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管(くだ)VS脳

放射線治療が進むにつれて、口の奥に炎症が出来てきた。
これが痛くて、食事が喉を通りにくい。
以前から味覚が麻痺していて、唾液の分泌も減少している。
おいしく食べる要素がことごとく奪われつつある。

「人間は管」という構造を考えるとこれは大いなる危機だ。
入り口を塞がれたようなものだ。
対策は2つある。喉を通りやすい料理に変えるか、喉を迂回させる方法だ。
迂回ルートは2つ。点滴により血管経由で入れるか、いきなり胃に料理を入れるかのどちらかだ。最後の手段はお腹に専用の穴を開ける必要がある。怖い、怖すぎる。
当然、料理を食べやすくする工夫を選ぶ。
オンライン会議で妻と打合せて、スペシャルメニューを作成し届けてもらうことにした。
といっても、全食作ってもらう訳にはいかないので、病院食を食べやすくする工夫も始めた。
試行錯誤を繰り返して、あまり喉を刺激せずに食べられるようになった。

ここで思った。なぜ喉が痛いのか?
放射線によって癌細胞を攻撃する時に、その周りの正常な組織も傷つけているからだ。警報として痛みが出ているのだ。しかし、私はそれを知っている。痛みで知らせてくれなくてもいいのに。

痛みの感覚は神経の仕業だ。
例によって、ネットで人体の神経系統図を調べる。
脳から出た無数の神経が全身に張り巡らされている。
あれ、何かに似てるなあ。クラゲだよ、これは。
巨大なクラゲが人間の消化器に絡みついているように、私には見える。

私という「管(くだ)的存在」は脳神経クラゲによって完全統制されているのではないか?
多くのSFが人に寄生する生命体を描いてきた。
もしかしたら、それは既に現実なのではないのか?
でもなあ、脳が寄生体だとしたら、脳はなんのためにこんな日記書かせているのだろう?

くだらないけど、想像するのは楽しい。脳がくれた娯楽なのかも。

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