第156回簿記検定を解いてみて(2級編)

ついさっき解き終わったので前回に引き続き、2級編です。

全体
やや難化した印象です。明らかに「難しい!解けない!」という感じではなく、所々分からない問題が散りばめられていたという印象です。おまけにボリュームが結構あったので、本試験で直面すると普段よりも難しく感じると思います。
ただ、平常心を取り戻した今の状態で落ち着いてもう一度見てみてください。意外と解けると思いますし勉強材料としても良い問題だと思うので
これから2級を目指される方も1度は解いておきたい問題です。

第1問
標準的な難易度だったと思います。
1問目の手形の不渡りは、延滞利息や諸費用をすべて含めて「不渡手形」勘定で処理します。
引っ掛かるパターンとしては延滞利息を「支払利息」で処理をしたりということが考えられると思いますが、不渡りを起こしているのは得意先です。本来払うべき相手は得意先なのでこの分も請求することができます。
自分は悪くないのに費用を計上しないといけないのはさすがに理不尽だろって思えば引っ掛からずに済むかなって思います。
2問目は大口顧客による支払免除です。「大口顧客」というのがポイントですね。要はたくさん買ったからオマケするよっていうことです。割戻に該当するため、「仕入」勘定から直接控除します。
割引と混同すると思いますが、割引は期日より早くお金支払ったから安くしとくよっていう意味合いです。早く支払ったらその分「利息」が浮くよねっていう考えになります。訳あり商品だったから引いてくれる値引や、商品を沢山買ったからまけてくれる割戻といったものとは明らかに性質が違うんです。
利息分を「仕入」・「売上」からは引くわけにはいかないので「仕入割引」・「売上割引」という独立した勘定で処理をするんですね。
値引・割戻・割引。これを機に再度整理しておきましょう。


ただ、普通にこんがらがって難しかったと思うので、本試験では2問目は落としても仕方ないかなって思います。
あとは標準的な問題だったので、できれば4問。最低でも3問は確保したいところです。2問以下になるとしんどいです。

第2問
えげつないボリュームですね…
難易度としては標準ですが、処理が多いため解答に時間がかかり、点数としては伸びにくいと思います。
本試験ではとりあえずいったん飛ばして、最後に残り時間で拾っていくという戦略が良いと思います。
問1の勘定記入は落ち着いて素直に解いていけばある程度はいけると思います。満期保有目的債券のF債券は打歩発行という点に注意。その他有価証券は取得・売却の処理はなんとか合わせたい。期末の時価評価はしくじっても仕方ないかなって思います。
問2も考慮すべき点が多かったです。どちらか片方に照準合わせてそれが当たればオッケーかなって思います。個人的には投資有価証券売却損益のほうが合わせやすいと思います。
問3は簡単です。確実に取りましょう。


しかし、2級の第2問は何が出るか分からなくなりましたね…
昔は特殊仕訳帳(※結構前に試験範囲外に)か伝票会計かのどちらかしか出なかったので、よくヤマを張ってました。
その定説が覆されたのが、忘れもしない自分が受験した第126回でした。特殊仕訳帳が直近2回連続で出ていたので、各予備校は伝票会計にヤマを張りまくりました。
そしたら、まさかの特殊商品売買でした…しかも当時からしたら結構えげつない難易度だったと思います。
解答速報を出した予備校や受験者からは大ブーイングでした。(合格率も20%程度まで下がりました。)
話がそれちゃいましたが、パターン化できなくなった今は過去問に依存しない学習が大事ということだと思います。
特に第2問は毎回新問が出ている印象です。そうなると、自分が持っている基礎力で対応するしかなくなります。これは日頃の問題演習でしか培われません。
高得点を取る必要はありません。合格に必要な点数を取って逃げ切りましょう。
今回なら6割取れてたらいいんじゃないかなって思います。

