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ちくわ入道雲

透き通ったブルーハワイを
覗き込んだ時のような
まっさらな青に浮かぶ雲をみて君は

「あの雲、ちくわみたいだな。」
と言った

また始まった

こいつはいつも突拍子のないことを
突然言いだすんだ

「なんで?あれ、入道雲だから
全然細くないんだけど。
どうみても、綿菓子なんだけど。」

君は僕を見て ふふ と笑って
また空を見上げる

もう何回目かもわからない
君の不思議なつぶやき




君が転校したことを知ったのは
夏休みが明けた始業式の朝だった

「なんで言ってくれなかったの?」

僕は心の中で そうつぶやいた

そして彼がなぜ何も言わずに
去ってしまったのかを
ずっと考えるようになった

だって 理由を聞こうにも
もう君はいないのだから


ふと思い返してみれば
僕は君に質問ばかりしていた気がする

奇天烈なことを言う君に僕は
なぜそんな事を言うのか と
聞いてばかりだった

君はいつも
答えを教えてはくれなかったけれど



一度でよかった
たった一度でよかったんだ

「君が今そう言ったのは
こういうことなんじゃない?」

僕がちゃんと考えてから 
君に質問していたら

君は答えてくれたかい?


夏が来るたび
入道雲を見るたび
君の事を思い出すようになったよ

あの日見た モックモクの入道雲
君があれを ちくわ と表現した理由を
僕はきっと
一生わからないのだけれど



ちゃんと 
ちゃんと 考えてみるよ





スタエフレター
「ちくわ入道雲 でお話を考えてください
笑いなしでお願いします
ラジオネーム 黄色信号症候群」


いや、どんな依頼だよ!
挑戦してくな!

レターありがとう。


スタエフで音声朗読しました

頂戴いたしましたサポートは全額有意義に使用させていただきます。主にカレーパンになるかと思われます。