生活　#毎週ショートショート

私の1日は、1杯のコーヒーから始まる。龍之介ブレンド。朝食にぴったりの、少し苦目の入りから、ほんのり甘く舌を転がり、すっと爽やかな軽い酸味が喉を抜ける。これだ。

出版社のキャンペーンでもらった、太宰治の顔が文字盤に貼り付けてある時計は、ファッションのワンポイントになる。同じ出版社が出した、トートバックもたくさん物が入るから気に入っている。

通勤電車では、いつだって本を読んでいる。今は、先日の文学フリマ東京で買ったエッセイ集だ。私と同じ仕事をしながら、自分の作品を書いているなんてすごい。

職場に着くと、仕事のために着替えて、お客を待つ。お客といっても、人間ではなく、犬だ。今日のトリミングは・・ナオヤ、チューヤ、アンゴ・・どこかで聞いたような名前ばかり。

休日には、ふだんは着けられない香水をつける。泉鏡花をイメージしたフローラル系ノート。文学に心酔しているような、二次元の文豪を推しているだけのような。

なんでもかんでも文学にこだわる私を、文学トリマーと友は呼ぶ。

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