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【特別展】ミニチュア愛(ラブ)!(紅ミュージアム)

2024年3月16日

久しぶりに企業博物館へ。土曜日もやっている企業系博物館はわりかし少ないのでありがたい。非常に助かる。
とはいえ今回は企業系の展示を見に来たわけではなく、企画展であるミニチュアを見に来た。

日本の桃の節句を彩る雛人形に代表されるお人形さんに添えられるミニチュアの嫁入り道具を中心としたコレクションを持つ川内由美子氏のコレクション展。
江戸時代から発展してきたミニチュア製作の職人技をこれでもか!と見せつける展覧会だった。

とにかく館内は大きい作りでは無いのだけれども、なにぶん見せるものがミニチュアということで、かなりの点数を取り揃えて展示されていた。
スケール的に何分の1というのは明示されていなかったけど、8~10分の1以下のスケール感だと思うくらい小さな展示の数々だった。

拡大しても遜色のない模様の作り込みと貝合せの図画

日本の文化において、平和な世の中が生む余暇を原動力として花開いたと思われるこのミニチュアへの飽くなき展望を、庶民でもある程度身近に感じ取れる豪勢な一品として『嫁入り道具』を選んでいるところもよかった。
吉祥を示す模様を細かく、それでいて完膚なきまでに描写している様は、作ってる人の職人技もそうだけど、当時から面白い仕事としてやっていたのかなぁ。と思ったりして(例としてフィギュアの彩色師ような)。

嫁入り道具としてもたせる図書入れと図書もこの通り

ミニチュアの箪笥や棚を作り上げる技術もすごいが、やはり彩色の箇所でどうやってこの小さな面にここまで微細な柄を寸分互いもなく書き込めるんだ……。と感心しきり。
当時からそれ専門の筆や、それを製作する環境が整っていたということは日常で使用するものとしての製造業とはまた別に娯楽やコレクション商品のための製造業もきちんと機能していた証左というのがいやはや現状の日本のサブカル文化と被って見えて笑ってしまった。

ギヤマン切子の調度品もこの通りの小ささ

また漆塗りとそれを彩る金彩色だけでなく、この画像のようにガラス細工の細かいものの再現や、棚の扉の蝶番の装飾の加工などもミニチュアに合わせて簡素化はされつつもできるだけ再現されるような職人の技術の粋をみることが出来た。
ギヤマンの切子なども精緻!と思ったが、自分が一番すごいと感じたのは、上の画像の右端にある火鉢の上にかける網の表現だった。
モノクルで拡大して見ても規則的にねじり組まれた金網は縦軸横軸の狂いなく編み上げられていて、この技術をこのサイズでやるの相当の凝り性だろ……。現代だったら鉄道のジオラマ模型とかでなんか一時代築いてそうだな。と思ってしまった。
この当時の技術者が現代を切り取ったミニチュアを作ったらどんなに面白いのだろう。見てみたい。

またコレクション用途の強い嫁入り道具に限らず、おもちゃとしてのミニチュアの紹介もあり、こちらは庶民の生活を切り取ったミニチュアを展示していた。
こちらは江戸時代末期から明治、大正、昭和と近現代に連なるものとして展示が置かれていた。

籠売り、花売りなど行商のミニチュア


大正の果物屋さん、なんとバナナがおいてある意外!

ミニチュアという現代でも蒐集の人気が衰えない物品を江戸時代のものから蒐集してますが!みたいな強いオタクのコレクションな展示でとても楽しくて面白く見れた。
特に今回はモノクルを持っていくぞ!と息巻いていた作品群だったのでじっくりみることが出来て良かった。
蒐集の世界はやっぱ触りだけ見てても奥深いな。という展示でした。

企画展を見終えたあとは企業博物館としての『紅』を取り扱った常設展になる。こちらも小さな展示ながらも日本の化粧という事柄を集中して展示していて見応えバッチリ。

古来から染料として重宝された紅花の栽培、顔料の抽出、そして流通までを一通り紹介し、色が生み出す経済規模の大きさにびっくり。
さすが重量あたりのお値段が金=紅と言われるだけある。
現在でもこの伊勢半では紅が販売されているところも企業としての意地を感じるところとして非常にいい活動だと思った。

文明開化までの日本人の化粧お歯黒、おしろいの紹介もそこそこに美的感覚の変遷を取り上げ、明治、大正、昭和、平成に連なる口紅や化粧水の展示は化粧をしたこと無い俺にはちんぷんかんぷんではあったものの、当時から女性の美に対する憧れというのは変わらないものだと感じた。

化粧水を通してみる、デザインの変遷も面白い

またたまたま時間が合って見れたのだが、日本古来からの紅花を抽出して採集する顔料の紅は乾燥すると玉虫色になり、またそれを水に溶くと柔らかな紅色になるというものを見れた。
販売方法として紅を入れた漆塗りの専用容器から消費者の持ち込んだ陶器に分量の薄塗りにして売っていたようで、その消費者が乾燥させたものを使う。という行程を伊勢半の販売員さんがレクチャーしていた。
顔料なのでお肌に合わせて濃淡を調整し、当時の人はこれをさしていたようである。

お化粧という自分にはやったこともない興味をあまり持ったことの無い展示ではあったが、民俗学的な視点からして面白い展示であった。

以上。