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地球最後の女子高生【0:2:0】【女性同士/ラブストーリー】


『地球最後の女子高生』
作・monet

所要時間:約30分

■あらすじ■

自殺願望のある女子高生、れなとかなめは、ある日地球が終わると知り、手を繋いで深い深いダムに身を投げた。

れな/♀/自殺願望のある女子高生。一番綺麗な姿で死ぬのが夢。しっかり者でリアリスト。

かなめ/♀/自殺願望のある女子高生。人間の跡形もなく苦しんで死ぬのが夢。天然で夢見がち。ふわふわしている。


■本編開始■

かなめ:(N)地球最後の日。

れな:(N)私たちは

かなめ:(N)せっかくだから

れな:(N)心中した。

かなめ:(N)……はずだったんだけど、

れな:もう!どうなってるのよこれ!

かなめ:(N)どうやら、地球の方が先に死んでしまったらしい。

 (間)

かなめ:まあまあ、俗にいうラッキーだった、ってことなんじゃない?……自殺志願者以外なら。

れな:それ、私たちにとっては全然ラッキーじゃないよね。

かなめ:ダムの分厚い壁と、大量の水がウチらを守ってくれたんだよ。凄い強運だねぇ!れなちゃん!

れな:かなめちゃん。今この状況分かってる?

かなめ:うーん。あんまり分かってない!

れな:もう、かなめちゃんったら……。ほら、この荒れ果てた更地(さらち)を見て?これが地球。

かなめ:わあ!すごいねぇ!

れな:「すごいねぇ!」じゃあないのよ!皆死んじゃったの!死ぬつもりだった私たちは生き残っちゃったの!

かなめ:ふむぅ……。でもでもれなちゃん、このままここに居れば、そのうちウチらも死ねるんじゃない?食べ物だって無いわけだし。

れな:いーやーだー!!!このままここでカラッカラに干からびてのたうち回って餓死するなんて嫌だ!

かなめ:でもさー?れなちゃん?ダムの中だって苦しいし、もがき苦しんで死ぬ予定だったんだよ?ウチら。水死体なんてもうパンッパンだよ?

れな:うっ……。かなめちゃん、そんな物騒な話しないで……水死体とか……うううっ。気持ち悪い。

かなめ:ウチら水死体になる予定だったのに?

れな:水死体にはなったかもしれないけど、地球が滅びると同時に全部消えてなくなる予定でもあったでしょ?!

かなめ:それが生き残っちゃったわけだー。ははは。

 (少し間開ける)

れな:もう……これから一体どうするのよ……。

かなめ:まあとりあえず、生き残っちゃったついでに、ちゅーしよっか。

 (かなめからキスをする。)

れな:んっ……わーっ!もう!かなめちゃんったら!

かなめ:れなちゃんからもして?

 (れなからキスをする。)

れな:もう……こんなときに何やってるのよ……。

かなめ:こんなときだからこそ、でしょう?

れな:……はあ。

かなめ:れなちゃん、好き。本当に本当に、地球で生き残ったの、ウチらだけなのかな?ウチらだけだったらいいな。れなちゃんと、世界に二人きり。

れな:……かなめちゃん。私も、好き。かなめちゃんと二人きりになれて嬉しい。

かなめ:ふふふーん!えっちなことも、し放題だしね!

れな:もう!かなめちゃんったら!……あんまりからかうと、おしおきだからね?

かなめ:あ……もう、その顔……。めっちゃ、好き。……ねえ、今から……しよ?

れな:(N)こうして、死に損ねた私たちは愛し合う。

かなめ:(N)十七歳。高校二年生の冬。地球は滅びた。



 (※長めの間をとってください)



 ■過去回想■

 ■出逢い■


れな:(M)正直に言わせてもらうと、初対面の感想は、この子大丈夫かな?だった。

れな:(M)出逢いは保健室。

かなめ:あはは!そうなんだ!君はどこから来たの!?……うんうん。へぇー!そうなんだ!えっとねぇ、ウチはねぇ……えっとねぇ、忘れちゃった!えへへ!

れな:(M)彼女は、彼女自身のブレザーの上着を、両手で目の前に持って、まるでそれが人間であるかのように会話をしていた。

 (間)

れな:あの……ちょっとあなた、大丈夫!?

