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【博物館】国立歴史民俗博物館

2024年2月24日

昨年の陰陽師展のときにこの歴博には訪問していたのだが、あまりにも物量が多すぎですべてを回ることが出来ていなかったので、今回は企画展がない常設を回るためだけに訪問。

6つのセクションで先史、古代、中世、近世、近代、現代、そして民俗を紹介するこの博物館、濃度たっぷりの歴史の教科書をなぞるかのようで非常に楽しい。
また、歴史の教科書の記憶も20年ほど前の記憶のなかの出来事なので、考古の新発見や解釈の変更により変わっているところはあるのだろうが、この館で紹介してくる出来事の些末な一事なので、どこが、どう変わったんだ……という無知を晒す。

今回は第4展示室の【民俗】と、第6展示室【現代】を集中してみることにしていた。

民俗のゾーンでは民俗学というものの成立はオタクにとっては一般教養である柳田國男という存在によって知られた存在ではあるが、その民俗風俗をかなりとっつきやすく展示していた内容で、民俗というものの範囲の広さ、深さをよく示していた。

初手で馴染みのある風俗として紹介されているのが年始のおせち文化、丸餅、角餅の分布などかなり噛み砕いた内容の民俗学を紹介されており、そこを端として日本各地の観光業に見られる地域性、また現代においてはサブカルチャーにおける聖地の地域振興、そして一大観光地区である沖縄、北海道の土産から見る大衆の文化の変遷など最初の一角から物量で攻めてくる。
そう思うと民俗学っていうのは各地域のスーパーの売り物の差だけで論じれる学問だもんなぁ。とおもうなどした。

また日本における先住民に対する民俗学的運動として代表されるアイヌの歴史についても昭和年代~平成年代続いてきた問題などについても詳しく紹介されていて、かなり現代の出来事であるので結果の出ていない問題についてもアンテナを立てているのはすごいなと感じた。

先に紹介しているように観光業をもととして、その地域の人がどう生活し、どのような問題に向き合ってきたか。という出来事すら民俗学の一端であるので無限に題材はありそう。
研究者の数のほうが少ない問題とかもありそう。。。

日本各地の風俗の紹介がおわった後は今度は現代、令和年代を的にして、平均的な家庭で今、何が起こっているのか。ということを的にして現代の生活の民俗学を紹介していた。
結婚観の変化から子供の習い事の流行、主婦の価値観の移り変わり、サラリーマンの通勤時間の変遷など、人間にはいっぱい考察するべきことがいっぱいだぁ!と。

また生活衛生観の向上を日用消費財メーカーの広告から考察するゾーンでは化粧品大手、洗剤大手などの商品がぎっしり並んでいた。
一般の人々がなんともなしに利用する物品から出来事の遷移を感じるとなんか大変そうだな。とも思えてしまう。

そしてありとあらゆる人間の足跡から研究に発展させた柳田國男をそっと展示していた。

民俗学の首魁を紹介して居るがまだまだ民俗の展示は終わらない。
ここからは年月を経ても変わらない日本各地のまつり、日本中で人々に親しまれる“妖怪”、また土着の神様、を紹介していた。
ときに祭りのゾーンではあばれ祭りの泥だらけのお神輿が展示されていたりとかなり大きい展示ですごい。
妖怪もまたあまりにも数が多いのでかっぱに絞って紹介されている様相でカッパについての研究も面白かった。
水の豊富な日本でしか生まれ得ない怪物というのもよく分かるようで。
「川などの水辺の事故に気をつけなさい。」という事象が河童という形をなして日本中で信仰(?)の形をなしているのも面白い。

日本各地の変形した道祖神も展示されていて、お人形様はデカくて見応えバッチシ。
そのとなりには、だるま、まねきねこ、果てはビリケンさんまでおいていて、日本人がいかに神性を持った存在が好きなのかを示したかのようで。

そして神様ゾーンを抜けると人間の出生から七五三へと続き、元服、そして葬られ方、に見られる民俗を紹介で人間の普遍的なものを示していた。
人間の行動全てに学問的な考察が入るのは面白い。
タダの毛のないサルなだけの霊長の一種であるホモ・サピエンスがどうやって人間になるっていったのか、というところにこの展示では掘り下げていないが、どのように変わっていったのかを考察するこの分野は本当に面白い。
おそらく一神教をメインとする諸外国では宗教学に吸収されてしまう分野ではあるのだろうな。と思うなどもした。

人間の営みを主眼としている民俗学であるがここからは労働にフォーカスして展示で各種職業を紹介していたが、マタギを出発点として猟友会のマタギまで来るのはあまりに予想外で笑ってしまった。
カツオ一本釣り漁の変遷で海上レーダー、魚群探知機の話出てくるのはちょっと笑うだろ。昔の一本釣りで利用していた、船の後ろでは現代のレーダーがぐるぐるしてる様はシュール。
もちろん上で紹介した展示は色物ではあるが、それ以外の薬売り、大工、陶芸なども地域性と経済性まで分析の上で紹介されていた。

続いては現代のゾーンではあるが、現代日本史で切っても切り離せない出来事であることの戦争の歴史という感じではあった。
特に明治期の富国強兵から大東亜戦争の敗戦→終戦の流れまでを軍国主義の日本として紹介していた。
特にこの歴博のある佐倉は以前は陸軍連隊駐屯地だったこともあり、かなり多くの展示を戦争関連に割いていると思えた。

三八式歩兵銃 が持てる。

軍隊の入隊、規律、そして後世で描かれた過酷な軍隊生活の展示などがふんだんにあり、また彼らの生活スペースを再現した展示もあり歴史上の軍隊としての扱いではなく個としての兵隊さんという感じがした。
またその彼らを支えるに至った銃後、家庭生活に入り込む戦争という点にも多くの展示を割いていた。
家庭向けに撒かれた戦争協力を求めるビラや、金属供出のお願いや、出征を祝う幟など枚挙にいとまがない。
そして二次大戦末期に沖縄本土決戦、広島、長崎に投下される核爆弾というところで戦争の歴史は締められる。

二次大戦後の人々の生活やGHQ統治下の日本の様子などもまさに等身大で再現されていて、かなりとっつきやすい展示ではあった。
その後の戦後復興から高度経済成長期に関わる文化の数々を特集し展示していて経済成長を象徴するマンモス団地の実物大展示や、東映の映画撮影現場の再現、そして最後は日本を代表する文化の怪獣ゴジラ、というところで現代の展示は終わり。

特に現代に関しては歴史の出来事というよりはなんの出来事が紐づいて生活にどう影響したかを明示するかのような展示で非常に民俗学的な展示かなぁと思った。
特に現代の社会を映す鑑としての雑誌の展示は地味目ながらも圧巻であった。

11時に入場して時間いっぱいまで見てかなりの満足度。1日で回れる訳がないや。ここに関してはやはり科博と同じく行く展示を絞って見に行ったほうがかなり満足度が高い。

以上。


文化怪獣 ゴジラ