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70億人との運命と巡り合わせ

世界には70億人近い人がいて、一生のうちにすれ違う人、知り合いになれる人、友達になれる人は、ほんの一握りだという。

いきなりだが、わたしは運命は信じるタチだ。そもそも来るもの拒まず去るもの追わずスタイルなわたしは、人に対してそこまで執着心がない。

それは家族でも親戚でも同じ。わたしの人生に必要なら必要な分だけ関わるだろうし、必要じゃないならその関わりは非常に短いものになると思っている。

だから、一度別れが来てもこの世界で生きている限り、そしてわたしの人生にその人が必要ならば、いつかどこかで会えるだろうと思うのだ。


それは芸術も作品も、同じだ。

2001年夏、わたしは映画館で衝撃的な作品と出会った。米アカデミー最優秀長編アニメーション賞を獲得した「千と千尋の神隠し」だった。

この映画が公開された当時、わたしは主人公の千尋と同い年で、妙な親近感を覚えた記憶がある。

映画を観るのは初めてではなかったはずなのに、今でもまだ強烈に、映画館で「千と千尋の神隠し」を見たことを覚えている。


それと同時に、ある一人の声優の名前が印象に残った。「入野自由」という人だ。スタジオジブリ好きな母がわたしに買ってくれた、大きなパンフレットの中に彼の名前があって、インタビューも掲載されていた。

年は経ったの5歳しか離れていなくて、でも彼の名はそこに堂々と書かれていた。

名前が読めなかった。だから次、わたしが彼の名前を見るまで「じゆう」と読んでいた。


次に彼の声に出会ったのは、はじめて彼の名前を見てからすでに十九年が経っていた。「ハイキュー!!」という、バレーボールのアニメで主人公と同じバレー部の先輩セッター役だった。

透き通った綺麗な声で、好きな声だった。彼の名前を見てすぐに思い出した。ハクだ。ハクがいた。ハクに会えた。


「千と千尋の神隠し」ではじめて彼の声を聞いてから十九年。この間わたしは中学生になり、高校に上がり、大学へ行き留学をして就職もした。

映画やドラマを見ていなかったわけじゃない。だけど、意識していなかったのだ。そして2020年、わたしは彼の声と再開した。


芸能人や俳優、声優なら、もっともっと知ることができたはずなのに、わたしは彼の声と十九年間出会わなかった。同じ「千と千尋の神隠し」で声優をしていた神木隆之介くんは、彼が作品に出る度にチェックしていたのに、わたしは「入野自由」という人と十九年間出会わず過ごしていたのだ。

運命と言ったら聞こえがいいのかもしれない。だけど、わたしが彼の声と再開したとき、なんだか運命を感じた。わたしの人生に彼の吹き替える声が必要で、何か学べる、得られると。


きっと、世の中にはまだわたしの知らない人がたくさんいる。一般人はもちろん、芸能人も、お笑い芸人も、声優も、俳優も。一方的にでも比較的出会いやすい人でさえ、わたしは知らずにこれからも生きていく人がいるのかもしれない。

そう考えると、明日はどんな人に出会えるのだろうと、ちょっとワクワクする。