心を満たす、優しさの味
富士山のすぐ近くの、静岡にある旅館。
テーブルの上に並んだ、これぞ日本人の朝食というメニューに、思わず喉鼓を鳴らした。
嫌なことがあったときは、ひとり旅に出ることにしている。
できれば、空気の美味しい場所。
そう思って、今回選んだのが富士山の近くだった。
豆腐とワカメの味噌汁。
焼き鮭に、大根おろしの添えられた卵焼き。
マグロとカンパチ、イカのお刺身。
アワビの踊り焼きは、オプションで追加したメニューだ。
他にも数種類の小鉢が並んでいて、どれから手をつけようか悩んでいると、スマホに彼からメッセージが届いていた。
『この間はごめん』
メッセージは一言だけ。
それでも、彼とは長い付き合いだ。反省しているのは、充分伝わってくる。
『今夜、いつものモンブラン買ってきてくれたら、許してあげる』
『ありがとう』
並んだ朝食に、スマホを向けてシャッターを押す。
その写真を彼に送信すると、卵焼きに口をつけた。
いつか自分の書いたものを、本にするのが夢です。その夢を叶えるために、サポートを循環したり、大切な人に会いに行く交通費にさせていただきます。