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当たり前の関係

このまえの3連休の中日に、朝からピクニックをした。準備して出かけたのは10時前くらいだったと思う。

近所のカフェに立ち寄って飲み物を買い、桜が咲きつつある川沿いの道を通り、公園を目指す。娘が指定した公園は、保育園の御用達で、彼女にとって庭のような存在である。

公園に着き、お弁当を広げた。

公園までの道のりでも気がついていたが、川の掃除をしているようだった。作業服姿の市の職員らしき方々や、町内会の方々だろうか袋を片手に歩いていた。川沿いの柵の所々からも人が上がってくる。

市民参加で行うイベントとして、今月初めに予定されていた清掃だが、時節柄、参集できなくなって中止になったはずだった。市の職員の方々が、日を替えて休日返上で掃除をしてくれているのかと、感じ入りながらサンドイッチを頬張っていた。

すると、近くの柵の切れ目から、作業着の人が何人か上がってきた。ひときわ大柄な男性が姿を見せ、はしごを渡りきって顔をあげた。

あ、市長だ。

仕事柄、自治体の首長については人一倍敏感である。そして市長はだいたいオーラがある。そして忙しくしているから、ちらっとしか見られない、それが当たり前だと思っていた。

しかし、目の前の市長は違った。作業服で
、職員たちとともに文字通り汗をかき、談笑していた。オーラはあるけれどもハードルが低い、そんな雰囲気に温かみを垣間見た気がする。

考えてみると、僕たち家族は様々な場面で市長を見かけている。川沿いを走っていたら、出勤する彼を見かけたり、夏祭りでは浴衣姿ですれ違い、総合防災訓練では休憩所ですぐ後ろに座っていた。精肉店が閉店する日、列に並んでいたら、花束を携えた彼が後ろに現れた。近所のイベントにも何度も来ていたし、通勤で使う駅でティッシュを配っていたこともある。

規模が違う、と一蹴されそうだがあえて言いたい。

僕の勤務する自治体では、そんなことは起こらないだろう。首長にはやるべき仕事があるし、ある程度の権威性が必要だし、個人的な事情も大いにあるから、比較することは無意味でもある。

でも、である。

さらに、川の掃除には、市長だけでなく市議会の議員も参加していた。その川沿いは毎年、見事な桜並木となる。みんなで協力してきれいにしようというスローガンは、よくあるけれど、まさか市の職員と議員の方々が一緒にやっているとは知らなかった。

正直、職員と議員は、対決姿勢であることが当たり前だと思っていた。顔は出すけれど、挨拶程度の交流というのが普通のことだと思っていたのは僕だけだったのか。

地域によって異なる文化は確かにある。価値も変わるとすれば、考え方も違うのだ。そんな単純なことに気がついて、よい地域だなぁと思うのだ。

翌日もまた、娘のリクエストにより朝ピクニックを催行した。そして週が明けてから、清掃した川沿いの桜並木のライトアップが始まった。さっそく家族ででかけて夜桜を楽しんでいたら、すぐそこにケータイで写真を撮っている彼がいた。

あ、市長だ。

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