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勝手にふるえてろ

普段表に出さないだけで、人にはだれでも「こじらせている」「歪んでいる」部分がある、と、おもう


「人のめんどくさい部分」「こじらせた部分」を、ヨシカの恋愛模様を通じてリアルに表現されててわわってなった


綿矢りかの「唯一無二の心理描写」を一気に浴びられる


二人の男性の間で揺れ動く女性の微妙な感情の動きを執拗に描いていく綿矢りさ

初恋の人と結婚に至る確率は1%程度という現実は、”わずか1%”と感じる一方で”1%もあるのか”とも取れる数字だとわたしは思う

そんな『初恋の人をいまだに想っている自分が好きだった』と感情を昂ぶらせる主人公・良香が『自分の直感だけを信じず、相手の直感を信じるのも大切かもしれない』という冷静な感情を身につけて、ひとつづつ大人になっていく



自意識

混沌

葛藤

綿矢さんの描く女性は、実像というよりも意識が塊となって人間の形をしているようにおもう

意識という粘土で作り上げられた人間像


まだ、こねくり創られたばかりで、少しでも触れるとぐにゃりと形を変えてしまいそう

でも時間を経て焼き物のようになって、
木槌で叩けばパリンと割れてしまうほど固まってしまっているようにもみえる

最初はまだ形の定まっていないものが、どんどん世界の深みに入っていくことで次第に固形化し、最後には破裂するような音を立てて自らを粉々に壊していく

自己崩壊

何度も何度も、作っては壊し、作っては壊しの繰り返し

その壊れるときの弾けっぷりが、爽快でもあり、笑いを誘い、哀しくもある


耳に心地よい音楽に浸っているような


言葉の響きは音の響きとなり、それらが体中に染み渡り、心地良さを演出してる

第一楽章、第二楽章とゆるやかに進行しながら、第三楽章で一変し、第四楽章で潔く綺麗におわってく


最終楽章はとても短く、最後の数ページ、或いは最後の数行、最後の一言、



だから、作品の結末後、想像させられる

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