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旅にもつ2020・2019

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旅する日本語2020、2019のために書いたもの。初めてのショートストーリーの創作。
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#父親

肩書き

目で見ても、耳で聞いても、それは現実のものではないような気がしていた。小さな命が僕の前に差し出され、恐る恐る手と腕で抱いたとき、再び圧倒的な感情が湧き上がる。 弥立つ。 父親としての感覚は、いつ生まれるんだろう。体は変わらないから、自覚なんてできるわけがない。そう思っていたけれど、その瞬間は確かにあった。 新しい命の存在を知らされたのは、岡山県の豊島に旅行しているときだった。母体を表現したという美術館で、そのことを聞いたとき、なぜか自分が胎児になったような、怖くて温かな