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装飾 #毎週ショートショートnote

その銀杏は、ずっと前からこの大通りに立っていました。

青々とした葉を茂らせ、ぐぐぐっと背を伸ばす春もあれば、芋や栗をたくさん食べたように葉を黄色くさせる秋もありました。冬を待たずに葉を落とし、雪に震えながら眠るのでした。

あるとき、その銀杏の近くに、ちいさな店ができました。

銀杏は、その店で働く人が、一生懸命考えているのを見ていました。どうすれば、お客さんが来てくれるのか、どうすれば、たくさんお金を使ってくれるのか。

銀杏には、夢ができました。そのお店が繁盛して、その人に喜んでもらいたい。

焼けつくように熱かった風が、やがて涼しくなって、秋になりました。相変わらず、お店にはあまりお客さんはやって来ません。困ったその人は、お店を飾りつけました。

銀杏は、考えました。お店のために、自分にできることは何か。

ある夜、お店の前には人が集まっていました。みんな一様に、お店のそばの銀杏の木を見上げていました。スマホを掲げている人もたくさんいました。

不思議なことに、銀杏の実が、きらきらと光っていました。


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#毎週ショートショートnote #誘惑銀杏 #光

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