結局、自分がどう見られているかが一番難しい。

　例えばネットで知り合った子と仲良くなって。
　その子はめっちゃ可愛い少し年下の女の子で。
　良家の娘さんででも少し悩みがあって。
　その悩みに寄り添ってあげたら俺の事を好きになってくれて。
　俺を支えて、肯定してくれて、格好いいよって言ってくれてエッチさせてくれて。
　その子の助けを借りて自分を変えられて。
　自分に自信を持って沢山稼げてTRPGが世間に認知されてその第一人者として持て囃されて。

　そんな妄想がふとした瞬間に湧き上がる。

　荒廃した世界の中で何もかもを犠牲に、大事な人のために血の涙を流しながら前へ進む。
　戦闘でも強くて、何よりそのひたむきさな心が強くて、そんな自分を支えてくれる信頼できる仲間がいて。
　そんな皆に悪態をつきながらも内心とても救われている。

　そんな憧れが湧き上がる。

　朝起きれてる事で自分を褒めようとして。
　続けれなくてもそんなもんだから気にすんなと言い聞かせて。
　働かず、責任を負わず、稼げず、誰からも感謝されず。
　人の目に怯えながら社会から施しを貰ってコンビニ飯を喰らってる。

　そんな現実がある。

　愛されたい。

　支えられたい。

　肯定されたい。

　苦境の中でも足掻き続けるように、かっこよくありたい。

　他者から凄いって思われたい。

　自分は本当はもっと凄いんだって言いたい。

　俺を見ろ、俺を見ろ、俺を見ろ、俺を見ろ……

　金を寄越せ、賞賛を寄越せ、感謝を寄越せ……

　ここ昨日一昨日と、急に「終わりのセラフ」を読み返したくなってずっと読んでた。
　俺のなりたいというか、目指したい姿はひぐらしの圭一とか、伝勇伝のライナなんだけど。
　一番痺れるというか、格好いいと思うのは終わりのセラフのグレンなんだよね。
　実力は滅茶苦茶ある。でもそれだけでは乗り越えられないヤバすぎる現実という壁があって。いつかそれを乗り越えるために理性的に雌伏を続け、笑われても相手にしない。一族の期待を一身に受けそれに応えようと受け止められる器を持って。でもどれだけ理性的に正解が分かっていても、最後の最後で悲しいくらいに友人や家族を見捨てられない人間。
　その気持ちいいくらいにドンピシャに憧れる厨二感に鼻息荒く、時に悶えながら自分もあんな風になれたらな、なんてうっとりして。
　あー駄目だ駄目だルーチンを取り戻さなきゃって現実に戻ってくる。
　そこには朝起きたことで自分を褒めてる自分が居て。
　誰にも読まれないブログと、誰も来るはずの無い会を自分のためだけに開くことを目標にしている自分が居て。

　悔しい、虚しい。
　もしこれがゲームのキャラなら、十年くらい前から成長ミスってるゴミビルドのキャラだから、さっさとデータ消して別キャラでやり直したい。
　もっと好かれたい。賞賛されたい。支えられたい。自分をかっこいいって言いたい。
　なのにもう色々と遅いんだよ。
　最前線組が３０Lvで攻略を続けている中でまだ２０Lvでビルドミスってて装備も揃っていない、レベル差がそう簡単に埋まらないオンラインゲームやってるみたいな状態で。
　貼りだされてるクエストは最前線組向けのものばっかで自分にはそのクエスト受けられなくて。かといってビルドグチャグチャだからそんな役立たずを育ててくれるPTなんかなくて。でも俺が最初に魔王を倒したいとか言ってて。
　こんなゲームつまらないとやり直ししようとしてもキャラの再作成なんて機能なくて、ゲームを自分でやめる勇気もなくて。薬草取りのクエストをクリアしたから自分を褒めようなんて言ってて。

　ねぇ、誰か助けてよ。俺をヒーローにしてくれよ。
　愛し愛される相手が居て、皆に認められて、お金持ってて、自分を肯定して、生きてて楽しいといえるようにしてくれよ。
　そんな魔法の薬をくれよ。

　当たり前だけどそんな薬は無い。
　こんな屑を好きになったり賞賛してくれる人なんていない。
　助けてくれる人も居ない。いや、もしかするといるのかもしれないけどその手を取るわけにはいかない。
　だって、こんなにも俺はクズで惨めなんだから。何も返せない。約束も守れない。逃げてばっかりの無価値な何も生み出せない存在なんだから。

　誰かに見て欲しければ、認めて欲しければ、助けて欲しければ、愛して欲しければ。
　まずは自分で何か生み出せるようにならないと。それに足る価値ある人間にならないと。
　あぁ、こんなにも承認欲求に飢えているのにそれは満たされることもなく、またそれを満たすことも自分自身が許せない。

　苦しい、虚しい、悔しい、浅ましい、羨ましい、図々しい、女々しい、忌々しい

　それなりに大きい会社で、やり手の営業マンとして働いて、夜はTRPGの動画作って、声優の女の子と知り合っていい感じになって、TRPGのアニメ化とか企画して。
　そんな風に生きれていたなら。

　歩いてきた道振り返ると、嫌な事ばかりでもうんざりだよ
　触れるものを輝かせていく、そんな道を生きて来たかったよ……