさに応じて指を入れる「穴」が開けられています。
 基本的に、重いボールになるほど体格が大きい人が使う、という想定ですので、重くなるほど「穴」も大きくなる傾向があります。普通は「中指」と「薬指」を入れる小さめの穴と、「親指」を入れるための大きめの穴、計3つが開けられていますが、5~6ポンドを中心に、5本の指全部を入れられるように5つの穴が開けられたものもあります。

過去に「女性用」として通常の重さの「5本指用」ボールを見たことも。
ただし、かなり稀なケースだと思います。
「5本指」の11ポンドボールなど、滅多に見ることがありません。
(これは今はなき「スポーツ&スパリゾート ソプラティコ横浜関内」で撮影)

 また、多くの人に「平均的」に合わせるため、穴同士の間隔がやや短(狭)くなっているので、マイボールに較べると「つまむ」ような「握る」ような持ち方になってしまいますが、これはコントロール面ではマイナスになりがちです。理想は「掌に乗せて転がす」に近いので、指がギリギリに届いて入る程度に広いこと、なのです。

 そして、ハウスボールの表面素材は「ポリエステル」のことが多いです。摩擦係数の関係で、ポリエステルのボールはあまり、と言うかほとんど曲がらず真っ直ぐ転がります。マイボウラーでも「端」のピンを狙うなど「曲がっては困る」場面で使うボール(一般的に「スペアボール」とか「カバーボール」と呼びます)としてポリエステル製のボールを使うことはありますが、そのボールもドリル(指穴の大きさや間隔)は「オーダーメイド」なので「マイボール」の一種です。
 ハウスボールの中には「ウレタン」素材のものもあり、こちらは多少摩擦係数が大きくなるので、投げ方(やレーン上のオイルの状況)によっては、多少曲がります。

 しかし、多くのマイボウラーは、更に摩擦係数を大きくした素材のボールを主に使用します。この素材はウレタンをベースにしていますが、添加物を加えており、一般に「リアクティブウレタン」と呼ばれます。「リアクティブウレタン」の中にも分類があり、添加物の使い方によって「パーティクル」「パール」「ソリッド」などと呼ばれ、それぞれに特性(主に曲がり方)が違います。「パール」と「ソリッド」をブレンドした「ハイブリッド」と呼ばれるものもあったりします。
 更に、多くの「マイボール」には、中心部に比重の違う「コア」と呼ばれる部分があり(ハウスボールや「スペアボール」にも使われるようなポリエステルのボールなどには、そんなものは入っていません)、その形状によっても曲がり具合が変わってきます。

 これらによって、ハウスボールとマイボールでは、次のような「違い」が生まれます。

・ 指や手に合った穴かどうかによる安定性やコントロール
・ 表面素材やコアの有無の違いによる曲がり方
・ オイルの状況に合わせてボール選択ができるかどうか

……などなど。
 また、マイボールの場合、手や指に合わせてドリルすることで、持った時や投球時に余計な力が不要になることもあり、ハウスボールに較べると2ポンド前後重いボールでも「重い」とはあまり感じなくなります。
 速度が同じならば、運動エネルギーはその物体(ボール)の質量に比例して大きくなるので、重いボールのほうが威力は上がります。速度に関しては、運動エネルギーはその2乗に比例しますが、その分コントロールが悪くなるので「軽いボールを剛速球で」というのはお勧めしません。また、ボールが軽いと、つい振り回してしまいがちなので、軌道が安定しないという面もあります。

 そのため、マイボールの場合には、誰かから「これ、もう使わないからあげるよ」と言われて「お下がり」を貰っても、よほど手指の形がそっくりという「運命の出会い」でもなければ、そのままでは使えません。また、重さもその人に合っているかどうかわかりません。
 重さについて言えば、多くのマイボウラーは、男性なら14~15ポンド、女性なら12~14ポンド(女性でもプロボウラーなどは15ポンドが多い)を使っているのではないかと思います。販売されているボールも、これを受けて製造される傾向にあるので、最も流通するのは15ポンドだと言われます。ボールメーカーも、15ポンドでパフォーマンスが最適になるように設計すると言われています。
 重さはともかく、中古のボールを指に合わせるためには、既に開いている穴を一旦「埋め」て、改めてドリルし直す必要があります。この「埋め」る行為を「プラグ」と呼びます。

