みやはな

読書が好き

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いつかの輝きに手を伸ばしてもーーシュトルム作「みずうみ」読書記録

 さわやかな熱気が漂う夏の森で、イチゴを求めてさまよい歩く幼い少年と少女。頬を火照らせ懸命に茂みをかき分ける少女を、少年はつい見つめてしまう…しかしどれだけ探しても、イチゴは見つからないまま……  19世紀ドイツの短編小説「みずうみ」は、幼なじみとの初恋と、大人になり別の人と結婚した後での再会を描いた作品です。  少年ラインハルトは、少女エリーザベトといつも一緒に遊んでいて、彼女に淡い恋心を抱いていました。少し内気なエリーザベトも、ラインハルトを頼りにし、彼についていきた

    • 芸術と安定は相容れない?―トマス・マン「トニオ・クレーガー」読書記録

       芸術が好きだけど、それを生業にするかは別の話…そう思っている人はたくさんいるだろうし、自分もその一人です。そんな人は、この話の主人公トニオ・クレーガーに共感するに違いありません。  文学好きの少年トニオは、同級生の少年ハンスに恋をします。ハンスは金髪碧眼の美少年で、いわばクラスの一軍。対してトニオは、地味で内気なタイプで、ハンスには全然相手にしてもらえません。トニオは別にそれでもかまわなくて、美しいハンスを想うこと自体に幸せを感じてました。  芸術が好きで内向的、あれこ

      • 敬愛しても従属しないーーC・ブロンテ「ジェーン・エア」読書記録

        尊敬する人や大好きな人が「白」って言ったら、黒も白に見えてしまうことってある。黒は黒だと、言える強さがあったらいいのに。 ジェーン・エアは19世紀中頃のイギリスの女性作家、シャーロット・ブロンテの自伝的小説だ。孤児として育った少女ジェーンが、仕事で赴任した屋敷の主人、ロチェスターと恋に落ち結ばれるまでを描く。 ジェーンもロチェスターも、互いの第一印象はあんまりよくなさそう(「ずいぶん気まぐれで、ぶっきらぼうな方ですわ。」byジェーン)。 けれど話してみるとずいぶん波長が

        • 自分軸でいるのって簡単じゃない。ーー西加奈子 著 「サラバ!」読書記録

           「信じる」って何だろう。それは宗教であったり、親しい人に対する感情であったりするかもしれない。何を信じればいいか、そもそも何かを信じていいのか分からない人にこそ、ささる作品だと感じた。  「サラバ!」は、父親の赴任先であるイランで、日本人の両親から生まれた主人公、歩(あゆむ)の半生を描いた作品だ。  物語の前半では、主に学校での人間関係や、家族生活が描かれる。歩の人生に大きな影響を与えるのが姉の貴子である。貴子は、周囲とうまくなじめず、家庭でも常に不和の原因となっている

        いつかの輝きに手を伸ばしてもーーシュトルム作「みずうみ」読書記録

        • 芸術と安定は相容れない?―トマス・マン「トニオ・クレーガー」読書記録

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        • 自分軸でいるのって簡単じゃない。ーー西加奈子 著 「サラバ!」読書記録