かなめ:あれぇ!?もしかして君は美しいフクシアの妖精さんかな!?ウチに会いに来てくれたの!?嬉しいなあ~!えっとねぇ、ウチの名前はー……、なんだっけ!忘れちゃった!えへへ!

れな:(M)目が座っていて、明らかに普通じゃない。ズタズタの左腕に、明らかに校則違反のド派手なピアス。右耳だけなのは何か意味があるのだろうか。それにしても、うちの学校の生徒よね……?

れな:(M)フクシアの妖精さん?フクシアって確か花の名前のことだったと思うのだけれど、もしかして、私のこと?……それじゃあ、私のことは認識してくれているのかしら?

かなめ:美しいフクシアの妖精さん!ウチに会いに来てくれてありがとう!初めましての握手を交わそうよ~っっおっととと……ふらふら~

れな:あっ!危ない!

 (れな、咄嗟に受け止める。)

かなめ:…………。(※すやすやと静かに寝ている)

れな:え、何!?ね、寝てるの!?おーい!大丈夫?……とりあえずベッドまで運ぶわよ!?

れな:(M)彼女の身体は想像以上に軽くて、彼女こそが真の妖精さんなのではないか、と私は思ってしまった。それこそ馬鹿馬鹿しいけれど。

れな:(M)彼女をベッドまで運び終えると、私は自分が保健室まで来た理由をようやく思い出す。

 (間)

れな:アイタタたたた!お腹痛い!死ぬ!

 (間)

れな:(M)そう、まだ名前も知らない彼女との出逢いが衝撃的過ぎて、自分の生理痛の痛みなんて忘れてしまっていたのだ。


 (※少し間をとってください)

 ■次の日■


れな:(M)私は昨日、保健室で出会った彼女のことがどうしても頭から離れずにいた。少し言動が子供っぽかったし、一年生かな。それともタメ?先輩は……無いと信じたい。

れな:(M)うーん。昨日のあれだけじゃあ全然わからないや。

れな:(M)ふと校門の前に目をやると、しゃがみこんでいる女の子が見えた。具合が悪くなってしまったのだろうか?

れな:(M)それでも他の生徒たちはスルーしていく。まるで何も見えていないかのように。先生だって、見える位置に立っているはずなのに気づかないふり。

れな:(M)人間ってやっぱり自分のことしか考えていない。悲しくなる。私がいくら人のことを考えたって、それは無駄でしかないのだ。

 (間)

れな:あの、大丈夫ですか?具合悪いんですか?

 (間)

れな:(M)女の子が顔を上げてこちらを見る。驚いた。昨日保健室で出会った彼女だったのだ。顔色は非常に悪く、目の焦点も合っていない。

かなめ:……ありがとう。声を掛けてくれて。

れな:とりあえず、保健室行こう?ね?

かなめ:……でも、もう予鈴鳴っちゃう。

れな:そんなことどうでもいいの!あなたの体調の方が重要でしょう!?

かなめ:でも……ウチはその、自業自得だから。

れな:いいから黙ってついて来る!!

かなめ:あ、ありがとう……その、ごめんね。

 ■保健室■

れな:(M)まず驚いたのは、彼女は昨日と違ってきちんと話の通じる女の子であったこと。そして次に驚いたのが、彼女は昨日のことをまったく覚えていない、ということだった。

れな:(M)つまり、彼女の中で私は初対面。『フクシアの妖精さん』の意味を聞きたかったのだけれど、どうやらそれは無理そうだ。

かなめ:あはは……そっか。助けてくれたんだね。ベッドまで運んでくれたんだ。大変だったでしょ。……本当にありがとう。ごめんね、覚えてなくて。

かなめ:君の名前はなんていうの?お礼がしたいな。

れな:私はれな。助けただなんて思わなくていいよ。あなたの名前は?

かなめ:ウチはかなめ。よろしくね。本当に昨日はごめん。ちょっとODし過ぎてラリっちゃってた。

れな:ODって、オーバードーズのこと?あの、薬をいっぱい飲むやつ?

かなめ:そうそう。ちょっとやり過ぎちゃって。幻覚作用もある薬だったからさ~。……あ、ごめん。引いたよね。ウチ、腕もこんなんだし、要はメンヘラっていうか保健室の主っていうか~?まあ保健医の先生にも見放されちゃってるわけなんだけど。

れな:……かなめちゃんはさ、死にたいの?

