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放課後等デイサービス

■ 「居場所探し」再び

 小学校卒業に伴って、息子は「スイミング」と「空手」をやめてしまい、放課後児童クラブも「卒所」になってしまったため、中学進学後の「放課後」の過ごし方が「課題」になりました。
 中学生なので、放っておいても大丈夫……とはいかないのが「発達障害」のある子供です。

 娘は「吹奏楽部」に入りましたが、息子にできそうな部活動は、入学した公立中学校にはありませんでした。
 そもそも、いわゆる「文化系」の部活動は数少なく、運動部が大半なのが実情です。

 余談ですが「さかなクン」氏も「吹奏楽部」だった、という有名な話がありますが、彼は「水槽学部」と勘違いしたから、と語っています(本気だったらしい)。

 ともかく息子が「帰宅部」だと、家でダラダラするだけになってしまうのではないか、という懸念が出てきました。

 そこで生活の「リズム」を付けるための「メリハリ」と、今後の社会生活のための「コミュニケーション力」を身に着けるために、週2回くらい「放課後等デイサービス」を利用しようか、と考えました。

 小学校入学の頃には、この手のサービスはまだ始まったばかりで、近くには全くと言っていいほどありませんでした。しかし現在では、本当にあちこちにあります(ただし地域によっては競争も激しいようで、最近では撤退する事業所もあるようですので「事業所選び」は重要かと思います)。
 もしも6年前にこれが選べるような状況であれば、娘は学区の放課後児童クラブ、息子は「放課後等デイサービス」という選択もあっただろうな、とも思いますが、二人が別々の場所に通うとなると、それはそれで大変だったかも知れません。

 ところが、増えたら増えたで、一体どこがいいのやら、ということになってしまいました。

 区役所のこども家庭支援課にも相談して、ここは、と思う事業所を絞り込みました。
 基本的には、候補になった事業所に自分で連絡を取って「空きあり」を確認し、その後に「見学」などを経て通所日などの仮調整を行ってから、改めて区役所に「障害児通所給付費支給等申請書」などを提出し、受給者証の交付を受けて事業所と契約、という流れになります。

 いくつかの候補事業所がありましたが、その中からまず最初に連絡した事業所に決めることになりました。
 こども家庭支援課での相談時に、ある程度の「見当」を付けられていたことも大きかったと思います。

 事業所を決めるに当たっての「決め手」となったのが、その事業所が「利用者の増加で、最近になって小学生と中高生で『分割』した」という所でした。
 いわゆる「送迎」はないのですが、場所的にもそれは自力で何とかなりそうです。小学生ならともかく(しかも乗物大好きな)中学生ですし、そもそも小学校の頃から路線バスで学童保育に通っていたくらいです。
 放課後児童クラブでは、賑やかな環境が苦手だったことを考えると、中高生だけのほうが落ち着くだろう、というのが最大のメリットと考えました。週2回の利用の他に、土曜日に色々と設定されるプログラムも時々利用(本来は「単発利用」はできないのですが、そこは事業所と調整)することになります。

■ いろいろな「プログラム」

 その放課後等デイサービス事業所には、土曜日に時々設定される「パソコン講座」がありました。
 内容は「MS-WORDの基礎」などですが、ここで副次的に期待したのが、小学校の時あまり触れることのできなかった「ローマ字」の理解でした。
 基本的に「ローマ字入力」ですので、嫌でもローマ字の基本がわからなければ入力できません。 
 狙い通り、それはほぼ理解できるようになりました。細かいことを言えば、通常使われる「ヘボン式ローマ字」と、パソコンの「ローマ字入力」ではちょっと違うのですが、基本は頭に入ります。

 それまでは、「絵」などを描くときに、かなり怪しい「ローマ字?」が飛行機や電車、あるいはその「行先表示」などに書いてあったりしたのですが(さすがに「JAL」とか「ANA」、「JR」などは間違いませんが)、それ以降はかなり正確になりました(ヘボン式と訓令式の「区別」などはまだまだですが、「英語」の授業などでも役には立ちます)。

