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天文宇宙検定にチャレンジした話④

2021年7月4日。天文宇宙検定当日。

千葉県在住だが、一番近い試験会場が東京・池袋であった。緊急事態宣言は解除された後、とはいえ、インド株の蔓延など心配のタネもあるし、子供たちは何度言ってもいろんなものにベタベタ触るので、電車で移動することはやめにした。車で池袋まで行って、試験を受けて、車で戻ってくることにした。

池袋駅近くのパーキングに車を止めて、長男の試験会場まで子供3人を連れて歩いた。普段、千葉県の片田舎で生活している子供たちは、都会の人の流れについていけない。汗だくになりながら、長女と次男の手を引き、なんとか試験会場にたどり着いた。

試験会場の東京電子専門学校は、それは立派なビルの中に、とても素敵なキャンパスで、田舎っぺの私たちは思わず”おぉー!”っとなった。

入り口のところで、試験会場まで子供を送って行ってもいいですか?と聞くと、マークシート記入までは保護者が立ち会えますよ、と親切に教えてくれた。会場に着くと、思いの外大人がたくさんいた。単独で受けに来ている人と、自分の息子娘と一緒に受験する保護者の方々。

なるほど。

小学生一人で試験を受けさせるのが不安だったら、一緒に受けちゃえってやつですね。うちはそもそも、主人は亡くなっていて私一人シングルマザーなわけなので、長女と次男のことを考えると、私も長男と一緒に受験、という選択肢はそもそもなかった。主人が生きていたらもしかしたら主人が一緒に受験していたかも知れないけれど、もうこれは仕方がない。初めての受験だが、保護者同伴ではなく、一人で頑張ってもらうしかない。

試験会場についてから、長男は思いの外落ち着いていた。私の方がソワソワと、

鉛筆大丈夫?
消しゴムもある?
時計の見方わかる?
トイレ行った?

と大きなお世話な声かけばかりしていた。
机に置かれた注意事項を読み上げようとすると、

”ママ、大丈夫だから。
わからなかったらちゃんと聞くから”

と、冷静に差し止められた。
なんだか急に、長男が頼もしく思えた。

長男を置いて、長女と次男と会場を後にした。その後3人で、お昼ご飯を買ったり、スイーツをかったり、池袋西武のデパ地下を堪能した。試験が終了する12:00に会場につくよう考えて行動していたのだが、11:50に長男から電話がかかってきた。

”ママ、もう終わったよ。
今どこにいるの?”

あれ?まだ12時じゃないのに!

”早く終わった人はもうでていいって言われたからでてきたよ”

なんとまぁ、冷静な。

慌てて長男を迎えに行った。

車に乗り込んできた彼は、なんとなく表情が違っていた。なんというか、ちょと自信に満ちているというか、ちょっとたくましくなったというか。試験どうだった?とこっちが聞く前に、色々と話してくれた。

”8歳の子がね、この後3級受けるんだって!
俺も次は3級受ける!”

いきなり次の目標設定ですか。試験は思いの外簡単だったらしく、試験時間を持て余してしまったのだとか。試験問題の表紙にたくさん宇宙関係の絵を描いて時間を潰していたらしい。本人曰く、4級は受かっているらしい。こればっかりは結果を見なければわからないが、手応えがあったのは何よりである。そして、自分より年下の子が、自分より上の検定を受けることを知って刺激を受けたようで、それが何よりの収穫であった。

長男が宇宙飛行士になる、って学校で言った時、仲の良い同級生はみんな笑ったそうです。でも長男は、笑われて悔しかったけど、笑われる筋合いはないと言っていた。私もそう思う。人の夢を馬鹿にする権利は誰にもない。長男は、自分は宇宙飛行士になれると信じているし、大好きな宇宙のことにも詳しくなっていった。でも、周りに宇宙に興味のある子がいなくて、誰とも宇宙の話をできないと嘆いていたのだが、この日、天文宇宙検定の会場で、彼は体感したんだと思う。自分以外にも、宇宙に興味を持って勉強している子供がいるということを。そして、年齢関係なく、勉強すればするだけ、上の級が狙えるということを。

思い切って一歩踏み出して、検定を受験してよかった。受験したからには受かってほしいけど、もし落ちたとしても、その経験も含めてとても貴重である。彼はまだ小学4年生。ここで失敗しても、何度もでもその失敗を乗り越えられるチャンスがある。むしろ、失敗して乗り越えるっていう経験ができた方が良いのかも知れない。だから、試験結果が合格だろうが不合格だろうがもうどっちでもいい。長男とともに、検定に向き合ったという経験こそが、今回得たかったものなのである。試験勉強を通じて成長し、試験会場にいた沢山の宇宙を目指す同志たちに色々刺激をもらった長男の横顔は、今までよりもちょっぴりカッコよく見えた。

続く

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