かなめ:うん。死にたいよ。

れな:(M)かなめの返事は即答だった。しかも、かなめは笑顔で『死にたい』と口にするのだ。

 (間)

れな:……あの、さ。誰にも言わないで欲しいんだけど。

かなめ:うん。どしたの?なになに?秘密の話?

 (間)

れな:……私も、死にたいんだよね。


 (※長めの間をとってください)

 ■現在■

 ■終わった世界■

れな:……喉が渇いたわね。

かなめ:願ったり叶ったりじゃない?人間は水分を摂らないと、四、五日程度で死ぬらしいよ?

れな:だーかーら!そんな苦しんで干からびるような死に方、私はしたくないって言ってるでしょ!?

かなめ:まあまあ落ち着いてよ、れなちゃん。……喉が渇いたのはウチもなんだし。ちょっとそこら辺散策してみる?

れな:散策してみるったって、この何も無い更地を?

かなめ:ほらさー、どっかに水が湧いてたり?するかもしれないよーん。

れな:……だとしても、絶対放射能で汚染されてるやつじゃん。それ。

かなめ:でも喉カラカラで死ぬよりかはいいんでしょ?れなちゃん的には。

れな:ま、まあ、そう言われたらそうなんだけど。

 (二人は周囲を散策し始める。)

かなめ:それにしても本当に何も無いね~。

れな:核爆発で全部吹き飛んじゃったからね。

かなめ:海まで干からびちゃうとはね~。最新の技術はすごいねぇ!科学の進歩だよ!

れな:その科学が進歩した結果、地球が滅びちゃったんだから何の意味もないわよね。人間って本当に愚か。

かなめ:ふふん。だからこの科学の進歩を観測できてるのも、れなちゃんとウチの、二人だけ。

れな:……本当に地球に二人だけだなんて、ちょっとワクワクする。

かなめ:お、ここに来てれなちゃんの機嫌が戻りつつあーる!!かわいいなぁ、うりうり~!

れな:最初から機嫌悪くなんてありませんー!しかえし!

 (れなからキスをする。)

かなめ:んっ……もう……れなちゃんには、いつもしてやられてばっかり。

れな:私のほうが攻めなんだから、当たり前でしょ?

かなめ:だからその顔やめてよ~!ドキドキする。……またしたくなっちゃうって。

れな:はいはい。後でね。

かなめ:う~。お預けくらった……。

かなめ:あっ!!れなちゃん!!あれ!!

れな:水溜まりが……あるわね。

かなめ:お水!お水あったよ~!よかった!これで喉を潤せるねぇ!

れな:……がっつり放射能で汚染されてるだろうけどね。まあいいわ。もう限界だし。

 (二人は水溜りの水を飲む。)

れな:そういえば。

かなめ:そういえば?

れな:地下の施設なんかも、壊滅してしまったのかしら。核シェルターは一体どうなったの?まさか全滅したとは思えないんだけれど。

かなめ:…………。

れな:え?なに?どうしたの?かなめちゃん?

かなめ:全く考えたことなかったー!!!やっぱりさすがだよ、れなちゃん!!!

れな:……うん。まあ、地下施設に行けば、汚染されてない水も、食料だって手に入るだろうし。

かなめ:……でもさ、それって、ウチら以外にも生き残りがいるかもしれないってことだよね。……なんかそれは嫌だな。

れな:かなめちゃん。お腹空いてないの?

かなめ:……空いた。めちゃくちゃ空いた。ほかほかの白ご飯にしょっぱい梅干し乗っけて食べたい!

れな:……なんで梅干し。

かなめ:れなちゃんも好きでしょ?梅干し。

れな:まあ、その……大好きだけど。

かなめ:ふふふ。れなちゃんのそういうところ、ウチ大好きだよ!れなちゃん、ぎゅー!

れな:そういうところってどういうところよ。……ああもう、はいはい。ぎゅー。……よしよし。

かなめ:えへへ。頭撫でてくれた。……ねえ、今日は昨日よりも、ウチのことめちゃくちゃにして?お願い。

れな:……その上目遣い、ズルいから。本当にめちゃくちゃにしたくなっちゃうから。……でも、さ。

かなめ:ん?でも、何?