 息子の場合は、まだ「成長期」だった時期に始めたため、最初の12ポンドのマイボールから、13ポンド、14ポンドと1年程度の間隔で「増量」しましたが、指の穴もすぐに合わなくなってしまうので、2か月に一度くらいのペースでプラグとドリルを繰り返していました。
 本来は、このプラグやドリルには「料金」(概ね3千円から5千円程度)がかかるのですが、業界としてもジュニアボウラーの育成は課題ですので、結構「オマケ」してくれます。ちょっとした調整程度であれば「いいよ、これは」と言われることもありますし、頻繁に手直ししても、数回に1回程度しか請求されなかったりもします。

 新入生たちが貰った中古のボールも、誰かが新しいボールを購入した時に、不要になったボールを引き取って処分する、ということで発生した「在庫」なのでしょう。実際、結構な数が「処分」されていきます。
 自分のようなアマチュアボウラーだと、それこそ全く使えなくなるまで「使い潰し」ますが、プロボウラーなどの場合は、ある程度パフォーマンスが低下すると、試合では使い物にならなくなってしまうために手放すことも多いです。その程度なら「初心者」の「練習用」としては充分(というか充分過ぎ)です。
 そうでなくても、最初のうちはハイパフォーマンスな高価なボールではなく、廉価な「あまり曲がらない」ボールで充分です。曲がりやすいボールほど「値段が高くなるうえに劣化しやすい(寿命が短い)」という傾向があり、初心者がそんなボールを買っても「使いこなせる前に使い物にならなくなる」だけです。それに、最初はコントロールを身に着けたほうが良いので、あまり曲がらないボールのほうが向いていますし、寿命も長いです。上達してくると、そのボールを「スペアボール」代わりに使うこともできるかも知れません。

 でも、例外的ながら、そんなハイパフォーマンスなボールであっても、発売開始から時間が経つと「在庫処分」的に「セール品」「特価品」になることがあります。これなら初心者用と変わらない金額で買えることもあるので、元々ある程度のコントロールがある人なら、選択肢になり得ます。
 ただし、「売れ残り」ですので、一番多く製造される15ポンドしかない、とか、使う人の少ない12ポンド(以下)しかない、などと、ボールの重さはあまり選択肢がなかったりします。

 また、あえてコントロールを身に着けることを優先して、ポリエステルの「スペアボール」として使われることが多いボールを「最初のマイボール」にして、ある程度コントロールが身に着いたところで「特価品のハイパフォーマンスボール」を追加購入する、というやり方も考えられます。最初のポリエステルボールは、そのまま「スペアボール」として再利用できますので、無駄がありません。

 ……これ、ボウリングカテゴリのアカウントで書くべきだったかな……。

■ 目指す「選手」像?

 色々なスポーツ(スポーツに限ったことではないかも)において「尊敬する」「理想とする」「目指す」選手は?といった「質問項目」はよく見ます。
 ボウリングの場合は「師匠」的な選手を挙げる人が多いような気がするので、息子などから見れば、現在「ジュニア練習会」で指導してくれているコーチ(アマチュアですが全国的に、というか世界的にも有名な人たちです)とか、これまで関わったことのあるプロボウラーの人たちになったりするのでしょうか。

 息子の高校のボウリング部OB・OGには、かなりの数のプロボウラーがいます。業界では知られた「名門校」ならではです。
 神奈川県内では恐らく最多でしょうし、恐らく全国でも屈指と言っていい数です。しかも、現在もトップレベルで活躍している人(高校同様、この業界では知らない人がいないレベルのプロボウラー)がかなり多いです。

 ボウリングは、プロとアマチュアの「垣根」が元々低く、更に最近では「プロになっても全日本ナショナルチームの活動を継続できる」ようになったりしています。
 そのため、神奈川県連がジュニアボウラー育成のために実施する「強化練習会」(息子も高1から選抜されました)に、プロボウラーもコーチや講師として参加していたりしますし、それ以外にもプロボウラーと接する機会は多いです。
 あちこちのボウリング場で「ジュニア教室」などを担当しているプロボウラーも少なくないので、大会などに行くと「教え子」を激励に来るプロボウラーとよく会います。中には「(そのプロの)子供も出場してますんで……」というプロボウラーもいたりします。

