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【第二言語習得論】デュアルプロセス理論から学ぶ英語習得-②記憶の構築編-


こんにちは!
MONEY ENGLISHコーチのFumikiです!
 
今回は前回に引き続き、デュアルプロセス理論(二重過程理論)から学ぶ英語習得、大枠編に続く第二弾、記憶の構築編です!

前回記事をご覧になっていない方は、是非前記事からチェックしてみてください。

https://note.com/money_english/n/n13ea0d7247a1


前回の大枠編では,、デュアルプロセス理論の大事な2つの要素である、「システム1&2」について学び、理論に基づいた英語学習の流れを紹介しました。
 
ざっとおさらいしますと、
システム1は無意識下で記憶を使い、あなたの毎日の行動や思考をサポートします。
システム2はそのシステム1のサポートを利用しつつ、意識的に新たな問題や複雑な考えを解決する機能でした!

そして学習の流れ

理解(システム2)→練習→記憶の定着/慣れ(システム1)→内容のレベルアップ

ということでしたね。
 
そして今回の記憶の構築編では皆さんの1番の悩みである、
 
「単語の暗記にすごく時間がかかってしまう!」

「せっかく暗記したのにすぐ忘れてしまう!」

「なかなか学んだフレーズ等が定着しない!」
 
このような悩みに記憶の仕組みと理論を織り交ぜながら解説していきたいと思います。

本シリーズ全ての記事を読んで頂くと、
 
記憶を利用して英単語&フレーズを効率的に覚えて忘れなくなるあなただけの学習法」

を導き出せるようになります!ので是非最後まで読了頂けると嬉しいです。
 

 


記憶を担う3つの柱


まずは、記憶について掘り下げていきます。

そもそも記憶とは私たちの脳に入っている情報のことですが、何となく記憶は情報の保管庫のようなイメージが強いかと思います。

ただ!この記憶保持の機能以外にも実は他に2つの機能が存在しています。
 
記憶は以下の3つの役割から成り立っています。

情報を脳に取り込む(エンコーディング)

②情報を保持する(ストレージ)

③情報を取り出す(リトリーバル)

 
これら3つが機能し、記憶として私たちの生活に役立っています。
システム1&2を語る上でも記憶の役割は変わらないです。
(無意識で記憶を扱うか、意識的に扱っているかの違いです)
 
英語学習においては
暗記する・覚える・思い出す」

上記の要素で悩みが分けられます。
ではそれぞれの役割にどのような特徴があるかみていきましょう。

エンコーディング(情報を脳に取り込む)


エンコーディングは外から得た情報が脳へ取り込まれる過程を指します。

要は新しい情報を覚える作業です、学習の流れでいうシステム2が働いて情報を理解する場面です。

英語学習においては、新しい英単語やフレーズを暗記する段階です。

でも実は、この「覚える」段階で4つも違う方法があるんです。

みなさん、よくこんなこと聞いたことありませんか?

「私って結構見て覚えるタイプなんですよ」

「単語のイメージで覚える派なんで、ただ丸暗記で覚えるって難しいです」
等、

実は我々人間は様々な覚え方を確立しているのです。
 
4つの記憶の取り込まれ方、
みなさんが新たな情報を脳に取り込む際に使う方法は、
 
見て覚える: appleと言う単語を視覚的に覚える

聞いて覚える: appleの発音を聞いて音で覚える

意味/意味付けで覚える:appleの意味 / 例文を使い、意味づけをして覚える

感覚で覚える:  appleの食感や肌触り、イメージなどを覚える

 
これらの4つを我々の日々の生活で場面によって無意識的に使い分けていると言います。(2つ以上を同時に使う場合もよくありますよ)
 
そして結論から言うと、英単語などを覚える際は、
「自分が覚えやすいと感じる方法を使うことがお勧め」です!

