アルコール依存症の女 素直に

見知らぬ番号からの着信。
しかし、期待を持って応答した。

「こちら○○新聞社ですが」

書類選考通過の知らせと、筆記・面接試験の日程案内だった。
ひとまず一次選考を通過できたことに安堵した。
が、面接まで2週間ほどしか時間がない。
仕事をしながら筆記試験の勉強と面接の準備はできるのか—。やるしかない。
本屋で時事問題集を買い、通勤中に読み覚えた。休日は朝から晩まで問題集を解いた。
面接の練習はカラオケボックスにこもり、ひたすら話し続けた。

当日の朝。早めに起床し、しっかりと朝ごはんを食べた。控えめにコーヒーを飲み、コンビニで朝刊とカイロを買った。2月中旬の寒い日だった。

面接会場には早く着き過ぎてしまい、近くにあったベンチで出社する人々を眺めていた。
私は極度に緊張を感じるタイプで、面接前は手足が震え上手く応答できないこともある。
そのため、今回は病院で処方してもらっている安定剤を持参した。集合時間前に3錠ほど飲んだ。

集合時間になると係りの女性が出迎えてくれた。私以外にも5人ほど受験予定だった。
会議室に案内され、採用された旨の話を聞きいよいよ試験が始まる。
最初は作文だった。書くことは得意だが、久しく長文を書いていなかったので自信はなし。
時事問題は想像していたより簡単だった。

そして、最後に面接。
4対1という設定で私は完全ビビり上がってしまった。
この時点で緊張は頂点に達し、何を聞かれたかどう答えたかほとんど覚えていない。
ただ、「どうしてうちの新聞社に?」との問いには

「○○記者が書かれたアルコール依存症の連載に励まされたからです。私の父はアルコール依存症で亡くなりました。○○さんのような人を救う素敵な記者がいる御社で私も働きたいと思ったからです」

と素直な気持ちをはっきり答えた。
この気持ちを伝えれただけでも、ここに来た甲斐はあった。別に不採用でもいい。


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