 直接教わる機会がないプロボウラーでも「同じ高校のOB・OG」だったりすることも多いので、息子はあちこちで声を掛けられています。
 「競技スポーツ」としては、ボウリングの世界はかなり狭いのかも知れません。そのため、出身校に関係なく、特に(高校生以下の)ジュニアボウラーは、プロボウラーなどからも憶えてもらいやすい部分があると思います。
 そのようなトッププロとして、あるいは世界の舞台で活躍している人たちとの接点が持てるというのは、とても貴重なことだと思います。
 県大会や関東大会、そして全国大会で一緒に投げた中からも、これからプロや全日本で活躍する人が出てくるでしょうから、このような「つながり」は、大切にしてほしいと思います。

 一方で「競技スポーツ」の一つであることもあり、いい意味での「上下関係」も存在します。
 部活における「先輩・後輩」の関係もありますし、ジュニアクラブでも多学年が一緒に活動しますから、中高生が小学生の面倒を見ることなども、よくあることです。
 これは、放課後児童クラブ(学童保育所)や放課後等デイサービス、特別支援学級などでも感じたことと同じで、発達障害などのコミュニケーションに課題を抱えている児童・生徒にとっては、その能力を身に着けることにもつながると思います。

 その中から「誰それと一緒に××高校に入って『高校対抗(全日本高等学校対抗ボウリング選手権大会)』に出る!という「目標」を掲げるジュニアも出てきます。
 これは「女子」の事例ですが、息子の一学年上に、中学校以前から一緒に活動していた二人組がいて、同じ高校に入って「高校対抗3連覇」を目標にしたと聞いています。結果的に、2年生の時には惜しくも準優勝となったものの、1年と3年では全国制覇しています。更にそのうち一人は、今年プロボウラーになりました。
 既に述べたように、面識のあるプロボウラーもたくさんいるのですが、知っている人がプロになる、というのは初めてのケースです。今後は、こういうことも多くなってくるのかも知れません。

 同級生でもそのようなことがよくあるのですが、先輩・後輩の間でもしばしばあります。
 特に、同じジュニアクラブにいる1学年違いなどでは、先輩の後を追って同じ高校へ、という話をよく聞きます。

 息子の場合は、そういうことではありませんでした。
 現在も所属しているジュニアクラブには、中学2年からお世話になっているのですが、その中2・中3時代に高校生として所属していた先輩たちの通う高校、という選択肢は出てきませんでした。
 これまでにも触れてきたように、息子は中学校卒業まで、ずっと特別支援学級に在籍していたため、その時点で「普通の高校」に進学する、という発想自体が、あまり浮かんでこなかったことはあります。

■ 障害児と「ボウリング」

 しかし、障害があって特別支援学校なり特別支援学級なりに在籍している児童・生徒でも、ボウリングをすることについては(基本的なルールさえ理解できれば)健常児と変わりはありません。
 むしろ前述したような競技の特性から、色々な療育プログラムの中に「ボウリング」が使われることもあります。
 息子が就学前に参加した、地域療育センターのプログラムにも、横浜市障害者スポーツ文化センター「横浜ラポール」に行って、ボウリングをする、というものがありましたし、現在利用している放課後等デイサービス事業所でも、土曜日プログラムとして「ボウリング大会」が何度か開催されています。

 余談ですが、放課後等デイサービスの「ボウリング大会」になると、息子のように「ガチ」でボウリングをしている生徒は他にいませんので、レベル的には「ぶっちぎり」になりますが、特に順位付けや表彰などはありませんし、あくまでも「見本」や「お手本」的に扱ってもらっています。
 息子は「左投げ」なので、見本としては微妙な部分もあるのですが、実は「特別支援学級や放課後等デイサービスを利用するような発達障害のある児童生徒には、左利きが多い」ような気がしていて、この仮説に基づいた「研究」的なことをしてみたりしています。