それに加え、自分が必要な形をイメージした上で実施するとすごく効率的です。
 
例えば、

「単語は読んだら分かるんだけど、聴いたら聴き取れないことがある」

この場合、読むということはクリアできているので、次は音を聴いて単語を認識出来るように学習することが必要だと分かります。

発音を知らないと

“evidence”の発音を知らないと聞けない / 声に出せない ですよね。

 聞いて覚えるが苦手な方は

・時間をかけてゆっくり発音を確認し、自分でも発音してみる

意味を覚えるが苦手な方は

・意味を例文や派生語を使い理解してみる

を意識して覚えてあげてください。そうすることで、徐々に暗記スピードが上がっていきます。
 
初めて何かを覚える時はシステム2が働きますので、
このように発音・意味等をしっかり理解することが重要です。

ストレージ(情報を保持する)


次は取り入れた情報の保持、ストレージを掘り下げていきましょう。

学習の流れにおいては「練習→定着」の部分です。

定着(情報をキープする)を目指すには、どのような練習が必要なのでしょうか。
 
まず初めに、ストレージには

・短期的な記憶 
・長期的な記憶

を保管する役目があります。
 
もちろん、皆さんの英語学習の際には
暗記する情報は全て長期記憶に入れたい!と思いますがそうはいきません。

時間が経つとせっかく覚えた情報も抜けていきます。
何故かという理由を結論から言うと、

覚えた情報が短期的記憶から長期的記憶に移動していないからなのです。

つまり、記憶というのは・・

まず初めに短期記憶で形成され、繰り返しその情報に触れることによって次第に長期記憶として形成されていきます。
 
私たちの脳は絶えず情報を取り込んでいるので、
自分自身に関連が薄く、使わない情報は「いらない情報」と判断され、どんどん短期的記憶のストレージから抜けていきます。

逆に、自身に関連が強く、頻繁に使う情報は「大事な情報」と判断され、という長期的記憶のストレージで管理されます。

では、それぞれの特徴をみて英語学習と照らし合わせていきましょう。

短期記憶


短期記憶はストレージに滞在する時間がとても短いです。
実は、約7個ほどの情報しか入らないというかなりの狭さだったりします。

初めて取り込まれる情報は全て、この短期記憶にまず保持されます。

*「7個ずつしか情報を覚えられないのか?」という疑問には次回の記事:テクニック編での解説になりますので流してお読みください

例えば、人の名前を聞いていつの間にか忘れてしまうことありませんか?
まさに短期記憶から記憶した情報が抜けるパターンです。

名前を1度だけ聞いて会話を続けていたら、聞いたはずの名前がぬけ落ち、思い出せなくなります。
 
これがまさに短期記憶のイメージです。
 

長期記憶


短期的な記憶が私たちの取り込む情報を取捨選択している一方で
長期記憶は覚えた情報を長い間保持することが可能です。

保持できる情報の量も無限大にあると言われています。
 
長期記憶の形成に関わる、一番の特徴は

「意味付けで覚える」と長期記憶に残りやすくなります。
 
例えば、
人の名前を音だけで覚えるのではなく、
「先週〇〇公園であった〇〇さん」
と何か意味付けすると長期的記憶に残りやすくなったりします。

だから、CMや企業広告なんかでは皆さんの記憶に引っかかるような
キャッチフレーズや歌で企業名・商品名を宣伝するわけですね。

例えば、

お値段以上、〇〇〇(3文字)!♪♬

と言ったら、皆さんパッと企業名が思い浮かぶと思います。(笑)

短期記憶から長期記憶への移行は?


この移行に1番重要なことは定期的に繰り返して思い出すことです。

こうすることで、新しい情報を短期的記憶に留め、いずれ長期記憶への移動できるようになります。

英語学習において覚えにくい単語、文法、フレーズは
ぜひ例文を絡めて繰り返し練習してみてください。

この反復練習が脳に「この情報は重要なんだよ」と伝えるシグナルになり、記憶の定着に繋がります。

そして、意味づけをするという意味で奇抜で目立つような例文を作ってあげるというのもの印象が深くなり長期記憶に残りやすいです。
 
一方、暗記した単語やフレーズをすぐ忘れてしまう方はこの復習を行なっていない、もしくは復習するタイミングが遅いケースに当たると思われます。

暗記したものは
その日に復習、翌日に復習、2日後、5日後、1週間後に復習と
最初は集中的に復習して徐々に感覚を空けて学習すると忘れる割合はグッと減ります。
*復習の頻度は最後に紹介します。

