見出し画像

自作キーボード職人は現代の鍛冶屋

なんて素晴らしい自作キーボードの世界

初めまして、わたくし、自作キーボードにハマりすぎて、MonkeyPadという自作キーボードを設計から作り上げるという道に没頭する愛好家であります。これからキーボードを自作したい、自分でも設計したいと思う方や、エンジニアになりたい学生、なにかモノづくりの趣味を探している人に向けて、自分がハマっていった体験や自作キーボードやガジェットの魅力について私の経験を通して自作キーボードやガジェットの魅力を語りたいと思います。

出会ってしまった自作キーボードの世界

興味のない人にとって、キーボード?打てれば良くない?と趣味嗜好の世界とおもわれがちです。キーボードにこだわると周囲から、ちょっぴり変人扱いされることもあるでしょう。

かつてのわたしは、支給されたノートPCにくっついたキーボードをなんの疑問を持たずに使うエンジニアでした。若い頃にIBMのThinkpadを使いはじめたため、そのままLenovoのトラックポイント付きキーボードを愛用し、マウスやタッチパッドはほとんど使わない、あの赤ポチを偏愛するようになりました。

しかし、私は体が大きいのですが、肩をすぼめて一日中タイピングするため、ひどい肩こりと背中痛に悩まされていました。健康のため、効率を上げるため、テンションを高めるため、気づくと市販の高級キーボードを買い漁ってました。

HHKBやRealForceのキーボードを買っては試したり、やっぱりトラックポイントつきメカニカルがほしいと海外からTEXのキーボードを輸入したり、自宅用に職場用にと高級キーボードを複数台所有。「手いくつあるの?」と呆れられることもあります。

Windows、Mac、LinuxといろんなOSを使うため、OSごとに異なるキー配置とキートップの印字が違うことにイライラしていました。そこで、何も印字されていない無刻印のキーキャップに変えて自己満を味わう。すると、「そんな変なのよく使ってるね」「普通のキーボードと何が違うの?」「カタカタやかましいよ」と変人扱いされる始末。

新しいキーボードが出て、買っては試すを繰り返していた2020年頃のあるとき、同じくキーボードにこだわりを持つ友人から「自分のキーボードを自分で作る自作キーボードってのがあるらしいよ。俺が欲しいキーボードを作ってくれないか?」と、しつこく無理やり引き込まれたのが、自作キーボードの世界の入り口でした。

当時、日本でも先駆者的な人たちがアメリカや韓国など海外から情報を集め、同人誌を出し、自作キーボードのムーブメントが起こり始めていました。そんな世界に私は巻き込まれていったのです。

人はなぜ自作キーボードを沼と呼ぶのか

自作キーボードとは、完成品ではなく自分のキーボードのパーツを選んで組み立てることができるキーボードのことです。キースイッチ、キーキャップ、ケースなど、さまざまなパーツを自分の好みに合わせて選び抜き、オリジナルなキーボードを作り上げるのです。

ネジで簡単に組み立てられる自作キットもありますが、半完成品のキットを購入し、半田づけを自分で数時間かけて基板に部品を実装しながら組み立てる電子工作が必要なキットもあります。

さらに深みへと足を踏み入れる者たちは、レジンを型に流し込んで個性あふれる自分だけのキーキャップを作ったり、回路基板を設計して個人で海外の工場へ発注したり、3D CADで筐体(ケース)を設計し、3Dプリンタやレーザーカッターでオリジナルのケースを自作することもあります。金属キーケースを削り出す技術まで駆使するのです。そこには文系も理系もクリエイターも関係ありません。この世界には、市販のキーボードでは満足できない、自らの理想を現実にしたいという熱い思いを持つ猛者たちの巣窟です。

自作キーボードの世界は「エンドゲーム」「沼」と呼ばれます。一度、この世界の淵に触れてしまうとハマります。もともとモノづくりや電子工作に興味がある人なら、まさにどっぷりとハマることでしょう。

押し心地や音、見た目の可愛さ、市販品にはない機能――そこには、自分の好みやニーズに完璧に合ったキーボードを作り上げるという無限のカスタマイズの世界があります。世界に一つしかない自分だけの道具を作り上げ、それが趣味でも仕事でも最高の相棒になるという究極の体験を提供してくれるのです。

今のわたしはエンドゲーム(終着点)どころか、自作キーボードの世界はどんどん広がり、深みにハマっていくばかりで、キーボードの世界の端なんて、まったく見えなくなってしまいました。

キーボードは現代のブキである。自作キーボード作家は現代の鍛冶屋である。

プロのスポーツ選手が道具にこだわるように、プロの料理人が包丁を何本も使い分けて大切にするように、プロのミュージシャンが楽器を愛するように、プログラマやエンジニア、ライター、ゲーマーにとっても、キーボードやマウスは直接手で扱う大切な仕事道具です。

1日のうち半分以上をキーボードに触れて過ごすこともあるでしょう。いくつ持っていても、シーンによって使い分けることだってあっていいと思います。プロたちは効率を上げ、気持ちを高めるために、自分だけの究極の道具を作り上げることに情熱を注ぎ、変わり者と思われようとも試行錯誤を続けるのです。

プロのエンジニアにとって、キーボードやマウスは、まさに現代の戦場で戦うためのブキです。キーボードにこだわりを持ち、細部に至るまで設計する自作キーボード職人は私にとって現代の鍛冶屋にみえ、そんな彼らの世界に憧れ、その魅力に心を奪われました。

なんてかっこいい世界なのでしょう。私も自分のキーボードを作ってみようと決意してしまいました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?