『下弦の月』矢沢あい

小学生が頑張る話だった

父親が再婚し、新しい母とその連れ子との生活に馴染めない美月。渋谷のストリートでギターを爪弾くアダムという青い瞳の男性と出会い、強く惹かれた。彼にもう一度会いたい美月は…!? 時空を超えた魂の愛!
下弦の月 ―Last Quarter― 上 愛蔵版 (愛蔵版コミックス)


『NANA』の矢沢あいが描いたジュブナイルもの。小学生と近所のおばけ屋敷と幽霊と冒険。
少女漫画のわりに恋愛要素が薄く、小学生たちが頑張る話だったので面白く読めた。青春にオカルトが絡むともうそれだけで採点が甘くなる。


近所のボロい空き家に幽霊が現れて、それを小学生5年生の男女4人が成仏させようと奔走する。幽霊の正体は?なぜ幽霊になったのか?という謎を少しずつ解き明かしていく。


小学生の男女がなし崩し的にチームを組み、幽霊をなんとか助けようと動くのだが、小学生ゆえの行動の不自由さに苦しみ、それに負けじと体当たり精神でぶつかっていく姿に胸を打たれた。

①蛍ちゃん
メンバーの中で唯一幽霊が見えて話ができる女の子。特技のピアノが謎解きのきっかけになる。おっとりしててかわいい。お母さんはホステスで授業参観のときに派手な着物を着てくる。ちょっとかわいそう。


②紗絵ちゃん
蛍ちゃんのマイメン。眼鏡でおさげのおてんば委員長タイプ。行動力でみんなを引っ張る。終盤に高校生相手に説教するシーンが良かった。高校生のときに小学生5年生に説教されたらさすがに凹むと思う。


③杉崎哲
ムードメーカー担当のサッカー少年。医者の息子。この子自身はあまり謎解きに役立ってはいなかったけど、チームの緩衝材としていい仕事をしていた。植物状態の人に「お線香あげさせてください」と言って殴られた。かわいそう。


④三浦正輝
生意気だけど美少年。チームの頭脳を担当する。役者の息子で、演技とハッタリを武器に情報集めに貢献する。大物っぽいオーラあるけど年相応に背伸びした感じもあってかわいい。最後にめちゃくちゃ粋なことをして株を爆上げさせた。

小学生が幽霊を成仏させるために冒険する、というあらすじだけだと中学校の学生劇っぽくてつまんなそうだけど全然そんなことなくて、全体的に構成がしっかりしてるので映画っぽいなあと思った。結末から逆算して丁寧に話を進めている。


小学生視点だけじゃなくて、幽霊側の視点もあるのでそこまで子ども向けという訳でもなく、話もコンパクトにまとまっているので、名作だと思う。ポケベルが出てくることに時代を感じた。登場人物が基本みんな良い人なので安心して読める。いやなことや悲しいことから人間はどう立ち直っていくのかっていう道徳的なテーマ。最終的にハッピーエンドなので文句はない。


実写映画化もされているらしいけど、予告見た感じなんかヤバそうだった。外国人のキャラクターはちゃんと外国人が演じてほしい。


この作品に関しては漫画の絵が綺麗すぎるので、どうやっても実写は難しいと思う。

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