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くたびれたおやじの倦怠期

看護師から毎日様子を聞かれる。
「お変わりはありませんか?」「倦怠感はありませんか?」
今まではあまり気にしていなかったが、治療終盤になって疲れを感じるようになってきた。
からだが長い治療に耐えてきたストレスは小さくなかったようだ。体の疲労と共に気分的にも倦怠感が現れてきたようだ。終わりが見えてきて、気持ちの抑制が弱っているのもあるだろう。

倦怠という熟語は、倦む(うむ)と怠ける(なまける)という字で構成されている。物事に飽きてほとほとイヤになる状態を意味する。よく見るとすごい字の組合せだな。

倦怠をフランス語で「アンニュイ」と呼ぶらしいが、すると急に印象が異なる。
最近はアンニュイなんて言葉は死語なのかと思っていたら、いまでもアンニュイな女優というカテゴリーがあることを知った。今年のランキングもある。

アンニュイな芸能人36選!女性・男性別ランキング【2021最新版】
https://rank1-media.com/I0000811

そのサイトよると、小松菜奈さん、水原希子さんらに交じって、桃井かおりさんと秋吉久美子さんが今でもランキングされているのに驚いた。私の世代にとっては、まさにこのお二人こそ、アンニュイというか「倦怠」「気だるさ」そのものだ。

そのさらに本家本元をさかのぼるとイタリアの女優モニカ・ヴィッティにたどり着く。M・アントニオーニ監督の映画(「情事」「太陽はひとりぼっち」他)が今も根強い人気なのは、モニカ・ヴィッティが主演しているからだと思う。少なくとも私はそうだ。
そのアントニオーニ監督作品によく出てくるのが「倦怠期」の夫婦。同じ倦怠でも夫婦に使われるとまた印象が変わる。かつての情熱を失い冷めてしまった夫婦のイメージ。この使い方の方が一般的かもしれない。

倦怠感、倦怠期、そしてアンニュイ。
同じ倦怠でも使われ方でずいぶんと印象が変わるものだ。
おや、アンニュイに見えるメイクのサイトもあるぞ。
今の時代でも物憂げで気だるそうな感じが人気なのがよくわかった。

日々倦怠感でぐったりしている私の場合は、ただのくたびれたオヤジでしかないけど。


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