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公的年金の支給開始年齢は「65歳」から引き上げられる?

日本の公的年金の支給開始年齢は原則「65歳」ですが、
今後少子高齢化が進めば70歳、75歳、80歳(!)と引き上げられていくのでしょうか?そうなると私たちはどう対応すればよいのでしょうか?

まずは冷静に、この問題を紐解いていきましょう。
結論から言いますと、日本の公的年金は2004年の制度改正の結果、支払開始年齢を「引き上げる必要がない」制度設計になっています。
さらに必ず「65歳」に受け取らなければならない「固定的な制度」でもありません。かなり「自由度の高い制度」です。

まずはどのように「自由度の高い制度」なのか見ていきましょう。
公的年金の支給開始年齢は65歳に設定されていますが、実際の「受給開始時期」は65歳限定ではなく、「60~75歳」までの間で選択できるのです。

しかも、受給開始時期を65歳から繰り下げることにより、年金額は「増加」するのです!具体的には65歳受給開始の年金額を1とすると、70歳開始に繰り下げたら42%増の1.42になります(逆に60歳開始に繰り上げると24%減の0.76となります)。

「もらえるお金はできるだけ早く受け取りたい」「60歳で収入が大きく減るから繰り上げて60歳から受け取りたい」という方もいらっしゃるでしょう。

でもちょっと待って下さい。公的年金は「何歳まで生きるかわからない」老後に備えるための「長生きのための保険」です。何歳まで生きるかがわからないという事は、「老後にいくら準備すればよいのか」の正解はないとも言えます。そうであれば、生きている限りもらえる公的年金の額は繰り上げで減らすのではなく、少しでも繰り下げて増やしたほうが、長生きリスクへの不安は大きく軽減され、大変心強いのではないでしょうか。

次に「70歳まで繰り下げる」想定であれば、その年齢まで年金に頼らずどのように生活するのかをイメージする必要があります。

70歳まで働くとすればどのような仕事をしたいのか、そのためにはどのような準備をすれば良いのか。それとも65歳以降は働かない前提で、70歳までの5年分の生活資金を金融商品などで準備しておくのか。
それとも「年金の一部繰り下げ」+「資産の取り崩し」+「仕事の継続」を組み合わせて現実的な落としどころを見つけるのか。

いずれにしても50歳くらいから将来をイメージして準備を始めることをオススメします。すぐには答えが出せない方も多いと思いますが、普段から意識しているだけでアンテナの感度は向上し、いろんな情報が集まり、イメージトレーニングが出来ると思います。もちろん準備が60歳からでは遅すぎてダメだということは全くないのですが、定年などの期限は事前にわかっている事なので、悩みながらもアンテナは高くしておきたいものです。

何歳までどのように働くのか、いつから年金を受給するのか、人それぞれの自由選択です。でも日本人の平均余命は大きく伸びました。人生85才、90才、100才迄の時間はあまりにも長すぎます。さらに日本では、アーリーリタイヤメントよりも「働けるうちはいつまでも仕事をしたい」という人が多いという調査結果も出ています(※資料1:p5.)。お金の問題だけでなく、仕事をすることにより社会と繋がっていたいという前向きな姿勢を筆者は感じますが、いかがでしょう。

このように、老後資金のベースとなる「公的年金」を「どのように受け取るのか」を考えるということは、「将来の人生設計を考えること」に直接つながるのです。私たちはまず公的年金が自由度の高い制度であることを理解した上で、長くなった人生後半戦もより有意義に過ごせるよう、自分で考えて準備して実行することがますます重要になってきていると思います。


まとめ:
・公的年金の受給開始時期は60~75歳で選べる「自由度の高い制度」。70歳まで繰り下げると65歳より年金額は42%増加する。
・公的年金は「長生きのための保険」なので、繰り下げ受給のほうが長生きリスクの不安が軽減できる。

参考資料(※資料1):今後の年金制度改正について
(第10回社会保障審議会 年金部会 2019年9月27日資料1) https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000551466.pdf 


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