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未来へ続く、私たちの物語

真夜中に月を見ていると、背後から突然抱きしめられた。
ふわっと、彼の香りが漂ってくる。
安心できる温度。鼓動の音が幸せの音と重なり合う。
袖擦れ合うほどいつも私たちは同じ時間を過ごしている。
だけど、もうすぐそれも終わる。
お互いの就職が決まり、私は地元である北海道の札幌に残ることが決まっていて、彼は東京へ行ってしまう。

高校時代から、ずっと一緒だった私たち。一度別れたことはあったけれど、それでもまた縁がふたりを導いてくれて、今は穏やかな気持ちでお互いのことを想いあえる。
遠距離になることに、不安がまったくないと言われたら嘘になるけれど、ふたりならきっと乗り越えられると信じるしかない。

「明日はどこへ行きたい?」
「小樽に行きたい」
「好きだよな」

彼の甘い吐息がかかる。
小樽運河は私たちが始まった場所。素直に気持ちを伝え合った場所。
だから、私たちは何度だってあの場所から始められる。
私たちの未来へ続く物語を。



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#旅する日本語 #袖擦れ

いつか自分の書いたものを、本にするのが夢です。その夢を叶えるために、サポートを循環したり、大切な人に会いに行く交通費にさせていただきます。