第156回簿記検定を解いてみて(1級編)

2級から立て続けに解いたので集中力が途切れ途切れになっていますが、張り切って解いていきました。
2級までは割と人に教える機会が多いのである程度知識は更新していっってますが、1級は最近あまり使うことが無くて疎かになっていたので
久しぶりに知識を使う良い機会でした。

商業簿記
易しかったと思います。
まず第1問の貸借対照表(純資産の部のみ)の作成は、問題集にあるような基本的な内容ばかりだったので満点を狙える箇所だと思います。
強いて言うなら7番目の自己株式処分差損は資本金・資本準備金から減らすっていう指示を理解できたかですかね。自分はミスりました。反省してます。
第2問も標準的です。P社から仕入れた商品を広告宣伝用に消費する処理がちょっと難しかったかなと思います。
P社利益が乗っかった分でS社は広告宣伝費が計上されちゃってるので、利益分を消去できたかがポイントです。
評価差額の実現も、昔は応用論点で出来なくても仕方ないよね~とは言われていましたが
最近は割と出題実績が積まれているので、そろそろできないとマズいのかなという印象です。
あとは「負ののれん発生益」の金額が予備校ごとに解答が割れていますね。大原は260,000円(別解として200,000円)、TAC・ネットスクールは200,000円になっています。自分は200,000円だと思います。

割とボリュームが多かったりすることが多い商業簿記ですが、今回は落ち着いているなという印象です。
合格者レベルなら素点で20点以上を取ってくると思います。
じゃあ逆傾斜か?とは思いますが、周りの受験者の温度感を見ると逆傾斜がかかるほどではないかなと感じています。よって、概ね自己採点通りの点数で落ち着くのではないかと予想しています。
やはり「みんなができるところを確実に取る」というのが合格への近道です。当たり前のことを言ってるかと思いますが非常に大事な考え方です。
相対試験だと周りに差をつけるために難しい内容や応用の論点に手を出す人が多いですが、ナンセンスだなと思います。
どうせみんなできないなら没問になるのがオチです。そんなところに高い配点は来ません。
「広げるな。繰り返せ。」と、受験生によく言います。応用問題なんかをやるよりも基礎的な箇所を確実に解ける方がコスパがいいからです。
偉そうなことを言ってますが、自分の素点は19点でした。第1問が響きました。ちゃんと復習します。

会計学
易しかったと思います。
第1問の理論穴埋めは埋めにくいなっていう印象です。頑張って3つは合わせたいです。
第2問の有価証券(保有目的の変更)は処理が多いですが、ひとつひとつはそんなに難しくないですし求められているのはB/S項目の一部なので、いちいち仕訳を起こさず必要な金額だけを抜き出して集計できるかどうかがポイントです。
引っ掛かりやすいのはC社社債が当期首取得なので、発行日から満期日までの5年ではなく、残存年数の3年で処理することと
国債は売り建てているので、下落したらプラスになり、繰延ヘッジ損益は貸方残高になるという点ですかね。
あと、税効果会計を忘れずに!
内容としては大したことないのですが、文章が多かったり商業簿記解いてからだと集中力が落ちちゃって問題文の内容を見落としがちになるんですよね。要注意です。
第3問の理論は計算をやっていれば分かるような内容でした。これは満点取っちゃいましょう。

第2問でケアレスミスせずに解けたかどうかが分け目かなという印象です。
合格者レベルなら商業簿記同様、素点で20点以上を取ってくると思います。
ただ、第1問の理論が書けてない人や、第2問の処理でのケアレスミスが目立って点数が伸びない人もそれなりに多そうという印象から
傾斜・逆傾斜はかからず、概ね自己採点通りの点数になるのではないかと予想しています。
ちなみに自分は20点でした。第2問で税効果考慮し忘れました。反省します。

工業簿記
標準的な難易度だったと思います。
第1問の理論は選択問題でしたし、普段からちゃんと原価計算基準に目を通していれば解答できるかなと思います。
第2問・第3問はともに費目別の計算でした。出来不出来がはっきり分かれたところだと思います。
第2問は材料費会計で材料副費にやや重きが置かれていました。材料費として集計の対象にしているのは内部材料副費のみなので、材料副費をちゃんと内部・外部に分類できたかがポイントでした。
第3問は労務費会計でした。「就業時間」を聞かれたところからちょっと理論も交えているのかなと思いました。ポイントは休憩時間を含まないという点でしょうか。
いずれの問題も、問題文の意味が正しく理解できたかどうかだと思います。

費目別計算は各予備校でも答練で割としっかりと出題されていますし、今回の本試験予想でも割と上位予想に挙げているところが多かったです。費目別が好きな試験委員だったのかな?
1級になってくると試験委員は誰か、その人が専門にされている分野は何かということから、予備校は直前の答練を作ったり予想問題を立てたりします。
受験にあたっては試験委員が誰かということを特段意識する必要はないですが、直前期の予備校の答練や予想問題を通じて試験委員対策ができるようにしていたりするので、そのあたりは一層力を入れて問題演習に取り掛かれば良いかなと思います。
というわけなので、費目別の問題対策がちゃんとできていて、なおかつ問題文の意味が正しく理解できれば高得点が狙える問題だったと思いますが
実際はそこまで簡単ではなかったという印象ですので、あまり点数は伸びないのではないかと思っています。
素点としては6割の15点とれていればいいんじゃないかなって思います。
ただ、周りを見れば「そこまで難しくなかった」という感想を持っている方が多いですので、もしかすると実際はもう少し高い点数を取っている方が多いかもしれません。
そのため、傾斜はかかりませんし、逆傾斜が掛かるほど正答率が高いとも思えないので、概ね自己採点通りの点数になるのではないかと予想しています。
かくいう自分は11点しか取れませんでした。お恥ずかしい。費目別をかなり疎かにした結果です。初心にかえっていちから勉強します。