 一般的に「左利き」の割合は、人種や民族、時代に関わらず概ね「10~11%」(そして女性に対してやや男性のほうが多い)と言われていますが、自分が見る限り、そのような特別支援学級・放課後等デイサービスにいる発達障害のある児童生徒の場合「3割程度、もしかすると半数近いかも」と思うことがあるのです。
 発達障害は、脳の機能が「そうではない人」と違うことによって起こると言われており、そもそも「左利き」も「右利き」とは「脳の使い方が違う」(右半身は左脳が、左半身は右脳が掌っているとされている)のですから、何らかの関連性があっても不思議はありません。

 また、放デイ事業所の先生たちも、特にボウリングに詳しい訳ではないこともあり、ゲーム開始前に「基本的なルール」と「ちょっとしたコツ」の説明を頼まれたりしています。
 ここで伝えるポイントをいくつか挙げておきましょう。

・ 一人ずつ順番どおりに投げる
 (これが療育に適している最大のポイント)
・ 隣のレーンの人が投げようとしていたら終わるまで待つ
・ レーンの手前の「黒い線(ファールライン)」を越えない
・ 大きな音がしないように転がす
・ ボウリング用の靴(借ります)を履いて投げる
・ トイレなどで離れる時は自分の靴に履き替える
・ 他の人がストライクやスペアを取ったら拍手する
・ ボールは一人1個
・ 他の人が借りたボールと間違えないよう「番号」の最後3桁くらいを憶えておくと良い

などでしょうか。
 これらは、ボウリングをしている人なら知っていて当たり前のルールと「マナー」ですが、一般の人だと知られていないことも少なくありません。

 でも、発達障害の特性の一つである「こだわり」に上手く作用すると、彼らは一般の人よりも、これらのルールやマナーをきちんと遵守するのです。

 そして「ちょっとしたコツ」ですが、

・ 親指の太さ(きつすぎず緩すぎず)に合わせてボールを選ぶ
・ ボールの重さは「ちょっと重い」くらいがちょうどいい

から始まりますが、あくまでも「目安」として考えていただく前提で「ボールの重さは『体重の10分の1』が標準」と言われていることを紹介しておきます。

 ただし、ボールの重さは「ポンド」で表示されているので、すぐにはピンとこないと思います。
 簡単に出すには「体重(kg)を『4.5(または4.53)』で割る」なのですが、逆数にして「0.22(9分の2)」を掛けてもいいでしょう。ただし、例えば体重70kgクラスになると15ポンドになってしまいますが、これはボウリング場に置いてあるハウスボールでは最も重いものになってしまい、指の穴も「誰が使うんだこれ?」くらい大きくなっていたりするので、もう少し軽いものでもいいでしょう。

 実際のところ「マイボール」では、15ポンドが「最もポピュラーな重さ」なのですが、各自の手の大きさに合わせて指の穴を開けているので、少々重くても投げることができるのです。
 また、ルール上の「上限」が16ポンド(下限は4ポンド)と定められていますので、それよりも重いボールは存在しません(そりゃ作ろうと思えば作れるでしょうけど)。

 投げ方としては、

・ まずは「真ん中まっすぐ」を基本に
・ ただし「腕」は体の中心ではないので右肩(左利きの場合は左肩)がレーンの真ん中に来るように
・ 腕はレーンの「板目」に沿ってまっすぐ振る
・ 力で投げるのではなくボールの重さを利用して転がす
 (エネルギー保存の法則=バックスイングの高さ(位置エネルギー)を前方への運動エネルギーに)
・ ボールを動かさず「助走」で身体が前に行くことによってボールが後ろに残るようなスイング
・ 狙うのはピンそのものではなくレーンに描かれた▲
(7つあるうちの真ん中)
・ これでボールが左右に曲がるならそれに合わせて立つ位置をずらす
・ 慣れてきたらレーンの右端(左投げは左端)から、右(左投げは左)から2番目の▲を狙って投げてみる
・ あとは立つ位置と狙う▲の組合せを自分に合わせる

みたいな感じです。
 なお、何度か出て来た「▲」ですが、一般的には「スパット」と呼ばれます。レーンの長さは60フィート(約18メートル)ありますが、この「スパット」は手前側のファールラインから15フィート(約4.5メートル)付近にあるため、ピンまでの距離の4分の1しかなく、遠くのピンを直接狙うよりも、このスパットを目標にして投げるとコントロールしやすいと言われます。