第3問
2級の鬼門。連結会計からの出題でした。
ボリューム・難易度ともに標準的だと思います。
しかも作成するのはB/Sのみで、税効果の考慮も不要でしたので比較的取りかかりやすいのではと思います。
P社決算整理の支払リース料は「毎年」支払っているという点に注意です。支払リース料に計上されている金額は、前期繰延分も入っているということですね。12ではなくて18で割って月割計上する点に注意です。
連結修正仕訳では、商品販売はダウン・ストリーム、土地売却はアップ・ストリームになっていることに注意です。アップ・ストリームでは非支配株主持分の修正も忘れずに。
ただ、S社の利益剰余金の額の算定が難しかったかなと思います。
そのため、利益剰余金と非支配株主持分は落としても仕方ないかなと思います。
それでも資産の部、負債の部は素直なところが多かったので点数は積めると思います。7割はとりたいところです。
連結会計は苦手にしている人も多いですね。そのため連結会計の時点で捨てた人もいるかもしれません。
ただ、繰り返しになりますが今回の内容は基礎的なものが多かったです。
今回の本試験ではここで一番大きく差がついたのではないかなと思います。

第4問
標準的な難易度でした。過去問でもよくあるタイプの問題ですね。
棚卸資産のうち燃料は間接材料になるため、仕掛品勘定の直接材料費に含まれないことに注意です。
直接労務費は直接工の直接作業時間部分のみが対象です。製造間接費は素直に配賦額を入れます。
原価差異計算にあたって、間接費の実際発生額を正しく計算できたかが分かれ目になりそう。借方差異なので売上原価に加算です。
工業簿記を得点源にしている人ならここは是非満点を。そうでなくても8割は取りたいところでした。
商業簿記が何出るかわからず得点しにくい現在の試験では、比較的出題形式が落ち着いている工業簿記を得点源にする方が良いです。
ただ、工業簿記は得手不得手の差が激しいですし、1ヶ所ミスると芋づる式で間違えることも多いので、最初は結果が出ないと思います。
問題演習を繰り返し、とにかく勘定連絡図をイメージすることが大事です。
「いつも心に勘定連絡図を」という某予備校講師の名言があります。問題解く際は常に意識しましょう。

第5問
難易度としては標準ですが2級では初めてとなる会話形式の出題でした。社長と経理部長が直接原価計算による利益計画のお話をしています。
ア・イの選択問題は基本です。これは落とせません。それに伴う①②も必ず正解しないといけません。
③⑤は直接原価計算による営業利益です。固定費は生産量・販売量に関わらず全額を計上するということに注意です。
④も基本的な内容です。
⑥ができない人が多かったかもしれません。直接原価計算の中でも特に苦手にしている人が多い固定費調整です。
直接原価計算では固定費は全額費用計上されます。それに対して全部原価計算では販売分のみが固定費計上されます。つまり、在庫が残ると固定費は費用計上されず繰り越されてしまうため、その分利益が大きくなります。
今回の場合ですと、5,000kg生産して1,000kgが在庫として残ったため
固定加工費840,000円×1,000kg/5,000kg=168,000円が翌月に繰り越されるため、全部原価計算のほうが168,000円利益が大きくなります。
よって、⑤+168,000円の396,000円が⑥の答えになります。
とはいえ、ひねりも少ない素直な問題なので出題形式の違いによる戸惑いがあっても8割は取りたい内容だと思います。

ここまでで
第1問は最低3問:12点
第2問はなんとか6割:12点
第3問は7割取ろう:14点
第4問は8割を:16点
第5問も8割を:16点
合計:70点
というのが合格の目標になると思います。
仕訳もっとできたよ!っていう人ならその分アドバンテージになりますし
工業簿記そんなに取れねえよ!っていう人なら商業簿記で補うなどなど…
いろいろな戦い方があると思いますので
自分なりの点数の取り方の戦略を確立するのも大切だと思います。
3級だと大問ごとに配点の差が結構大きいので、配点の大きい第3問第5問を頑張ろうとなりますが
2級は全部各20点ですからね。そのくせ大問ごとのボリューム感が違うので効率よく点数を重ねていくという考え方が3級以上に大切です。

2級の合格発表が各地で行われていますね。
速報値によると合格率は17%と非常に厳しいものになりました。
合格された方はおめでとうございます!!合格率が低い回で合格したという自信もついているかと思います!
1級を目指すもよし。税理士試験を目指すもよし。2級に合格すると色々見えてきます。
今回残念だった方は是非次回に向けて再度頑張っていただければなと思います。大切なのは基礎を固めて反復演習することです。次で勝ち取りましょう!

ちなみに自分は67分で解答し、96点でした。
第3問でポカミスして4点落としました…偉そうなこと言ってますがこんなもんです…
もっと精進します…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?