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エッセイ

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2022年11月の記事一覧

鷗外とその家族④ 激情の妻・志けとの二十年

1. 若き日の短い結婚生活と、四十代での再婚 鷗外は生涯で二度の結婚を経験した。 一年たらずで終わった二十代の結婚の後、母の奔走の甲斐あって四十一歳で、二十近く年下の女性と再婚する。 一度目の相手は、幕末に榎本武揚らと共にオランダへ留学し、日本造船の父と呼ばれた海軍中将・赤松則良の長女、登志子だった。代々津和野の御典医の家系で、父親は千住で町医者を開業していた鷗外の一家からすれば、格差婚である。それほど鷗外は一代で出世し、周囲からも将来を嘱望されていた。しかし育った環境の

旅日記: 移りゆく微細な色彩と、ベネチア派絵画

たえず移りゆく光と影のゆらめきの中で、ベネチア派絵画は生れた。そんな風に記していたのは塩野七生だった。 2泊3日の滞在中、宝石箱のようなベネチアの街中を忙しく歩き回った。 船上から眺める大運河沿いの街並み あちこちに架かる大小の橋 無数に入り組んだ路地 どの通りや広場に行きあたっても、息を飲む美しさであるが、同時にわずか5平米ほどの小さな島の中には、多くの文化財がひしめいている。 朝早くからバポレット(水上バス)に乗り込み、ジャム入りクロワッサンをほおばりながら、ゆっ

旅から眺めるエコ③: フランス プラスチック削減年表

今回のイタリア・フランス旅日記では、機内のプラスチックの削減(エールフランス)やパッケージレスの店(イタリア)などに触れつつ、環境へのアクションが加速している様子を紹介しているが、個別の事例だけをあげてもあまり説得力がないようにも感じた。 そこで、今回は自分に一番馴染みのある国フランスを例に、2016年かのプラスチック削減政策を年表形式にまとめつつ、変化の様子を追っていきたい。 *** これ以前もレジ袋は有料だったので、無料配布の禁止でなく、レジで使い捨てプラ袋を渡すこ

旅から眺めるエコ②:詰め替え、量り売りの店

ベルガモの街は、丘のふもとにある駅を中心とした新市街・チッタ・バッサ(低い街の意、ベルガモ・バッサとも)と、世界遺産である丘の上の城壁都市チッタ・アルタ(高い街の意、またはベルガモ・アルタ)とに分かれている。ガイドブックに載り、主に観光客が訪れるのは主に旧市街チッタ・アルタの方であるが、夕方駅についた後、宿泊したホテルのあった新市街を散策してみると、かわいいカフェや、セレクトの本屋、ギャラリー、などこだわりのありそうな、個人の店が点在してなかなか楽しい。(ただし、地方都市なの