■ 「大会」について

 「余談」はこのくらいにしておきましょう。
 あ、でもまだしばらく「余談」っぽい話が続くかも知れません(笑)。

 現在のところ「ボウリング」は、オリンピックやパラリンピックの競技種目ではありません。
 かつて何度か「候補」には挙がっているのですが、これまで正式種目として採用されたことはないと思います。

 ですが「国民スポーツ大会(国スポ)」(従前は「国民体育大会(国体)」と呼んでいましたが、最近変更になりました)では正式種目の一つですし、毎年「国スポ」と同じ会場で引き続いて開催される「全国障害者スポーツ大会(障スポ)」でも正式種目になっています。
 しかし「障スポ」が元々、身体障害者と知的障害者の全国大会を統合して2001年から始まった経緯も関係してなのか、ボウリングは「知的障害」の部門しかありません。

 「国スポ」については、各都道府県での予選などにより出場者が決まりますが、「障スポ」については都道府県だけではなく、各指定都市も選手団を派遣します。
 そのため神奈川県の場合、「国スポ」は県として1つの選手団になりますが、「障スポ」では神奈川県・横浜市・川崎市・相模原市の4つの選手団ができることになり、予選もそれぞれで行われます。

 「国スポ」の神奈川県予選は、毎年4月に3週にわたって(通常3週連続の土曜日にそれぞれ別会場で)行われますが、かなり「枠」が限られ、18歳以下の「少年の部」では男女各2名。さすがに息子もこれは厳しく「参加することに意義がある」「(かなりハードなスポーツコンディションで行われるので)ダメ元の『力試し』」ということで、高校2・3年の2回、参加はしました。
 2年生の時は、全く歯が立ちませんでしたが、3年生の時は「さすがに選抜まではいかないもののそこそこのスコア(専門用語で言うと『4の字』は回避できるレベル=3ゲーム当たりで500ピン未満にはならない)」を記録し、成長を感じました。

 一方で「障スポ」については、横浜市で「予選」をすることになります。
 横浜市では、ボウリング以外の競技も含めて「ハマピック」という通称で呼ばれる「横浜市障害者スポーツ大会」が、この「予選」を兼ねています。
 前述のように「障スポ」でのボウリング競技は「知的」しか部門がないのですが、「ハマピック」では「身体(内部に限る)」と「精神」も「オープン」(ハマピックにとどまり障スポへの出場はできない)での参加ができます。
 息子は「身体(内部)」の手帳も持っていますが、療育手帳(愛の手帳)の交付も受けているので、「知的」での出場も可能ですから「障スポ」への出場も夢ではありません。

 ただし、来年夏に「再判定」があるため、それ以降も「療育手帳」が継続する保証はありません。
 ですが、「障スポ」や「ハマピック」の参加資格には「……準ずる者」という表現があり、「児童相談所・知的障害者構成相談所長の判定書、医師の診断書、在籍(在学・通所・入所)または卒業(退所)先の所属長による証明書のいずれかがある」……となっています。これを読む限りでは例えば「特別支援学校等に在籍していた証明」などでも可能と読めるので、特別支援学級に在籍していた証明ならどうなのか、とも思いますし、過去に「療育手帳」を交付されていたという事実もあるので、非該当になっても可能性はあるかも知れません。

 この「ハマピック」では、「障スポ」に合わせて年齢別に部門分けされています。
 そのうち「知的」部門では、その年度の4月1日現在で、19歳以下の「少年」、20~35歳の「青年」、36歳以上の「壮年」に分かれます。ちなみに「身体」部門では39歳以下と40歳以上の2区分で、それぞれ「1部」「2部」と呼ばれます。「精神」部門には年齢による区分はありません。
 「国スポ」のボウリング競技(他競技の詳細は未調査)では、これが「高3相当」までの「少年」と、それ以上の「成年」に分かれ、微妙に違っています。なお「成年」は「青年」と紛らわしいため、通常「なるねん」(アクセントを間違えると関西弁みたいになるけど……)と呼ぶことが多いです。

