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【博物館】あずきミュージアム

2024年5月19日

姫路の出張に合わせて訪問。
前々から回転焼きの御座候の本拠地であることは知っていたが、このようにあずきに対しての展示があることに驚いて、行ってみたいな~というところから興味を持っていた。

まず、企業博物館は自社製品のプロモーション、そして自社製品の歴史やそれにまつわる逸話などを紹介するのがお約束として広告塔の役割を持っていることが大半である。
しかしここは施設の名前に自社をここまで押し上げた、御座候の名前を冠せず、終始その名の通り小豆の全てにフォーカスを当てた展示であった。

商品名ではなくあくまで小豆

企業型博物館としては異例の入場料を取る上にその値段も1200円というかなり強気の設定。
地方の博物館が100~500円程度で入れることを考えるとその強気の度合がよく見て取れる。

入場してまずは小豆の品種や生産、農業としての立ち位置ではどのような存在なのかを解説したパネルがつづく。

現在日本で作付されている小豆の中で製餡に向いて、かつ安定した食味を有するエリモショウズという品種を代表例としてあげて日本で今まで栽培されてきた小豆や、小豆を食べる文化のある東アジアの中国、韓国の作付されている小豆の種類を紹介するなど小豆一つとっても、品種や、粒の大小、色味の違いなどから丁寧に拾い上げて小豆を紹介していた。

現代における小豆の生産と、どの国々で食べられているのか、日本国内での小豆から製餡への使用のされ方まで紹介され、並々ならぬ餡を作るうえでの原料へのこだわりが見て取れる。

小豆についての栽培生産について学んだあとは次は小豆がどこから来たのか。人類がどのようにして小豆というマメ科の植物を利用するに至ったかを紹介する展示。野生種のヤブツルアズキをスタートとして、日本の縄文時代から栽培が始まった流れや、起源地はどこなのかを推測する研究など、これはあずき文化と一括りにされるような展示ではなく、考古学、民俗学、植物分類学の総合展示だこれは。
東アジアの森林植生として挙げられる照葉樹林帯をキーとしてどのように穀物が広まったのか、水稲を代表としてアワ、ヒエ、トウキビなどの主要穀物と同様にそれら穀物をヒントとして日本での小豆を利用する文明の広まりを紹介していた。

ここらへんで考古的な展示は終わり、東アジアの国々の紹介へ。
穀物の利用を共通点として中国、朝鮮半島、日本の歴史を年表とともに展示。

そして1階の展示の最後には10倍エリモショウズがドドーンと佇む空間。

いやでっかすぎるでしょ

円形の展示スペースに栽培の1年の流れが紹介されていた。
十勝の大平原を再現した展示スペースだけど真ん中の異様な巨大小豆のお陰で笑うほどアンバランスで印象的な展示w

そのまま2階の展示スペースに行くと、これまた円形の展示で今度は農業のカレンダーとして古来から利用されてきた二十四節気の紹介が。

二十四節気を代表として、2階の展示は民俗学的見地からの小豆の正体や人々はどのようにあずきについて向き合ってきたのか、小豆をとおして醸成され文化の解説展示が殆どであった。

日本人に根ざした生活文化と小豆、例えば赤飯はおめでたい時に食べる。お彼岸の時期はぼたもち、おはぎを食べる等の行動。
祭事に利用され神前に供えられたりする側面や、ことわざ慣用句に使われる小豆というところまで文化の掘り下げがかなり半端ない。

そして展示の最後にそっと、このような『小豆』を使って誠心誠意皆さんにあんこをお届けしています。という御座候の自我が見える展示で締め。

工場の製造過程
君も御座候職人だ!

あずきミュージアム、企業型博物館の定石であんこの製造過程の科学を見せてくれると思っていたが予想以上に「日本人の文化に寄り添ってきた小豆」という存在を全面に押し出してきて農業、考古、民俗学、東アジア史とあらゆるあずきの事象を詰め込んだ博物館であった。
あまりにもあんこが好きで好きで仕方ない人には普通にオススメできるあずきのおはなしでした。

最後は工場直営ショップでちょっと遅めのおやつを食べて終わり。

以上。

焼き立てで生地がサクサクな御座候
展示のあとはあんこの味が格別である