『スイミング』福島鉄平

眩しすぎて読めない

かわいくて優等生のマドカさんは、少し変わり者でどこか近寄りがたい存在。そんなマドカさんを、ほとんど話したことがないのに気にしてしまうオサムくん。「クラスとスイミングが一緒」それだけの2人だけど…!? 表題作「月・水・金はスイミング」ほか福島鉄平が少年誌で発表した4作品と描き下ろし漫画「マドカさんは知らない」を収録した短編集。
【収録作品】あんねちゃんたろう/月・水・金はスイミング/反省してカメダくん/きらわれもののマギル/マドカさんは知らない
福島鉄平短編集 スイミング (ヤングジャンプコミックス)


ジャンプで昔『サムライうさぎ』を連載してた人の短編集。1話目は時代劇かつ恋愛(夫婦)ものでけっこう異彩を放ってたけどだんだんバトル方向にシフトして気づいたら終わっていたイメージ。ジャンプの連載で主人公が妻帯者ってかなり珍しいんじゃないかしら。


今は「となりのヤングジャンプ」で『ボクらは魔法少年』というショタが魔法少女の格好して街の平和を守るというむちゃくちゃ倒錯的なweb連載をやっている。なんで?こんな尖ったフェチを。少年ジャンプを離れてから作者に一体何があったんだろう。


それはさておき、『スイミング』である。基本的に小・中学生男女の恋愛未満な甘酸っぱいお話が中心の短編集。これと同時に出た『アマリリス』が『ボクらは魔法少年』につながるような女装ショタの話が載ってたと思う。そのぶんこっちはいわゆる普通のボーイミーツガールものと言えるだろう。この漫画のAmazonレビュー覗いたら意外と評価高くてびっくりした。かなり青春真っ向勝負なストーリーなので、読む人によっては「こっぱずかしくて読めんわ」といった気持ちになるかもしれない。


短編集のタイトルの元になっている「月・水・金はスイミング」が一番良かった。旅館に置いてあったジャンプにこれが読み切りで載っていて、その時は「ジャンプ持ってこいジャンプを」って思ったけど、十年後くらいに読み返したくなってつい買ってしまった。ジャンプ読み切り界隈の中では名作に位置付けられてるらしい。


けっして派手な話じゃなく、中学生の日常のささいなシチュエーションをすくい上げて漫画にしているのが良い。話の展開よりも登場人物の心の動きを繊細に描写することに力を入れている感じ。

「同じスイミングクラブに通っている中学生男女が卒業の間際になって初めて言葉を交わす」っていう出来事自体はしょうもないけど、それをしょうもなく感じさせない。かつて自分の中にあったピュアな心を再び思い出させてくれるからだ。いや今もピュアだけどね。


俺は小学校の6年間スイミングクラブに通っていたけどバスの中で友達から『ボボボーボ・ボーボボ』を借りて読んでいたことくらいしか思い出がない。

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