 息子は、この「ハマピック」に中学3年から出場していました。
 「障スポ」の選手としての選抜は「少年」「青年」「壮年」の区分で分けるのではなく、例年「全体の成績比較」を基にして5人前後が選ばれているようですが、年齢区分のバランスとか、これまでの出場歴の有無も勘案することになっているようです。
 「少年の部」の参加者は、年によってばらつきがあるものの、概ね6~10人程度であることが多いです。このうち上位3人が「表彰」の対象になりますが、ここから「障スポ」の出場となると1~2人のことが多いです(ゼロの年もありました)。

 この「ハマピック」の出場選手の「常連」の中に、息子の3学年上で、ある特別支援学校高等部を卒業した「先輩」がいます。

 この先輩を知ったのは、現在は閉店してしまった近所のボウリング場で開催されていた競技会でした。
 そちらも「父子」で参加していたことや、自分とその「お父さん」が元々そのボウリング場で「顔見知り」だったこともあり、初めての「ハマピック」の会場で会った時には「この人も『障害』があるのか」と驚きました。多少「口数が少ないかな」とは感じたものの(自分の口数が多すぎるだけ説あり)、会話などには全く違和感がなく、外見では全くわからなかったのです。

 彼は、現代ではすっかり「メジャーな投げ方」になった感のある「両手投げ」で、パワーと回転のあるボールでストライクを連発するタイプです。そのため、息子が参加した中3から高2までの「ハマピック」では、3大会連続「少年の部」優勝でした。「障スポ」にも出場しています。
 息子は徐々にスコアを上げ、高2の「ハマピック」では、その彼と「3位以下をぶっちぎりで引き離す優勝争い」をしましたが、惜しくも2位。
 しかし、この年が彼の「最後の『少年の部』出場」でした。翌年、つまり今年から彼は「青年の部」に移るのです。

 これで「今年は優勝ほぼ確実」だと思ったのですが、何とその「ハマピック」の日程が、高校の部活での「関東大会県予選会」と重なってしまいました。
 この時点で、息子は高校での「唯一のボウリング部員」(なので自動的に「部長」になりました)で、チーム戦がメインの「関東大会」には、他校の選手との「メイクチーム」での出場しかないのですが、一応「個人戦」もあります。
 それ以上に重要なのが、この「関東大会県予選会」は、夏に開催される「JOCジュニアオリンピックカップ・全国高校ボウリング選手権大会(全高)」の一次予選も兼ねている、ということでした。この「全高」は、他のスポーツにおける「インターハイ」に位置付けられる大会です。
 結果的に「ハマピック」は、あと2回「少年の部」での出場ができるけど、「高校生」としての大会は今年が最後、ということから、申し込んでいた「ハマピック」をキャンセルしました。

 結果として、息子は「関東大会」も「全高」も出場することになり、更には当初予定していなかった(考えてもいなかった)「全日本新人ボウリング選手権大会」の県予選会も(何だかわからないけれど「繰り上げ」で)通過して出場することになりました。
 高2の時には、前述した「全日本高等学校対抗ボウリング選手権(高校対抗)」に1学年上の先輩と出場し、「春高ボウリング」と呼ばれる「全日本高等学校ボウリング選手権」(似た名前が多くてややこしいけど、これだけが「高体連」系)にも「個人戦」枠で出場しています。
 「競技」としてやる人口は多くないものの、「誰もが知っているスポーツ」でいくつもの「全国大会」に出場するという「経験」は、息子にとって高校生活における貴重な体験になったと思っています。

■ 「バリアフリー」というより「ボーダレス」

 本来、ボウリングというスポーツは、それほど複雑なルールではありません。強いて言えば「点数計算がちょっと複雑」なくらいですが、現代では基本的に、機械がスコアを計算してくれます。
 「障害」という観点で見た場合、身体障害の中でも「肢体」と「視覚」については配慮が必要ですが(それに対応するための装置や装備もあります)、それ以外の身体障害(聴覚や内部など)や、知的障害・精神障害については、特別な配慮がなくても成立します。
 障害者も健常者も、同じレーンでできるスポーツなのです。

