![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75106697/rectangle_large_type_2_ae393e835df2146e2c7d7854f0ce9cd4.jpg?width=1200)
人類最後の日 シナリオ
鞄を大事に抱え、待っている渡充。
タイトル「人類最後の日」
缶ビール両手に走ってくる仲村友依。
仲村「先輩~買ってきました」
渡 「お、ご苦労さん」
仲村「いや~自販機まだ動いててよかったです」
渡 「よしよし」
× × ×
堤防に腰掛けて、
プルトップを開け、グビグビ呑む。
渡・仲村「ぷふわぁ~」「くぅ~~~」
渡 「あ~生きててよかった~」
仲村「(笑)…最高っすね」
渡 「な~昼間からな~」
しばし、呑む。
仲村「会社に連絡しなくてよかったですか?」
渡 「え?いまさら?」
仲村「まぁ、そうっすよね」
渡 「どうせ、もう誰もいないよ」
仲村「出張なんかしなくてもよかったってことっすね」
渡 「人生そんなもんでしょ」
しばし、間。
仲村「仕事、もうしなくてもいいんですね」
渡 「そうだな」
仲村「不思議っすね」
渡 「俺は嬉しい。やっと解放された~」
しばし、解放感に浸る。
仲村「なんか後悔とかあります?」
渡 「う~ん、そうだな。こんなんなるってわかってたら、就職なんかしないでも、よかったかな?」
仲村「(明るく)食べてけないですよ」
しばし、まどろむ。
渡 「俺さ」
仲村「はい」
渡 「いまだから言っちゃうけどさ」
仲村「はい」
渡 「経理のミカちゃん、いいなって、思ってたんだ」
仲村「おぉ!?」
渡 「わかる?」
仲村「先輩、ミカさんみたいな人がタイプだったんすね」
渡 「あ~思い切って、告っとけばよかったかな~」
仲村「(ふふふふ)」
渡 「なに、その含み笑い」
仲村「いえ、別に」
渡 「おいおい、いまさら隠すことないだろ?」
仲村「確かにそうっすね。すっきり終わった方がいいっすもんね…ま、いいか。…ミカさん不倫してましたよ」
渡 「え、誰と?」
仲村「会社の人じゃなかったみたいですけど。奥さんいる人だって」
渡 「そっか~そっちか~」
仲村「年下ですって」
渡 「なんですって?」
仲村「ダブルで残念でしたね」
渡 「うるさいよ、お前」
しばし、感傷に浸る。
渡 「おい、お前はなんかなかったのかよ」
仲村「え、あぁ、そうですね」
渡 「言っちゃえ、言っちゃえ。言ってすっきりしちゃえ」
仲村「確かに…すっきりしますよね…」
渡 「え~なになに?その深刻な顔…」
仲村「先輩…」
渡 「え、なに!?俺?俺のことが好きだったとか?」
仲村「(キッパリ)いえ、それは無いです」
渡 「あ、そうなの…やけにはっきり言うのな…そっか…いや、別にいいんだけどさ…なんかさ…ちょっと傷つくっていうかさ」
仲村「(聞いていない)う~ん、先輩怒らないですか?」
渡 「なんだよ、内容もわからねぇのに怒るもクソもないだろ」
仲村「そっすよね…」
渡 「なんだよ、仕事のことか?」
仲村「う~ん、まぁ、そっすかね…」
渡 「もう関係ないだろ?」
仲村「そっすよね…」
渡 「ウジウジしやがって。ほら、これ見ろ」
鞄を示す。
渡 「ここに機密書類が入ってる。俺、これ偽造しろって言われてたの。わかる?バレたら、絶対ヤバかったの」
仲村「それヤバかったすね。だから、先輩ここんとこずっと暗かったんですね」
渡 「もうどうしようって思っててさ。だって、これ犯罪じゃん?仕事なのに、俺、犯罪に加担しなきゃいけないの?本当はこっちで処分するか、とんずらするかどうしよかって、ずっと迷ってたんだけどさぁ、まぁ、こうなったら、もう関係ないし」
仲村「先輩も苦労してたんですね…」
渡 「な?俺に比べりゃ、お前の悩みなんざ、大したことねぇだろ?」
仲村「…実はですね」
渡 「ほいほい」
仲村「専務殺しちゃったんです」
渡 「はい?」
仲村「信じてほしいんですけど、別に殺すつもりなかったんですよ。でも、ほら、専務ってああいう人じゃないですか。言った言わないで口論になっちゃって」
渡 「あぁ、はいはい」
仲村「あんまり酷いこと言うから、思わずカーッとなっちゃって、それで殴ったら、専務引っくり返って、で、金庫の角に後頭部から突っ込んじゃって…」
渡 「あ~~~~」
仲村「いや~~~」
渡 「それいつの話?」
仲村「昨日の朝です」
渡 「こっち来る前か」
仲村「はい」
渡 「だから専務電話にぜんぜん出なかったのか」
仲村「どうしましょう」
渡 「どうしましょうって、お前…」
仲村「実は、死体こっちで始末しようかなって思って」
渡 「はい?」
仲村「車のトランクに入れてきたんです」
渡 「…おい」
仲村「もうそんなに暑くないから、別に匂わなかったでしょ?」
渡 「そういうことじゃなくてだな」
仲村「怒らないって約束したじゃないですか」
渡 「別に約束してねぇよ」
仲村「あ~~~すっきりした」
渡 「お前…怖いやつだな」
仲村「別にいいじゃないですか。どうせもう終わりなんだから」
渡 「まぁ、そうだな。最後ぐらい仲良くいこうか」
水平線でロケットが次々と打ち上がる。
渡・仲村「お~~~」
渡 「行ったなぁ」
仲村「酷いっすよね、あれ。知らないうちに決まってて」
渡 「そりゃ、秘密にしとかなきゃ暴動とか起こるからだろ」
仲村「文春凄いっすね。よくすっぱ抜きましたよね」
渡 「いつの世も、秘密は秘密にしておけないってことだね」
渡・仲村「(ふふふふふ)」
お互い、まだ言っていない秘密を抱えている。
仲村「あれ、誰が乗ってるんすかね」
渡 「どうせ国会議員のお偉い先生とか、お金持ちさんでしょ」
仲村「死ねばいいのに」
渡 「おいおいおいおい、そういうこと言わないの」
空に閃光が走る。
渡 「ほらぁ、お前が変なこと言うから」
仲村「あ、先輩!」
渡 「なに?」
仲村の脚から結晶化が始まっている。
渡 「あ、俺もだ」
渡の脚も結晶化がはじまり、地面とくっついている。
渡・仲村「…」
渡 「お別れですな」
仲村「そのようですね」
しみじみ、景色を眺める。
渡 「しかし、天気がよくてよかったな」
仲村「そっすね」
全身が結晶化していく。
そして、風景に溶け込んでいく。
END
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?