れな:こうやって人目を気にせず、いちゃいちゃできるのは、やっぱりいいかもね。

かなめ:れなちゃんっっ!!!分かってくれた!?そうなんだよ!そうなんだよ!!!……今までは周りの目とかあったけど、ここでなら何にも気にしなくていいの。

かなめ:……だから、ウチらだけの世界なの。

 (※長めの間をとってください)

 ■過去回想■

 ■保健室にて。■

かなめ:(M)昨日、記憶がないウチのことを助けてくれたらしい、れなと名乗る女の子は、綺麗な黒髪を揺らしながら、とても儚げに「私も死にたい」と言ったのだ。

かなめ:(M)まるでその時を、今か今かと待ち望んでいるように。

 (間)

かなめ:そうなんだ。れなちゃんも死にたいんだ。

れな:……驚かないの?

かなめ:驚かないよ。自分で死にたいって言ってる人間が、他の人が死にたいって言ってるの聞いて驚いてたら、なんか矛盾じゃん。

かなめ:ウチは自殺肯定派だし。つらいなら死んだらいい。……死は救済なんだから。

 (間)

かなめ:(M)無責任なことを言っている自覚はもちろんあった。昔から空気が読めないよね、とか、人の気持ち考えなよとか言われてきたけれど、ウチにはそれが分からない。だから今回も、知ったような口をきくな!とか、何にも知らない癖に!とか言われて去っていかれるのが筋書きだろう。

かなめ:(M)だけれど、彼女は……れなは、違ったんだ。

れな:……死は救済。ふふふっ。そうだよね。この話して、肯定してくれたのはかなめちゃんが初めてだよ。なんか、嬉しい。つらかったら死んでもいいんだ、って思ったら、とっても楽になった。

れな:ねえ、ライン交換してくれない?交換してくれたら嬉しいなって思うんだけど。……もっと自殺のことについて語りたい。どうかな?

かなめ:(M)目をキラキラと輝かせながら、楽しそうに自殺の話をするれな。まあ、はたから見たらおかしいんだろうけどさ。でもね、ウチはこのときから、れなにとても興味を持ったんだ。

 (間)

 (その夜、ラインでのやりとりにて)

れな:『ライン交換してくれてありがとう!今日はいろいろ話せてとっても嬉しかったー』 

かなめ:『ウチも。わざわざウチに話しかけてくる人なんて滅多にいないからさ。いたとしても偽善者ばっかり』

れな:『わかる!偽善者いるよね!「死ぬなんて言うな!」とか「生きてたらいいことあるよ!」とかさw』

かなめ:『じゃあその生きる未来を、お前は保証してくれるのかって話だよね』

れな:『そうそう!ほんとに!あとは、口だけの人とか』

かなめ:『あーあー。いるいる。てかだいたいの「死にたい」って言ってる人間がそれ。自殺する気なんてさらさらない癖にさ』

れな:『実は最初、かなめちゃんのこと、そっち側の人間だと思ってた。ホントごめん』

れな:『(スタンプ)』

かなめ:『いーよいーよw気にしないでwこんな見た目してるんだからファッションメンヘラに思われるのは仕方ないよ。てか、そのスタンプ、ウチも持ってる!』

かなめ:『(スタンプ)』

れな:『ホントじゃん!偶然!このスタンプゆるくてかわいいよねw』

かなめ:『友達いないから滅多に使わないんだけどねw』

れな:『そういうこと言わないの!w私は?私は友達じゃない?』

かなめ:『えっ。友達だと思ってもいいの?』

れな:『もちろんだよ!私はもう友達だと思ってるけど』

かなめ:『ありがと。じゃあ、恥ずかしいけど、友達ということで』

れな:『というか、もう0時回ってるけど、かなめちゃん寝れる?』

かなめ:『毎度のごとく寝れないからODキめようとしてたところ!今日は何を何錠飲もうかな~』

れな:『かなめちゃん。怒るよ?今から通話かけるから』

 (れな、かなめに通話をかける。)

かなめ:あ、そのもしもし……。れなちゃん?

れな:ODしちゃだーめ。身体に悪いでしょう?……寝れないときは、こうやって通話して朝までおしゃべりしようよ。

かなめ:でも、それだとれなちゃんの寝る時間が……。

れな:夜寝れないのが自分だけだとでも思った?