 ですが、息子の部活動で参加した大会に、特別支援学校の生徒が参加しているのを見ることはありませんでした。

 競技は異なりますが、今年の「夏の甲子園野球」(全国高校野球選手権)の予選の一つである「西東京大会」に、世田谷区にある「都立青鳥特別支援学校」が全国で初めて「特別支援学校の単独チーム」として出場した、というニュースがありました。
 今や「普通の高校」ですら、単独ではチームが作れずに、他校との「合同チーム」で出場することがよくあります。実は息子の高校の野球部も「7校合同」で出場して、それでニュースになったりもしていました。野球のポジションは9つしかありません(高校野球までは「指名打者」もありません)ので、7校合同となると、もはや「オールスターゲーム」です。
 ポジションの調整も大変かも知れません。左投げなのに「サード守れ」とか、バンドに例えれば「ギターかぶったからベースやって」とか「ボーカル何人も要らんからドラムやれ」とかいう無茶振りみたいなものです。

 都立青鳥特別支援学校の場合も、前年は他校との合同チームでの出場でしたが、やはり出場機会が少ないことから、単独での出場を目指して部員集めをしたそうです。
 また、合同チームとはいえ出場を果たしたことを知って、「野球がやりたかったが他の学校では断られた」という障害のある生徒が「ここならやれる」と入学した例もあるそうですから、相乗効果があったのでしょう。

 「ハマピック」にも3年連続で参加してみて(今年は見ていませんが)、徐々に参加者も「代替わり」しています。
 「少年の部」の参加者の中にも、どこかで見たことのある「ジュニアクラブ」のユニフォームで参加する子がちらほら現れ始めました。
 その子たちが「高校生」になる時、特別支援学校に進むのか、それとも息子のように普通科の高等学校に進むのかはわかりませんが、少なくともジュニアクラブでは「インクルーシブな活動」をしている筈です。部活動も「インクルーシブ」でできない筈はないと思います。

 神奈川県立の高等学校には、既述したとおり「インクルーシブ教育実践推進校」があります。そしてその中には、息子が出場している大会でよく見る高校もあります。
 「特別支援学校」の項でも触れましたが、県立横浜南陵高校は、元々「横浜市立日野中央高等特別支援学校」と隣接していて多少の交流があり、またかつて「健康福祉コース」が設置されていた経緯もあります。そして今年から「インクルーシブ教育実践推進校」としての指定も受けましたが、この高校にも「ボウリング部」があり、部員の数も多いです。県内最多かも知れません。

 また、息子のように障害があっても、神奈川県の場合には「クリエイティブスクール」という選択肢もあります。
 女子になりますが、クリエイティブスクールの一つである県立大和東高校は、今年の「全高」で優勝を果たした選手がいたりします。大和東の場合は、正式な「ボウリング部」ではなく、個人で活動している選手が「高校の看板」を掲げて参加するパターンのようですが、そのような形での参加であれば、どこの高校でも(部活動として立ち上げなくても、つまり顧問の教職員がいなくても、学校の承諾さえあれば)可能です。

 更に、最近では「通信制高校」の選手も増えました。「通信制高校」と言っても、従来のような形式ではなく、いわゆる「サポート校」的なキャンパスに自分のペースで通いながら、通信制家庭の高校卒業を目指すスタイルの学校です。
 以前はあまりイメージが沸きませんでしたが、実際にそのような高校に所属する選手も現れ始めたことや、息子の高校でも途中で「通信制」に転学する生徒が少なくないことなどから、色々と情報が入るようになりました。

 ですが、未だに「特別支援学校」の生徒が参加しているのを見たことがありません。
 大会の要項などを見ても、特別支援学校を排除するような条項は見当たりません。JB(公益社団法人JapanBowling)には特段の規定はなさそうです。
 全国高体連の定款などを見ると「高等学校」と明記されて「……等」とはなっていませんが、全国高体連の「会員」は、各都道府県の高体連ですし、そもそも「全国」レベルだと「ボウリング競技」は「管轄外」とされています。「春高ボウリング」は、全国高体連というよりも「ボウリング専門部」のある都道府県高体連の「専門部連合体」で主催しているらしいです。そして神奈川県高体連では、規約上の明記はないものの、実際に加盟している「特別支援学校(高等部)」が存在します(加盟状況の表に数字が入っている)。

 それなのに、今のところ息子が参加した「部活動での大会」と「ハマピック」の双方で見た選手はいないのです。
 前述した3学年上の先輩も、そのような大会に出ていた形跡がありません。
 もしかすると息子は、この「両方」に足を突っ込んだ最初の存在なのかも知れません。
 このあたりは、もっと「ボーダレス」になってもいいのに、と思います。

■ 立場が変わる?

