アルコール依存性の女 台湾中編

台湾人はあまりお酒を飲まないと前回書いたが、アルコール度数60度前後の非常に強い酒が存在する。高粱酒という無色透明の蒸留酒だ。
酒好きの私もさすがに60度の酒を試そうとは思わなかった。飲んだことのある知人は翌日下血したそうだ。
一般の台湾人は高粱酒を普段飲まないが、宴席や旧正月の親戚の集まりなんかでは飲むらしい。

台湾はホームレスが多いことが印象的だった。
小さい公園にも必ず複数のホームレスがいたし、ある駅の周りには「宿なしが集まる街」と呼ばれるほど大量のホームレスがいた。
そして、必ずといっていいほど彼らの側には高粱酒の瓶が転がっていた。
あぁ酒が彼らの人生をダメにしたんだなぁ。
そんなことを考えながら歩いた。

滞在中は日本へ帰国するつもりはなかった。それほど会いたいと思う人もおらず、金銭的にも余裕がなかったのだ。
しかし往復のチケットが安く取れるとなり、急きょ帰国することになった。
私の少ない幾人かの友達に帰国を知らせるとみな喜んで会おうと言ってくれた。

帰国便は深夜出発だった。
それまで酒は飲んでいたが、台湾ルールに従って大虎になることはなかった。
自宅最寄駅から空港までは高速バスに乗ったが、乗車前にコンビニで缶ビールを2缶買いバスの中で飲んだ。その瞬間、今まで我慢していた飲酒欲求が溢れ出した。空港に着いてから再びコンビニで缶ビールを買い飲んだ。飲み終えたらまた買いに行く。それを繰り返し、チェックイン時には相当酔っていた。
警備員に静止されることもなく、無事搭乗。
離陸し機内販売が始まると同時にビールを注文した。午前6時ぐらい到着間際の機内販売でもビールを頼み、座席周辺の台湾人は私を凝視していた。朝からビールを飲む女のような人種は台湾には存在しないらしい。
関西空港到着時には泥酔状態で、入国カードも上手く記入できないほどだった。
税関職員に「久しぶりの帰国で嬉しくて、ついついお酒飲みすぎちゃってこんなフニャフニャな字になっちゃって…」説明すると、笑顔で「大丈夫ですよ」と返してくれた。税関職員からすると私は不審者に当たらないようだ。

自宅に戻るなり、近所のスーパーで缶チューハイを数本買い飲んだ。
母とは元々折り合いが悪いが、酒が入ると何でも話せた。
久しぶりに母と近所の韓国料理屋へ晩ごはんを食べに行った。そこで私は生ビールとチャミスルを1本開けた。昨晩から連続で飲酒しているので、もう酩酊状態。
実はその後に友人と約束をしていた。
ある駅で夜9時に、ということは覚えており母とのごはんを切り上げ電車に乗った。
が、旅の疲れに酔いが手伝って車内で爆睡し、気付いたら全く知らない駅だった。
時刻は10時を過ぎており、LINEを見ると友人から「来ないから帰るね」と一言。

酒で友人との約束をすっぽかしたのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?