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【特別展】大哺乳類展3わけてつなげて大行進

2024年6月1日

科博の特別展というだけで無条件に行きます。

今回の特別展は大哺乳類展の第三弾。
わける(分類)、つなげる(系統)を主軸に置いて哺乳類を紹介する展示であった。
分類の手法については昔の見た目重視の分類の仕方からDNA分析から推測する手法により多くの動物種について、どの種が近縁関係にあるかなどの新たな見地が続々と見つかっていて、それについての紹介が主だった。
またそれに併せて系統についても新生代を中心において、どの時代で分化し、各々の系統がどこで繁栄したのかを紹介していた。
前時代の分類は収斂進化による錯誤が非常に多い事を知らしめるような展示で、展示中何度も「見た目に騙されるな!」という合言葉で動物種を紹介していたのが非常に印象的だった。

まずは入口の近くで哺乳類とは。という紹介からスタート。

子宮の存在

顔面の表情筋の発達、子宮の発達、二心房二心室、そして哺乳類における“種”という概念についてあらましを紹介していた。
実物大シロナガスクジラの心臓レプリカは非常におっきくて派手な展示だった。

シロナガスクジラの心臓で哺乳類の心臓を紹介

また種の交配についての展示でレオポンを紹介するのはこの手の哺乳類の特別展で展示するのは変わらず実施。
現在の倫理からして実験が出来ない過去の興味の産物ではあるが非常にわかりやすい交配の話しなので仕方ない。

レオポン。彼には繁殖能力が無い。

他表情筋や母乳、頚椎が7つなどの基礎的な哺乳類のおさらいを行い、次の章のわける、分類へ。

2章では“わける”分類の話として、哺乳類を種別ごとにどのようして分けているかに注目した展示であった。
角の有無、形状といった外見でわかる分け方、骨盤の形状や、歯の並びでわかる解剖学的な分け方、そして最後はDNAによる分類について、角はヨシモトコレクションからハーテビーストを示し、骨盤はモグラの骨盤の癒着具合、歯はオウギハクジラの歯の形状の違いから示されていたが、これはなかなかにパット見ではわからねぇ~w
ハーテビーストの分類は角というところからして大きさ、見た目でわかるけど、モグラの骨盤についてはじっくり見てわかるかどうかといったところ。
もちろんキャプションでどこが離合している、癒着しているかの案内はあるのだが、いかんせん小さい!
特徴として挙げられている箇所も言われたらわかる。といったところで、これは監修者の肝いり展示だな・・・!(川田先生はモグラが好き)
オウギハクジラの分類についても同じくこれは個体差・・・?ってう感じで分類に自信が持てない……。これはまた監修者肝いりの・・・(田島先生は海獣が好き)

左がオウギハクジラ、右はモグラの骨盤、監修者×監修者展示であろうと推測。

そして最後DNAによる染色体数の違いによる分類や血縁関係の分析などをはさみ近いように見えて実は遠い、そしてその逆の遠く見えて実は近いという動物種について紹介されていた。
それを端にして、“わける(分類)”から“つなげる(系統)”という形で系統の説明につなげていた。
このことについては食虫目と呼ばれた動物たちを代表として示されていた。
この食虫目の分類群の動物たちは分類がうまく出来ずにひとまずでこの“食虫目”とされていたのだが、近年のDNAに分析により彼らの身元がはっきりわかってきたという話だった。

結局のところ似たような形になるのは収斂進化という自然淘汰の妙

そして次の章からはこの近年のDNA分析などによりはっきりしてきた、アフリカ獣類、異節類、北方真獣類(ローラシアテリア・ユーアーコンタグリレス)3獣類を各々丁寧に紹介しつつ、剥製の大行進を見せる展示であった。

今回展示の中心の分類と系統を中心に紹介する展示はここで終わり、ここから先は科博の地力をドバドバ原液で流すかのような展示。各動物種を紹介していたらきりがない上に基本的に記憶ベースで書いているこの記述も危うい。

一番身近な動物、人。
この剥製も本物の骨である。

会場の所々に、前時代の学者を悩ませ、錯誤させてきたであろう収斂進化の動物たちが多く置いてあるのは非常に今回の狙いとリンクして非常に面白い試みだった。
特に仮剥製が多く展示されているところは今までの展示に比べて意図的に増やしたのかな?って思えるくらい仮剥製の標本が多くて非常によかった。
収斂進化の細かな特徴の違いを見せるために便利というところなのであろうか。

世界中にいる針を持つ動物たち。収斂進化の入門編。

剥製の大行進については第一弾、第二弾できちんと見ているので特に目新しさを感じなかった。というのもあるが、人が多すぎてじっくり見れなかった。どうしても注目のてんじというような置き方をしているので展示の意図を読み込むまでじっくり見れないのは残念。
次回は、無理やり大行進させなくても仮剥製の対比でも十分おもしろいのでそれでもいいのにな~。って思ってしまった。

大哺乳類展の最後の目玉として、中学生が発見したただのヤマイヌかと思われていた標本が実はニホンオオカミの標本であったというエピソードで一気にスターとなった剥製がお披露目。
ついでに研究論文の紹介もされていた。

ニホンオオカミの再発見

標本を継続して伝えていくことの意義っていうのはこのように学問の裾野が広がると既存の標本もまた貴重な資料となることを体現している非常にいい標本だった。

全体的な感想として、剥製大行進につられてやってくる人がおおく、「わける・つなげる」についてここ2,30年の哺乳類の分類の精度の上がり方と近縁種の判明等の研究者の感動が伝わっていたのかなぁ。と思うことがおおかった。
もっとそれら分類系統についてスペースを割いても良かったんじゃないかなあ。という感想が出てしまう。
もちろん貴重な標本が一同に会すというのは非常に面白いことだけど、おそらくそれを見に来ている人は動物園に行ったほうが楽しめるんでは無いのであろうか。

第四弾は更に大きな発見を引っ提げて戻ってきてほしい。

以上。

非常に意図を感じるアライグマ・フェネックの並び。
実は前回の大哺乳類展もこの並びで置いてあるので確実にわかってるものの犯行。