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【水族館】姫路市立水族館

2024年9月22日

例年の出張仕事にかこつけて姫路の観光地を潰すの癖になってるのかもしれん。というわけで仕事前に気になっていた水族館を訪問。

まず市立というところでなかなかに期待感は低め。
駅の向こう側には市立の動物園もあるということも有り地方自治体としてはそれなりに力の入れようだなぁ~とは思ったり思わなかったり。

結果としてはコンパクトな水族館にぎゅっと詰まった非常に濃厚な施設であった。
関東圏にある水族館と比較してレクリエーション施設としては弱いが、それ以上に公設の水族館としてキッチリ仕事できる!っていうのがよく見える水族館だった。

まずはモノレールがお出迎え

なんでモノレール?というところからスタートするこの水族館であるが、高度経済成長期に行われた姫路大博覧会の跡地利用として開かれた水族館であり、その博覧会時に敷設されたモノレールを平成の改修時に市民交流の場として保存する設備を整えた。ということらしい。
もうこの沿革からして、かなりの公的設備パワーw
ちなみにこのモノレールの上には市民交流館が置かれていて確かにこれは市民サービスの箱物だ~。と思った。

館の構成は平成に大改修が行われ、新館と本館の二棟建て。
そこで播磨の里の水辺を紹介する新館、そして1966年から続く本館では播磨の海を紹介、という構成。

まずは入口にほど近い播磨の水辺の紹介を見て回る。
最初に紹介されるのが、田んぼ、ため池の水辺の生態系。兵庫はため池の数が実は日本で一番。2万を超えるため池の生態系はかなり身近な水辺と言っても過言では無いであろう。
なので新館では紹介されるものが淡水域の生物に振り切っている。すごい。
水族館といえば、海の近くで、海の生き物を。という定石ではあるがそれを一切気にしない。

うなぎ!
オオサンショウウオ!

ここまで振り切って里山の水田と、渓流、ため池の紹介されるのはなかなかに新鮮。
この播磨の里野の淡水生物というと、水田などを支える生き物も魚類だけではない。ミズスマシ、ゲンゴロウ、ミズカマキリ、タガメ、ヤゴといった水田でみられる昆虫種なども飼育繁殖し、展示されていた。

ここまでゲンゴロウをじっくり見れるとは
タガメ

その繁殖手法や、生態についても事細かく紹介され、タガメの産卵と孵化の動画は集合体恐怖症の人には見せられないくらい微細に見せられていた。

また、希少種の保護繁殖にもかなりの力を入れており、ナゴヤダルマガエルの繁殖においても一定の研究成果をもっているようであった。

日本初。

淡水魚の保護にもこれまた力が入っており、タナゴ類の紹介水槽もかなりの数を取り揃えていて、こりゃまたすごいと舌を巻いてしまった。
ともすれば地味。と一蹴されるような魚種でもこうやってきちんと繁殖し展示をするというのは、私設の水族館だとなかなか展示にまで昇華しないよなぁ。と。
そういったところに公立というところの生真面目さが垣間見える播磨の里の展示であった。

イチモンジタナゴ

続いては本館の播磨の里海ゾーンへ。
ここでは瀬戸内海でみられる生物種を中心に海の魚を紹介。
エース展示として、ウミガメの飼育に力を入れており、ウミガメ水槽はかなりのスペースをとって展示されていた。

ウミガメ水槽、アカウミガメ、アオウミガメがいる

設備自体のふるさは感じさせつつも、水族館らしい展示が並ぶ。とはいえやはり教育特化型なのか自分が目についたのは、多くの骨格標本と、剥製標本だった。

剥製が壁に並ぶ。博物館と言っても過言ではない
スナメリの骨格標本
液浸標本 こちらはサンショウウオ類

このようにかなりのスペースを使い標本類の展示も行っているのは非常に学術方面へのアクセスも非常に良いのでは。
と思っていたのだが季刊の水族館の研究報告が非常に綺麗にまとまっており、これはすごい。となった。
いまこの記事を書いている途中なのだが、手に取っておけばよかったと後悔しているところ。
こういうところは、純粋に観光ではない訪問の悩ましいところである。

さらにウミガメだけでなく、淡水性のカメについても調査研究に力を入れている展示もあり産卵場所を管理している力の入れように、市井の研究を感じてしまった。

どの個体がどれだけ卵を生むか、
日本産カメと外来種カメの産卵傾向の違いなどを研究している
御長寿自慢。50年近くというのはすごい。

水族館というもののイメージとして展示の手法として最近は【水塊】という観念があるのだが、それを感じない、研究、教育の場としての水族館を感じた。まさに私設の水族館とは対となる今となっては貴重な水族館だと感じた。とはいえ水族館オタクというわけではないので、全国にはまだまだこういう水族館があるのかもしれない。

でも久しぶりにこういった観察、飼育、繁殖といった形が目に見える状態の展示をみられて非常に楽しかった。
機会があればもう一度いって、季刊の研究報告を入手したいところ。

以上。