 実は、息子が現在お世話になっているジュニアクラブに、現在中学3年で、かなり上手な男の子がいます。

 今年、高校に進んだ後輩たちは、全員、息子とは違う高校に進んだのですが、この中3の彼は、息子と同じ高校に進みたい、と考えているそうです。
 学習能力的に、もっと「上位」の高校でも行けそうなんじゃないかな、と思ったのですが、聞くところによると「起立性調節障害」が現れたことで、中学校にもなかなか行けない日があるのだそうです。
 たまたま、息子の高校にかなり近い所に住んでいるのと、「クリエイティブスクール」であることから「内申点」が関係ないということもあり、進学先の候補になったんだそうです。

 そして「ボウリング部」もある。

 ですが、彼(とそのご両親)は、息子がまだ「高校2年生」だと勘違いしていて、「1年は一緒にできるから、高校対抗などにも出られそう」と思っていたようです。

 前述した「××君と一緒に大会に出たいから」と、同じ高校を志望する……というパターンな訳ですが、残念ながら、来春には卒業してしまうため、それは叶いません。

 でも、そんな「一緒に部活をやりたい」と「後輩」から思われるような存在に、息子がなっていたことには驚きました。

 一緒に部活動をすることは叶いませんが、一時は「存続の危機」に瀕していたボウリング部も、今の1年生が何人か入ったことで、どうにか続けられそうです。
 全員が「初心者」ではあるものの、何人かは「スジ」も良さそうなので、1年やっていれば、彼と組んで「全国大会」を目指すことはできるんじゃないか、と思っています。
 同じジュニアクラブには中学2年にも、両手投げで、現在「絶賛成長中」な男の子がいて、彼も「同じ高校に行こうかな」と言っているらしいので、この二人が揃えば、かなりの「強豪」になる可能性もありそうです。

 息子の学年とその前後は、部員も少なくて、息子の他には一学年上の先輩が一人だけでしたが、それでもどうにか部活動が継続できています。
 伝統あるボウリング部の「存続」の一端を、息子はしっかりと担うことができたんだな、と思っています。

■ まとめ?

 思いがけず「長文」になってしまいました。

 それだけ「奥の深い」話題なのだと思います。
 実際、ボウリング自体が「(多くの人が)思っている以上に奥が深いスポーツ」ですし(ボウリングでなくてもスポーツとはそういうものなのでしょう)、桑田佳祐さんもそう歌っています。

 「♪見ただけじゃわからない魅力にハマると奥が深いのさ……♪」と。
 (Let's Go Bowling/桑田佳祐&Pin Boysより)

 前述のように「ちょっとしたコツ」を挙げましたが、これなどまさに「氷山の一角」(という表現で合っているのか?)で、語り始めたらそれだけで1冊の本になりそうです。
 いや実際、数は少なく「絶滅危惧種」ではありますが、ボウリングに関する「攻略本」(?と呼ぶのか?)もあるので、強ち「誇大表現」ではないでしょう。

 そんなテクニカルな部分は置いておくにしても、場所(ボウリング場)さえあれば、老若男女問わず、障害の有無も問わず、誰でもできるスポーツです。
 そして、肢体や視覚など、一部配慮が必要な障害もありますが、それに対応できる設備や機器もある程度存在しますし、補助スロープのように「幼児対応」と共用できるものもあります。
 聴覚や内部、知的、精神など、多くの障害に対しては、通常の設備で(必要に応じてルール説明やプログラム上の工夫などで)充分対応が可能です。

 もっとボウリングを通じて、障害の有無に関係のないコミュニティが形成できないものだろうか、と思います。
 そのためには、もっと「ボウリング競技」が「競技スポーツ」として認知される必要があるのかな、と考えるのですが、ボウリング場も減る一方の現状では、難しいのかも知れません。
 オリンピック競技にでもなれば、もう少し「注目度」も上がるかも知れないのですが……。


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