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フランス人の愛国心

「自分はフランス人であることを捨てることない」

随分と前に彼が発したこの言葉が心にずっと刺さっていた。
それは数年前、彼氏・彼女になるよりもずっと前の出会ったばかりの頃。

「杏には日本への執着がなくて地球がホームみたいな人だけど、僕はフランス人であることを誇りに思ってるし、ナショナリティは僕の一番のアイデンティティだから。」

そもそも自分の国籍について特に考えたこともなかった私。日本を出て以来、転々と居場所を変え、勉強なり仕事なり、またはただひたすら旅することを楽しんで生きてきた。

自由であることを愛していたし、誇りに思っていた。

地に足が着いた生活とは程遠いけど、その地その場所に馴染んで、文化の違いを肌で感じて、生きてるなあって実感する。
自分にはこういう生き方が合っていると思っていたし、こうやってしか生きていけないと思っていた。

彼は自分のことを”シンプルな人間”という。

「僕はとてもシンプルな人間だよ。小さな町に住んで、仕事して家帰ってご飯食べて寝て、、同じような毎日の繰り返しで、友達も多くないし、パーティーもしないし、日曜日はマモンとランチして過ごしてる」

出会った当初、私には自分と彼の生き方は正反対のように見えた。
あまりに違いすぎて、どちらの方がいいとか、羨ましいとか、そんな気持ちも生まれなかった。

「日本は素晴らしい国。日本に行くのは僕の夢の一つだよ」

彼はドラゴンボールが子供の頃から大好きで、いつか日本に行ってみたいと言っていた。
日本の文化にも関心が深く、日本の歴史や行政事情など私よりも私の祖国についての知識があることを見せよく驚かせた。

「旅をするのは好きだよ。一人旅も好き。たまに行き先を決めずに空港に行って、空いてる航空券を買うんだ」

安定した人生を送ってる人かと思えば、放浪人のような一面も見せる。
じゃあどうしてフランスにこだわるの?素敵な国なんて世界中どこでもあるじゃない。と聞くと、首を横に振って、ああ君には分からないだろうなあ、と言う顔をした。

「僕はどこでも生きていけると思っているけど、フランス人であることは絶対に捨てない。フランス人であることは僕の一番のアイデンティティなんだ。」

長い間、彼のこの言葉は私にはピンとこなかった。

「フランスは世界で一番美しい国」
「フランス語はどんな言語よりも複雑で知的で美しい」
「フランス料理は繊細で美しくて天才的なんだ。これが食べられないなんて、、、(国外旅行する時よく言う)」
「フランスは革命の国。フランスの歴史は素晴らしい(よく歴史のレクチャーしてくる※大体聞いていない)」

自分の国の歴史、文化を愛し、誇りに思う。

それはとても素敵なことだと、最近になってようやく気づいた。

フランスに住んで、これから先もきっとここに住み続けるのだろうと思うのだけど、それでも私は日本人であることをやめる事はないのだろうなと思う。

異国の地でマイノリティとして生き、しょんぼりすることもしばしばあるのだけど、「私日本人だよ」と言えることに誇りを持っているし、それに恥じない人間でいよう、と心がけている。

外国にいるとどうしても、自分の振る舞いが”日本人”の印象になってしまうので、「日本人は礼儀正しくて親切だよね!」というよくある日本の印象をやっぱり崩したくないよね。日本大好き!って言ってくれる人多いし。


そうやって日本への愛着を芽生えるきっかけを作ってくれた彼には感謝しているし、日本の素敵なところをもっと見せてあげたいと思う。

最近はよく、フランスのいいとこ vs 日本のいいとこ みたいな張り合いをしてる。(なんだそれ)

彼のフランス自慢を聞いてる時とか、日本についてのYouTube見てる時とか
たまになんだか、祖国と遠距離恋愛をしてるような気持ちにもなる。それも悪くない。

来年はきっと帰るからね。





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