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映画「花束みたいな恋をした」を見て

今年初めての映画館。
休日には珍しく、早起きをして出かけた朝一番の映画館は満席だった。

(イラストレーターを目指す主人公に触発され、家に帰ってすぐに描いた絵)


物語は、有村架純演じる絹(キヌ)、菅田将暉演じる麦(ムギ)というあるカップルの5年間を描いたもの。2時間という短い時間の中で、2015年の出会いから2020年の現在まで、二人の日々を淡々と丁寧に描く。


まず、終電を逃した出会いの場面が好きだ。ICカードの残高が足りない麦と、トイレットペーパーを持って佇む絹は、どこにでもいる大学生。「あるきっかけ」から二人は意気投合し、深夜の居酒屋でお互いの共通点の多さに距離を縮める。

好きなものが同じであることの嬉しさ。音楽でも、小説でも、漫画でも何でもいい。好きな人と自分に共通点を見つけた時のなんとも言えない感動や、相手に合わせて少し背伸びしていたこと、自分自身の様々な感情や思い出が蘇ってくる。

時間が無限にあった大学生時代。面接に落ちてしんどくて泣いた就活。漫画の新刊を買い忘れるようになった社会人一年目。絹と麦の5年間を通して、あの頃の自分が鮮明に思い出されて、序盤からめちゃくちゃ泣けた。


好きなエンタメを通して繋がっていた二人の関係性も映画の中で少しずつ変化していく。好きなことを仕事にしたいと、あの頃から変わらない絹ちゃん。一方で、二人の未来のためにはお金がいると、夢だったイラストより定職を選び、大人になっていく麦くん。どちらもきっと間違いじゃない。

だからこそ、仕事が二人の時間を奪うと寂しく思う絹ちゃんの気持ちも、もう大学生じゃないんだからと呆れる麦くんの気持ちも、どちらにも共感してしまう。

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まるでドキュメンタリーのように二人を撮り続けているこの映画は、何か大きな出来事が起こるわけではない。だからこそ、映画に訪れた人たちは同じ時代を生きていた数年前の自分を重ねて、映画を見ながら色んなことを思うのだろう。

見終わった後、脚本家である坂元裕二(現在53歳)がどうやってこの物語を考えているのかと不思議に感じた。こうも生々しく現代の20代の日々を描けるものなのだろうかと。パンフレットを見ると、参考のためある特定の一人のinstagramを観察し続けていたと書かれていて驚いた。この物語が特別なものではなく、自然に自分の中に入ってくるのは、きっと私たちと同じように暮らしている人の日々が取り込まれているからなのだろう。


最後になりますが、終盤のファミレスのシーンは私の映画史(大して見てないですが…)に残るほど素敵でした。この場面だけでも、見る価値あり!です。

色んな人とこの映画について、あの頃見ていた音楽や映画や漫画について、語り合いたいなぁ。本当に素敵な映画だったので、レイトショーが再開したら一人で週末の夜に観に行きたいなと思っています。

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