リトリーバル(情報を取り出す)


 記憶の最後の柱はリトリーバル

保持している情報を取り出して思い出す役割です。

リトリーバル(情報の取り出し)において重要なポイントは
長期記憶から情報を取り出す時、脳は関連性を利用し、情報を取り出しているということです。

難しいので、例を踏まえて説明すると
 
“protractor”という単語。

脳はこの“protractor”を思い出すときに、直接「分度器!」と想起されるわけではなく、この単語は「文房具である」とか「半円の形である」等、関連のエリアを探し、最終的に分度器という意味にたどり着きます。

(皆さんも何かの事柄を思い出す時には、連想するものを思い出すことから始まったりしますよね)
 
先ほども説明しましたが、エンコーディング(情報の取り込み)の時点で意味付けをしていると、
長期記憶に入りやすくなるのも納得です。

“protractor”は分度器!と意味だけを覚えるのではなく、
「文房具の仲間で半円の定規」と意味付けをするだけで
それぞれの関連性を作り、長期記憶から意味を取り出しやすくなります。
 
しっかり基礎知識も復習もしているが
4技能で単語やフレーズが出てこない方は、
この関連性が薄くて思い出せないという可能性があります。
 
なので単語や文法、発音を学ぶ際、例文などを

「読む」「聞く」「書く」「話す」

の4技能を絡めて暗記し、関連性を深めることで長期記憶から情報を取り出しやすくなります。
 
学習の流れでいうと長期記憶から瞬時に英語を引き出し、使える。

この状態が「慣れ」・システム1であり、英語学習で目指すべき理想の状態です。

エビングハウスの忘却曲線


さて、ここで学習理論を語る上で皆さんも1度は見聞きしたことがあるだろう、エビングハウスの忘却曲線に軽く触れていきたいと思います。

心理学者ヘルマン・エビングハウス博士が

「記憶した情報がどれくらいの割合で忘れられていくか」

ということの数値をグラフで示した線です。

一度覚えた情報は復習せずに放っておくと
1時間後には約56%
1日後には74%
1ヶ月後には79%
 
忘れてしまうという恐ろしい数値です。
 
この数値から逆算するとどれくらいの頻度で復習を行えばいいのかが見えてきます。

復習は
その日に1度 翌日に1度、2日後、5日後、1週間後、2週間後 

と徐々に間隔をあけていくとベストですね。

*復習に時間がなかなか取れない方は最低でも2週間の間に3回復習すると効果ありです。

まとめ

さあ今回は記憶の3本柱「エンコーディング」「ストレージ」「リトリーバル」について学び、そこから皆さんの悩みに対する対抗策を考えてきました。

理解→練習→記憶の定着/慣れ→内容のレベルアップ→最初に戻る

の流れでいうと
 
理解=エンコーディング
練習→定着=ストレージ(長期記憶)
慣れ=リトリーバル

 
とうまく噛み合い、デュアルプロセス理論と学習の流れがリンクしていることがお分かりいただけたと思います。
 
新しい知識を取り入れる際は
発音・意味付けを意識し、関連性を広げ(余裕がある方は4技能とも絡めて)

忘却線に沿って復習の間隔を広げていくと、

長期記憶に情報が移動し,効率的な情報の暗記、定着ができます。
そして記憶した情報は自由にシステム1で使えるようになる。
 
以上を踏まえて、最初の記事から説明している効率的な学習の流れをおさらいします。

理解(システム2)→練習→記憶の定着/慣れ(システム1)→内容のレベルアップ→最初に戻る
 
でしたね。

関連性を広げた暗記&定期的な復習
についてご理解いただけたかなと思います。
 
次回は最終章、学習に使える6個のテクニック

デュアルプロセス理論から学ぶ英語習得-テクニック編です

是非、最後まで読了ください!

MONEY ENGLISH
Fumiki


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それでは、また次回の記事で皆さまに会えることを心より楽しみにしています。
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参照
【心理学】How memory works
https://bokcenter.harvard.edu/how-memory-works