原価計算
非常に易しかったです。
かなり真面目に勉強されてたり、管理会計を得意にされている方は「勉強時間返せ!」って怒るんじゃないかっていうレベルでした。
内容としてはABC(活動基準原価計算)でした。
問1・問3の計算問題は問題文の指示に従って素直に計算・集計するだけです。ぶっちゃけ2級の工業簿記かじっている人でも解けると思います。それぐらいの難易度です。
問2の用語の語群選択問題は少し悩んだかもしれません。
①はいきなり解けないので、もう少し問題文を読み進めます。②も1回目読んだだけでは分からないです。その先を読むと「目標売上高営業利益率を達成する所要利益を控除して③が設定される」とあります。
何かから利益が引かれて、何かが設定されるんです。
利益って、収益(売上)から原価を差し引いて求められますね。
式にすると収益-原価=利益です。これを変形させると
収益-利益=原価になります。このアプローチ方法のことを①~③で言っています。
要は、販売価格を決める→目標利益を設定する→差額から目標原価が決まるというプロセスですので、③は「目標原価」です。
②は「振替価格」か「目標価格」の2択で迷うかと思いますが、普通に考えたら振替価格は違うかなと思って「目標価格」を選択してほしかったです。
①は、②③を踏まえて「マーケット・ベース・アプローチ」になります。
先に販売価格が決まって、それベースで考えるという意味合いからわかると思います。
⑤に入るのは「価値連鎖」です。カタカナの「バリュー・チェーン」の方が一般的かもしれません。どちらかというと経営学の用語ですが、ビジネスでも使うことがある言葉ですし知っておきましょうという意味合いでしょうか。
ただ、④でVEのことを触れていて、VEの定義から考えたら、⑤は「ライフサイクル」が入っても違和感はないですね。現に解答速報を出している予備校間でも⑤の答えは割れています。TACは「ライフサイクル」、大原・ネットスクールは「価値連鎖」になっています。自分は大原・ネットスクールが正しいと思います。

問2の⑤がちょっと難しいかなぁというレベルで、あとは何ら問題がないレベルでした。
合格者レベルであれば素点で23~25点を取ってくると思います。
用語は仕方ないにしても、計算問題でのミスは許されません。
周りの正答率が高いことも踏まえると逆傾斜が掛かる可能性がありそうです。1問でも間違えていれば、自己採点よりも低い点数になるのではないかと予想しています。
ちなみに自分は25点でした。

合格ライン
ここまでで自分の点数を見ると
商:19 会:20 工:11 原:25の合計75点です。
ブランクがある自分でもこれぐらい取れました。
試験の難易度と、6月試験が中止になって勉強期間が長かったことを考えると平均点は間違いなく上がるため、受験生の上位2割程度にいる人ならこれぐらいの点数は取るのではないかと思います。
ただ、ご存じの通り1級は相対試験です。税理士試験の受験資格にもなっていることなども考えると合格者の質を一定程度担保しなければなりません。
そのため、今回も合格率は13%前後で絞ってくると考えられますので、70点台は安心できないのではないかと思います。少なくとも傾斜が掛かることはなさそうです。
よって、ボーダーは素点で75点、合格確実は80点と予想します。

しかし、ここまで回によって難易度にばらつきがあると受験生はたまったもんじゃないですね。
難しくて傾斜はまだ良いとして、易しくて逆傾斜は本当にかわいそうだなって思います。
易しい問題を出した作問者の責任だろ!って言いたくなります。
その点まだ日商簿記1級と同程度の難易度である全経簿記上級のほうが親切だと思います。こちらは合格率2割程度になることも多いですし、そこまで奇問・難問も出ない落ち着いた内容になっています。
税理士試験の受験資格が必要な方は、そちらも検討されても良いかと思います。全経簿記は次回は2月にあります。
日商簿記1級も次回に限り2月試験が実施されますが、来年8月に実施される税理士試験の受験資格を得る最後のチャンスになります。6月試験では簿記の合格発表日までに税理士試験の受験申請期間が終了するので間に合いません。
チャンスは1回でも多い方が良いですから、是非日商と全経のダブル受験を検討してみてください。試験日も2週連続(先に全経、翌週に日商)なので知識も定着しているまま連続受験できると思います。

そして自分は明らかに1級知識の抜け漏れがあるということを痛感しました…現状に満足せずにちゃんと知識の向上に努めていきたいと思います。
やっぱり簿記は解いていて楽しいですし沢山の人にその魅力が伝わればいいなって思って教えていますから。自分のためにも頑張ります。

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