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内部被ばくと、減らない土壌汚染 〜南相馬避難・20ミリシーベルト撤回訴訟〜

 〝年間被ばく20ミリシーベルト〟という、通常より20倍も高い基準を撤回させようと闘ってきた「南相馬避難・20ミリシーベルト撤回訴訟」の原告団たち。
 先日の記事では、不当判決が出たことを、お伝えした。

 今回の記事では、原告たちが、この6年間、支援者らとともに明らかにしてきた、内部被ばく調査と、環境汚染の実態を紹介したい。

■空間線量が下がっても、土壌汚染は残る

 メディアでは、「放射線量は下がり、福島は復興した」かのように伝えられることが多い。
しかし、「目に見えない汚染は続いている」というのが、原告たちの実感だ。
 原告のうち何名かも参加している「ふくいち周辺環境モニタリングプロジェクト」では、2012年から、原告らが住む南相馬の山間部(8行政区)を、5巡も測定してきた。(土壌汚染の測定は2016年から)
 
 下記は、同プロジェクトが作成した表だ。
「図1」は、原告らが住む8行政区のうち、片倉・馬場・押釜の3行政区の空間線量を、1巡目から3巡目まで比較したもの。

「図2」は、同じ3つの行政区の3巡目と4巡目の測定結果について、空間線量と土壌汚染を比較したものだ。

 これらを見ると、たしかに年月を追うごとに空間線量は下がってきているが、土壌汚染については、それほど低下していないことがわかる。

 それ以上に驚くのは、現在もなお、このエリアのほとんどが、本来であれば立入が規制される〝放射線管理区域〟に相当していることだ。

空間線量・土壌汚染比較

〈ふくいち周辺環境モニタリングプロジェクト作成:「住民証言集」より抜粋〉

■内部被ばくの実態も明らかに
 

 また、土壌が汚染されていると、どうしても内部被ばくは避けられないのだ、ということを原告自らが証明している。

 原告らは、この数年、「市民放射能監視センター(ちくりん舎)」と共に尿中セシウムの調査をしてきた。その結果が下記の表。
微量ではあるが、原告らの尿からは、セシウムが検出されているのだ。


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 ちなみに、比較して測定をしている西日本在住者(福岡・兵庫)の尿中セシウムは、不検出。(※詳しくは、ちくりん舎のHPへ)

 つまり、「汚染がある場所住み続けることのリスクは少なからずある」ということを、原告みずからが証明している。

■掃除機のホコリから、指定廃棄物を超える放射性セシウムを検出

 また、尿検査のほか、家庭のハウスダスト(掃除機のホコリ)からも、政府が「厳重な管理が必要」だと定めている〝指定廃棄物〟8000ベクレル/㎏を超える放射性セシウムが検出された。

 この調査は、ちくりん舎が、福島県内外の153か所からハウスダストを集め、紙パックごとゲルマニウム半導体で測定。このうち、人が住んでいる家屋で、〝指定廃棄物(8000Bq/kg)以上の場所が 5 か所あり、その最高値は 29,000Bq/kg で、原告が住む南相馬市原町区だった。
 ちなみに、大阪以西ではND(検出限界値以下)が多い。

 ハウスダストの測定結果とプレスリリースはこちら。

 また、ハウスダストから検出された放射性セシウムのうち、約75%が、いわゆる〝セシウムボール〟と呼ばれる、〝不溶性放射性セシウム〟だったことが、ちくりん舎の調べでわかった。

 〝不溶性放射性セシウム〟は、福島第一原発事故後に初めて存在が明らかになった。以前は、「セシウムは水に溶けやすいので、体内に取り込んでも、すぐに排出される」として、被ばく量は少ないとされていたのだ。
 しかし、不溶性セシウムの場合は、「水に溶けにくいため、臓器に長くとどまって放射線を発し続ける。そのため、被ばく量が高くなる可能性がある」と専門家らも指摘している。

 「自宅のハウスダストから、2760ベクレル/㎏が出た」という南相馬避難・20ミリシーベルト撤回訴訟の原告団長の小澤洋一さんは、こう話す。

「細かいチリを吸い込むと、内部被ばくする可能性もあると思います。誰もが、健康に〝ただちに影響〟があるわけではありませんが、ここに住むのなら〈リスクがある〉ということを知って、注意する必要があります」

 ひとたび原発事故が起これば、取り返しがつかない汚染が広がってしまう。二度と同じ過ちを犯さないためにも、福島のありのままの姿を、裁判で訴え続けるつもりだ。

ハウスダストのマップはこちらから見られます。


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