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蒼井 夕海(あおいうみ)の涙 創作文・ショートストーリー

私はワガママで自分勝手な女だ。
嫉妬深くて
自己中で
虚栄心が強く
最低な女

だから
誰にも知られないように
良い人を演じている

でも、それも
そろそろ疲れちゃったな
私が若い頃は今みたいにインスタグラムやFacebookなんてなくて
固定電話や公衆電話の時代
文通なんていうものをしてる人もいた

私は待つことが苦手な女の子だった
寂しがりだったから
待つ時間が長いと寂しくて不安で誰かに寄りかかって安心したくなってしまう
そんな弱い娘だった

それが理由ですごく好きだった人に振られてしまった
泣いて泣いて
涙がなくなるんじゃないかとおもうほど泣いた

自分の弱さが原因なのに
「どうして私じゃだめなの?」

1年間泣き続けた

弱い自分から抜け出したくて

引っ越しをした
英会話教室に通った
目と鼻の整形をして
転職もした
ジムに通い体重を10キロ落とした
本を読んで地域の読書会に入った
料理教室に通いテーブルコーディネーターの資格をとった

私は変わりたかった
自信が持てるものが欲しかった
違う自分に生まれ変わりたかった
できることならもう一度生まれ変わって
違う人生をやり直したかった

だから
必死にがむしゃらに
自分磨きに精をだした

そして数年後
新しい出会いに恵まれ
新しいパートナーと歩み始めることができた
私を見初めてくれた人は
普通に家庭を守り真面目に働いてくれる優しい人だった
私は心から感謝したし
この数年間の努力が報われたのだと
自分で自分を褒めたりもした

ただ

どんなに努力して頑張っても
たったひとつ
変われないことがあった
それは

「忘れられなかった」こと

別れた人を振られたのに
忘れられなくて
心の奥から葬り去れなかった

私はそんな自分が嫌だったし許せなかった
だから
毎日毎日
忘れることばかり考え
今の生活を大事にしていた

それなのに

スマホのインスタグラムが流行り
ご多分に漏れず
私も始めた
美味しい料理や庭の花
旅行での景色なんかを載せて
ひっそりと楽しんでいた

ある日、偶然に

別れた人らしき写真を見つけてしまった
すると
その人の妻をはじめ家族と楽しそうに笑う様子が綴られていて
「どうして鍵アカにしないの?」と
半分呆れながらも
気になって
気になって気になってしまい
毎日チェックするようになってしまった

あ~
私はなんて
往生際が悪い人間なんだろう
悲しくて情けなくて苦しくて自分が嫌で仕方なかった

もちろん
決してしないけれど
ストーカーになる人の気持ちがわかる気がした

自己啓発に励み
自己開発を遂げたはずだった

人の心の奥はコントロールしきれない
深層部分があるのか?

私は
その人のインスタグラムを覗き見しなから
妻に嫉妬し
妻の笑顔や持ち物に嫉妬した

何故か不思議と彼には恨みも憎しみもなかった
なんていう自己中な私

ある時
私は気づいた

私は彼の妻のしあわせそうな姿には嫉妬しているけれど
彼には幸せでいて欲しいと願っていることに気づいた。

もちろん
今のパートナーにも感謝している
でも
それは恋愛ではなく
人生のパートナーとしての気持ち

私は
パートナーを裏切っているのだろうか?

決して誰にも言えない気持ち
墓場まで持っていくと覚悟している思い

あぁ~
紫式部なら
この私の心を詠んでくれただろうか?
それとも、呆れてそっぽを向かれてしまう?

報われなかったから
いつまでも忘れられないのか?
思いが深かっただけなのか?

人の心は
摩訶不思議
どんなに頑張っても
コントロールしきれない部分がある

でも
きっといつか

よい思い出になり
懐かしい人に変わり
笑って手を振る日がくるんじゃないかと信じている

だからこそ

自分に嘘をつかずに
自分を叱咤激励しながら
もう少し
生きてみようか?と
思っている

申し遅れました
私は
蒼井夕海(あおいうみ)と申します
もうすぐ34才
金融機関で働いています
パートナーと温かい家庭を築いています