かなめ:……あ、その。ごめん。……分かった。

 (間)

かなめ:(M)その日から毎晩、れなとは朝まで通話した。恋心を抱くのに、そう時間はかからなかったと思う。

 (※長めの間をとってください)

 ■現在■

 ■終わった世界■

れな:(ため息)ここの施設もダメ。全壊。……何なの?何のための核シェルターだったの?100トン以上の荷重(かじゅう)にも耐えられますー、とか耐震性に優れてますー、とか。核戦争が起こっても地下だけは安心!とか謳ってたのに。

かなめ:それだけ爆発が凄かったってことなんだねぇ。……それよりもお腹空いたぁ。はむっ。

 (かなめ、れなの二の腕を甘噛みする。)

れな:……何してるの。

かなめ:えへへ。れなちゃんの二の腕美味しそうだったから。

れな:それ嫌味で言ってる?襲うよ?

かなめ:どうぞ、襲ってくださいな。

れな:……今はやめとく。

かなめ:えー!!!なんでさ!!!

 (しばしの沈黙。)

れな:ちょっと。具合が悪いかも。

かなめ:放射能の影響かな?

れな:たぶんね。

かなめ:ねえ、れなちゃん。

れな:うん?

かなめ:先に死んじゃ、嫌だからね。

れな:……そうだね。死ぬときは一緒。約束したもんね。

かなめ:うん。約束。死ぬときは一緒……

れな:(被せるように)ゴホゴホッ!……ごめん、今日はちょっともう、休ませて。

かなめ:……れなちゃん。うん、分かったよ。

れな:……ごめんね。かなめちゃん。もしかしたら、私のほうが先に死ぬかも。

かなめ:……嫌だ。

れな:ごめんね。

かなめ:嫌だよ。

れな:ごめん。

かなめ:嫌だってば!!!!!!

れな:…………。

かなめ:お願いだから先に死なないでよ、れなちゃん。約束したじゃん。約束、したじゃんか……。

れな:ごめんね、かなめちゃん。

 (※長めの間をとってください)

 ■過去回想■

 ■保健室■

れな:(M)あれから私は、保健室へ通うのが日課になっていた。サボりとかじゃないわよ?……そう、かなめに会うために。

かなめ:れなちゃん!今日も来てくれたの!嬉しい!

れな:うん。来たよ。昨日のラインの内容について話したくってさ。

かなめ:ああ、死に方のこと?ウチはぐちゃぐちゃに跡形もなく死にたいなーって思ってるけど、れなちゃんは綺麗なまま死にたいんだっけ?

れな:うん。私は、その……できるだけ綺麗なまま、苦しまずに死にたい。だから、かなめちゃんの意見には賛同できなくて。

かなめ:うん。ウチもれなちゃんの意見には賛同できない。

れな:えっ。

かなめ:綺麗なまま死ぬなんて無理だよー!人間死んだらみんな醜いの!それに、苦しむからこそ死を感じるんじゃないの?

れな:うっ……。た、たしかに非現実的かもしれないけど……私そういうグロいのはちょっと無理……。気持ち悪い。 

 (緊急警報が鳴り響く。)

れな:え!?いったい何の音!?

かなめ:……う??研究所??……んーと、暴走??……ばくはつ??

れな:……ロスアラモス研究所。アメリカで一番大きな核の研究施設ね。……制御システムが暴走。でもそれって日本に関係あるの?

かなめ:なんか外でみんなすっごい騒いでる。

れな:日本にまで影響が及ぶってことなのかしら。

かなめ:……れなちゃん。これ。スマホニュース。

れな:……え……待ってよ。TNT(※ここに爆発の数値が入ります)……嘘でしょ……そんな、これ。日本に影響が出るどころじゃない。地球が滅ぶわよ!!

かなめ:……地球が、滅ぶ。

れな:ええ。あと45分もしないうちにね。

かなめ:れなちゃん。

れな:なに?

かなめ:心中しよう。

れな:え?

かなめ:一緒に死のう?学校の裏の大きなダム、あるでしょ?

れな:んなこと言ったってなんで今!!ほっといたって逃げたって死ぬわよ!!

かなめ:だからこそだよ!!!

