【発達障害①】多様性を認めるとは?(前編)
弊社の運営する10棟の障がい者グループホームのうち、3棟が、発達障害のご利用者が中心のホームとなっています。
発達障害のある人は、お一人お一人実に様々な個性を持ち、思考性・性格・特性は皆バラバラです。しかし、「生きづらさを抱えてきた」という点では、皆一様に共通している印象があります。
◾️発達障害の人が持つ「生きづらさ」
弊社の運営するホームにも、実に様々なご利用者がいらっしゃいます。
対人関係(コミュニケーション)においては、
空気がなかなか読めなかったり、
話している時の距離感が近すぎたり遠すぎたり、
考え方にこだわりがあり挨拶ができなかったり、
日常生活においては、
時間管理がうまくできなかったり、
やるべきことの優先順位をうまくつけられなかったり、
お一人お一人、得意なこと・苦手なことはそれぞれです。
ホームへのご入居にあたり、これまでの人生(学校や職場、地域)をお聞きすると、孤独や生きづらさを感じたというエピソードを持っている人が、実に多い印象です。
◾️とあるご利用者さん
弊社ホームにご入居いただいて3年以上となる、とあるご利用者さんがいます。
好きなことや趣味には、物凄く没頭され、その分野における探究心は凄い。
一方、自分の好きなことや、その話を理解できない人がいると、割とすぐに嫌いになってしまい、
「あ、もうこのひとイヤだ」と感じると、心のシャッターを一気に閉めてしまいます。
自分の話を一方的にする人も嫌だし、自分に興味のない話をする人も嫌。
グループホームのスタッフに対しても同じで、「嫌」という姿勢を、非常に分かりやすく態度に示すご利用者でした。
(※ご飯の時間に凄く遅れてくる、話しかけられても無視をする、食器を荒々しくかたす等)
また、そのご利用者には独自の考え方があり、「挨拶」が好きではありません。
「お疲れ様ですって、疲れても無いのに、相手の仕事のことも分からないのに、使う意味が不明」等の考えがあり、挨拶は会釈程度というこだわりを持っていらっしゃいます。
◾️グループホームでの失敗
入居当初、グループホームにおいて、このご利用者さんへの支援で、我々が失敗してしまったこともありました。
・割と(注意をしても)自分の話をしてしまいがちな高齢の男性スタッフで、
(そのため、あまりこのご利用者から好かれてはいない)
・「良かれと思って」、このご利用者に「挨拶はちゃんとせなイカンぞ」とお説教をする。
(※この「良かれと思って」は、支援の天敵)
こんな一幕がありました。
これにより、勿論、そのご利用者の心のシャッターは一気にガラガラと閉まり、
それ以降、このスタッフの時に食堂に降りて来ることはなくなりました。
勿論、この「すぐにシャッターを閉めてしまうこと」は、ご本人の生きづらさにも繋がっているし、それが過度にならぬよう、伝え方に注意しながら、関係施設とも連携した上でお伝えをしていくことは必要です。
しかし、日々接するスタッフが、配慮なく、かつ「自分の価値観を押し付ける」形で、伝えるべきことではない、と考えています。
グループホームは、これまで「社会のあるべき姿」の中で苦しみ、孤独感や生きづらさを感じてきた人にとって、【最後の砦】であるべきだと思っています。
グループホームが「社会のあるべき姿」を配慮なく押し付けてしまっては、そもそも、その「あるべき姿」に苦しんできた人達にとって、そこは「家」ではなくなってしまう。
勿論、グループホームは「自立を促す場」ではありますが、それよりも何よりも、まず「安心して暮らせる場」であることの方が重要です。
働いて疲れて帰ってきた場所が、「ガミガミ言われる自立訓練の場」だったら、私だったら辟易としてしまうだろうな、、
と私自身が思っていることが、背景としてあると思います。
(勿論、そうではないホームもありますし、考え方は各ホームそれぞれですので、あくまで私達の話です)
※ちなみに、そのスタッフは「せっかく注意してやったのに、私が悪いんですか!」と怒り、何度話してもご理解をいただけず、結果、そのホームの支援からは外れていただくことになりました。
◾️一方、心配になる就職のこと
このご利用者さんとのグループホームでの生活は、すったもんだがありながら3年を経過し、今では落ち着いて生活をしてくれています。
一方で、心配なのは「就職」のことです。
このご利用者さんは、就労移行支援(一般就労を目指して訓練したり就職活動のサポートをするところ)に通い、一般就労を目指していました。
・就職したら、自分が嫌な人と一緒でも、仕事は仕事と割り切って、やっていかなきゃいけないよな、、
・「ちゃんと挨拶をすること」を飲み込めるかな、、
こんなことを、グループホーム側としては心配しながら、そのご利用者の就職活動が本格的に始まるシーズンとなりました。
(つづく)
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