 「ローマ字入力」で思い出しましたが、筆者は基本的に「かな入力」です。大学まで「理系」でしたので、かなり珍しい存在だと思います。
 でも、普通にいわゆる「QWERTY」配列の欧文入力もできますから(中高生の頃には「タイプライター」も使っていました)、ローマ字入力もできます。
 ですが、両方できるなら「かな入力のほうが速い」です。母音以外は、ローマ字入力だと2つキーを打つところを、1つのキーで入力できるのだから当然です(濁音・半濁音は微妙ですが)。
 大学の研究室に「カナ表示」のないキーボードが繋がれた端末があったのですが、ブラインドで「かな打ち」できなくもないものの、それは何となくローマ字入力していました。
 ところが、かな入力のほうが慣れていると聞いた教授が「言ってくれれば『かな』の入ったキーボード出したのに……」と、キーボードを換えてくれた、というエピソードがあります。
 今でも「共用端末」を「かな入力」に切り替えて戻し忘れると同僚などに怒られるので、そういう場合はローマ字入力していますが、自分専用の端末は「かな入力」かつ「ATOKモード」(MS-IMEもちょっと苦手)です。

 そのうち月1回くらいの頻度で、土曜日プログラムの中に「鉄道イベント」が立ち上がりました。
 基本的に、電車の写真を撮ったり、電車に乗ってどこかに出かけたりする(海老名にある小田急の「ロマンスカーミュージアム」などに行った回もありました)のですが、それだけではなく、その企画を自分たちで考える、という月もあります。

■ コミュニケーションとリーダーシップ

 そんな中「企画」を考える際のグループワークなどで、高校生の先輩を差し置いて、リーダーシップを発揮し始めたようです。
 中2になると、同じ中学から同じ事業所に通う1年生の後輩ができて、送迎のない事業所なので、一緒に通所したりもしていました。その子からは、物凄く頼りにされていましたし、息子の「成長」に刺激を受けたようで、「憧れ」のような印象を持っているようだ、と指導員さんから聞いたこともあります。

 中3の後期になって、そのうち「3G」の停波で、それまでのキッズケータイが使えなくなるということもあって、スマートフォンに機種変更しました。
 息子は、中学卒業まで普段の登校時にはスマホを持って行くことはしませんでした(高校進学後は普通にスマホを持ち歩いています)が、ある日たまたま、こども医療センターから直接通所した時に、そのままスマホを持って放課後等デイサービスに行ったことがありました。それを見た指導員さんから連絡があったのです。

 放デイにスマホを持って行くこと自体は問題ないのですが、実は、同じ曜日の利用者に、息子に好意を持っている女の子がいるのだそうです。息子がそれに気付いているかはわからない(多分気付いていない)ようでしたが。
 その子が息子のスマホを見ると、IDの交換とかをして、発達障害の子にありがちな「頻繁にメッセージを送ったりする」とかいうことになるんじゃないか、と心配したようです。
 意外とモテるようでなので驚いたのですが、息子本人としてみれば、身近に「双子の姉」である娘やその友達がいるので、女の子をあまり意識しているようには見えません。

 高校進学で、利用する「曜日」が変わってしまったので、今どうなっているかは全くわかりませんが。

 また、ほとんどの利用者が進学する特別支援学校ではない「高校」に進んだことで、後輩たちにも「こういう道があるんだ」ということを示した部分もあったようです。
 実際に、同じ放デイ事業所の後輩が、同じ高校に入ったと聞きました。

 高校進学後は、週3回の「部活動」もするようになったので、「放課後等デイサービス」を継続するかどうかは迷いました。
 実際のところ、恐らくもう「放課後等デイサービス」を「利用しなければならない」ような状況ではない、とは思います。

 だんだんと利用者全体も多くなっていて、「後輩」の中には、やや「問題行動」のある生徒もいたりするようです。でも、そんな「後輩」とうまく付き合っていくスキルを身に着けることも、これからの社会生活には必要かも知れない、と思っています。
 昔は、自分にもそんな似たようなところがあったかも知れない、と気付いたり、成長の仕方が「人それぞれ」だということを理解する上でも、貴重な経験になるのではないかと考えます。

 何より、本人が気に入っており、安心できる「居場所」の一つであることは間違いないですし、もしかすると将来、こういった事業所などで仕事をすることになる可能性もあるかも知れません。
 障害があることを前提とした就労をする場合には、そのような「集団」の中で仕事をする可能性もある訳で、その中でどのように立ち振る舞うか、という経験にもつながるのではないかと思います。

 そう考えて、週1回には減らしましたが、現在でも継続して利用しています。

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