れな:え……あ……え……それって……

かなめ:最後の瞬間はれなちゃんと一緒がいい!ダムへの飛び込み自殺は前から考えてたけど、れなちゃんは苦しむから嫌だっていうと思ってた。でも……

れな:飛び込んで溺れている間に世界は滅ぶから、そんなに苦しまずに死ねるよってこと?

 (間)

れな:(M)かなめは黙って笑顔で頷いた。本当に死ねることが楽しみで仕方ないみたいだ。……まあ、それは、私も同じ……なのかな。

かなめ:ウチ、最期の瞬間はれなちゃんと一緒がいいんだ。……手、貸して?

 (かなめ、れなの手の甲に軽くキスをする。)

かなめ:れなちゃんは、嫌かなあ?ウチね、れなちゃんのことが好き。だから、一緒に死にたい。

れな:……いいよ。分かった。心中しよう。

かなめ:……えっ!?ええっ!?いいの!?……ほ、本当に!?!

れな:うん。

かなめ:えっ、えっと……れなちゃんって、ノンケ……だよ……ね?

れな:ここまで来てその質問?私はレズだよ。タチだけど、それでもいい?

かなめ:(声にならない声)あ、相性バッチリ……

れな:かなめちゃんは、ネコっぽいね。

かなめ:お、おっしゃる通りです……。

れな:ふふふ。ピアスが右耳だけなのは、そういうことだったのね。

れな:お互いの性癖も分かったところで……心中、しましょうか。

かなめ:よ、よろしくお願いします……。

れな:何?今更照れてるの?

かなめ:だって、まさかOK貰えるなんて思ってなかったから。

れな:私もね、死ぬときはかなめちゃんと一緒がいいって思ってた。だからとっても嬉しかった。……一緒に死のう。約束。

かなめ:……っっ!!うん!嬉しい!約束!絶対一緒に死のうね!

れな:手繋ぐ?

かなめ:手繋ぐ!

れな:手繋いで飛び込もっか。

かなめ:うん!それがいい!そうする!そうしたい!

れな:かなめちゃんって、こんなに素直だったっけ?かーわいい。よしよし。

かなめ:えへへー。大好きなれなちゃんと一緒に死ねるの嬉しい。

れな:私もだよー。死ぬときは一緒だからね。

 (二人はキスを交わす。)



 (※長めの間をとってください)


 ■現在■

 ■終わった世界■

 (※二人とも苦しそうに、ゆっくりと話してください)

かなめ:れなちゃん、生きてる?

れな:……ゴホッゴホッ、なんとか。

かなめ:ウチも、もう無理かも。

れな:そっか。

かなめ:……気持ち悪い。

れな:気持ち悪いね。

かなめ:地球が滅びてから何日経った?

れな:分からない。最後に水を飲んだのはいつだっけ?

かなめ:分かんない。……ねえ、れなちゃん苦しい?

れな:うん。でも不思議と、つらくはない。かなめちゃんが居てくれるからかな。

かなめ:えへへ。嬉しい。……ゴホッゴホッ、、ねえ、れなちゃん好きだよ。

れな:私も好きだよ。……ねえ、一つだけ聞いてもいい?

かなめ:うん。なあに?

れな:フクシアの妖精さんって、何?

かなめ:フクシアの妖精さん?

れな:初めて出会ったときに、かなめちゃんが私のことそう呼んだの。記憶、無いと思うけど。

かなめ:ははは、なるほどね。ウチそんなこと言ったんだ。……ウチね、花言葉って好きなの。フクシアの花言葉は『つつましい愛・信じる愛』。まさにれなちゃんにぴったりだよね。

れな:…………。

かなめ:それを言ったこと自体は覚えてないけど、最初から本質は見抜いてたのかなー。不思議だねぇ。……こっち見て、れなちゃん。

れな:なあに?かなめちゃん。

かなめ:最期にさ、キスさせて。

 (かなめからキスをする。)


 (※少しの間をとってください)


れな:(かなめの死を悟る)かなめちゃん。かなめちゃん。ちょっとだけ待ってね。私もすぐ、そっちへ行くからね。……かなめちゃん、すっごく幸せそう。

 (間)

れな:……よかった。私たち、ようやく死ねるね。

 (間)

かなめ:(N)地球最後の女子高生、れなとかなめは、こうして息を引き取った。二人の最期の顔は、とても幸せそうだったらしい。だが皮肉にも、それを知る者は誰一人として存在しない。


■END■

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