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30年後の公的年金をタイムマシンで見に行くと、どうなっているのか?

・トシ(30歳の社会人):博士、ちょっと相談があるんだけど、、。知り合いが「俺たちは将来年金なんかもらえない」とか言って、よくわからない投資商品やマンションを勧めてくるんだけど、そもそも本当のところはどうなのかな。
・博士:おお、ちょうどいいタイミングで来たな。実はたった今タイムマシンが完成したんじゃ。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」にあやかって「デロリアン」の中古車を買おうとしたがあまりにも高いんで、「いすゞ117クーペ」で改造したぞ。どうじゃ、「流星号」みたいでカッコいいだろう。
・トシ:、、、うん、よくわからないけど凄いことだけはわかったよ。じゃあ早速未来に連れて行ってよ。
・博士:よしよし、試運転も兼ねて大体30年後にセットして、、、出発!!

 ~時空旅行中~

・博士:さあ着いたぞ。今は、、2052年のようだな。
・トシ:なんか街全体が薄汚れているような、、。社会インフラが更新されていないのかな。技術革新とかでロボットが働いていたり、車が空を飛んだりしないの?
・博士:いや実は、低予算で作ったもので、我々は本当の未来に来ているわけではないんじゃ。このタイムマシンは現在から未来までのいろんな前提条件をインプットして、その結果をプロジェクションマッピングしているだけなんじゃな。将来の技術革新などは正確には予測できないんで、計算に考慮されていないのじゃよ。もう少し予算があればいろいろできるんじゃがなあ。
・トシ:どんな条件を入力したの?
・博士:2029年以降の経済は毎年▲0.5%のマイナス成長にして、女性や高齢者などの労働参加も進まない前提じゃ。こんな状況じゃ公的年金もかなり減っているようだな。
・トシ:えっ、じゃあ俺たちは年金もらえなくなるの?
・博士:もらえなくなるわけではない。所得代替率(※注) では37%前後でかなり減るがな。実際は50%を維持するために保険料の再検討などがあるんだろうけど、このタイムマシンではそこまで計算できないんじゃ。

  ※注)所得代替率:年金受取開始時(65歳)の年金額が、現役世代手取収入の何割かを示すもの。2019年度の所得代替率は61.7%。

・トシ:でもその前提条件はあんまりじゃないの?俺たちはこれからもっと働いて稼ぐつもりだし、子供が産まれても共働きを続けるよ。そもそも毎年ずっと▲0.5%のマイナス経済成長って、ありえないんじゃないの。俺たちはもっと上を目指すよ。
・博士:おお、頼もしい発言じゃのう。わしもまだまだ働いて社会貢献するつもりじゃがな。
・トシ:じゃあどうしてそんな前提を入れたの?
・博士:まずは最悪ケースを見てもらったほうがいいかと思ってな。隣家のジイサンに将来の日本について話したりすると「博士は楽観的すぎる!」といつも話が噛み合わんのでな。悲観論のほうがウケるのかな、世間一般的には。
・トシ:それはともかくもう少し前向きな前提条件での未来が見たいな。
・博士:よしよし、じゃあポジティブに行こうか!実質経済成長率を年0.9%に上げて、と。
・トシ:もっと成長させてもいいんじゃない?
・博士:2018年が0.8%だったからまずはこのくらいでいいじゃろう。さらに女性や高齢者の労働参加は今より進めて、それから厚生年金保険に入れなかった被用者をみんな加入させて、高齢者も長く働くから年金保険料を長く納めて、、。まあこのあたりは時代の流れで当然そうなると思うんじゃがな。よし、出発するぞ!

 ~時空旅行中 (実際は投影のための計算中、、)~

・博士:さあ、ついたぞ。どうじゃ、新しい未来は。
・トシ:おお、老若男女みんな若々しくて街が明るい雰囲気だぞ。やはり仕事して社会貢献するのは大事なんだなあ。これなら年金も大丈夫かな。
・博士:所得代替率はすでに2039年で63%だ。さっきの前提条件のうち年金制度を変えなかったとしたら2046年で52%だから、年金制度を変えるだけで11ポイントも改善されておる!
・トシ:厚生年金保険の適用拡大の結果、不当に安い人件費で成り立っていたブラックな企業が淘汰され、皆いきいきと働いているようだね。
・博士:将来の年金額は絶対に変えられない固定されたものではなく、経済環境などで変わるし、さらに自分たちの選択や努力によっても変えられるんじゃ。
・トシ:隣のオジイサンにも教えてあげないとね。
・博士:んー。タイムマシンに乗せてやってもいいんだが、この前提条件はあり得ないとかケチをつけた挙句、こんなタイムマシンは壊して一から抜本的に作り直すべきだ!なんて言いそうじゃなあ。ホントにもう困ったもんじゃ。
part.2へ続く...

※この話はフィクションですが、数値は2019年財政検証結果のオプション試算を参考にしています。

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